ネイティブでもない、エリアでもないもうひとつのトラウトフィールド

 トラウトルアーフィッシングが楽しめるのは、天然の湖沼や河川でのネイティブフィールド。そして、コンスタントに放流をするなどしてフィールドやトラウトのコンディションを人為的にコントロールしているエリアがあります。さらに、ネイティブとエリアとの中間的な環境でトラウトフィッシングができるC&Rというフィールドもあります。ネイティブアングラーにとっては、C&Rは比較的なじみのあるフィールドですが、そこを詳しく知っているエリアアングラーは少ないのが現状。

 今回はC&Rの特徴や魅力を、DAIWAネイティブトラウトフィールドテスターの小林将大さんが詳しく解説します。また、11月にはC&R専用チューンを施した新しいミノーがDAIWAよりリリースされます。次回はこのミノーの特徴やC&Rでの基本的な釣り方についても小林さんに解説してもらう予定です。

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 キャッチ&リリースを設けた特別区間に魅力が凝縮

 C&Rとはキャッチ&リリースのこと。天然河川にニジマスを放流し、その川の一定の区間でキャッチ&リリースをレギュレーションにしている場所のことです。言うまでもなくキャッチ&リリースなので、釣り上げたトラウトのキープは厳禁です。

「自然の河川ではありますが、C&Rのほとんどが里川のような中流域に設けられています。駐車スペースが確保されている所も多く、アプローチしやすいのも、魅力のひとつになります」

 エリアにも自然の河川を利用したストリームタイプがありますが、C&Rと決定的に違うのが装備です。エリアの場合、水際まで整地がなされているなど、スニーカーでも釣りを楽しめる手軽さがあります。しかし、C&Rの場合は、ほとんど整備されていない天然の河川になるので、ウェーダーが必須になります。ある程度まで水の中に立ち込んで釣りをする必要があるのです。

「ニーブーツでもできなくはないけど、膝上以上の場所への立ち込みができなくなるため、攻めたいポイントが制限されてしまいます。やはり、ウェーダーを装備していただきたいですね」と小林さん。

 ネイティブフィールドの場合、ほとんどの川で禁漁期間が設けられています。多くは10月に入ると禁漁期に入り、翌春まで釣りができなくなります。しかし、C&Rの場合は禁漁期間がほとんどなく、10月に入ったころからC&Rのシーズンの開始になってきます。禁漁期間でも天然の河川で釣りを堪能できるため、ネイティブアングラーたちの注目を集めるわけです。

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 大型のトラウトがヒットしてくるのも、C&Rの大きな魅力のひとつ。50㎝オーバーはもちろん、ときには70㎝以上の超ビッグトラウトもヒットしてきます。

「流れの中でのファイトになるので、ポンドなどの止水の場所でのファイトに比べれば、その引きはかなり強烈でエキサイティングです。このダイナミックさは、同じ天然の川でもネイティブにはないC&Rならではの面白さです」

 多くの場所が禁漁に入っているにもかかわらず、自然の河川でトラウトゲームが楽しめること。大型トラウトがヒットする確率が高く、ダイナミックなゲームを堪能できることなど、C&Rは限られた区間の中で、いろいろな楽しみ方や魅力が詰まっているのです。

エリアのようなライトスタイルでは釣果もおもしろさも半減

 装備に関しては、エリアフィッシングのようなカジュアルでお手軽な装いはおすすめできません。前述したように、ウェーダーは必須ともいえる装備になります。また、ネットに関してもシャフトが短く、携帯しやすくて機動性のある、どちらかというとネイティブストリームで使うネットがいいでしょう。

「ネットのサイズは、内径の縦の長さが40㎝以上あったほうがいいですね。C&Rでは50㎝を超える大型トラウトのヒットも珍しくはありません。ネットサイズが小さいと収まりきらないこともあります。40㎝以上あれば大型トラウトでもランディングできます」

 ネイティブの渓流で釣りをするときほど歩く距離は長くありませんが、エリアで釣りをするよりは、圧倒的に移動距離は長くなります。そのため、エリアフィッシングで使う重たくて大きなバッカンなどの荷物は極力減らすようにします。移動中、手にするのはロッドだけにして、ルアーなどを効率よく収納できるフィッシングベストの着用をおすすめします。

 ロッドはエリア用ロッドでも使えなくはないのですが、できる限りネイティブ用のトラウトロッドの使用を、小林さんは推奨しています。

「流れの中にいるトラウトたちのパワーは強いです。流れの中でのファイトで主導権を握るためにも、パワーのあるネイティブストリーム専用のロッドの方が、やり取りがしやすいです」

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 ネイティブ用のロッドでも多種多様にラインナップされています。C&Rでは、ある程度の飛距離と狙った流れを正確にルアーを通すことが重要になります。そのため、長めのロッドの方が、利点は多いのです。

「具体的にいうと、ロッドのサイズは5フィート3インチ以上あるといいですね」

 ちなみにラインですが、メインラインはPE0.6号。リーダーは78lbのフロロカーボン、もしくは78lbのナイロンになります。

「フロロとナイロンとの使い分けは、厳冬期で水温が下がり、活性がかなり落ちている状況ではナイロン。それ以外ではフロロを使うようにしています。リーダーの長さは、ルアーがロッドティップにあるときに、ラインとリーダーとの結び目がリールスプールに巻き込まない程度の長さです。1ヒロない程度の長さになります」

C&Rでこれだけは守ってほしいルールとマナー

 ネイティブの渓流ゲームでは暗黙のルール、もしくはマナーがあります。例えば、先行者がいる場合、そのアングラーを追い抜いて釣りをしてはいけない、いわゆる『頭ハネ』はマナー違反になります。小林さんも、先行者がいて、やむなく上流側で釣りをしなくてはいけないような場合、23㎞の距離をあけて釣りをするように心がけています。では、C&Rはどうなんでしょうか......⁉ 

C&Rは、レギュレーションを設けている限られた区間になります。先行者がいても、その方を追い抜いてその上流で釣りをしなくてはいけない状況に、多々出くわすことがありますが、先行者のすぐ上流側に釣れそうなポイントがあって、明らかにそのアングラーが次に釣りをするような場所に入るのは、やはり遠慮しておきたいですね」

 もうひとつ、小林さんがC&Rで気を付けてほしいというのが、アングラー同士の距離。他の釣り人との距離が近すぎることがあります。最低でも、ワンキャスト分の距離をあけるようにしておきましょう。

「エリアにはないマナーや暗黙のルールがあります。お互いが気持ちよく釣りをするためにも、自分がやられたらいやだな、と思うことはしないようにして、C&Rの釣りを楽しんでください」

もっと釣りたいのならば秋のパターンを覚えておこう。

 厳しい残暑が落ち着いてきたら、エリアは『秋のハイシーズン』に突入です。ポンドの水温が徐々に下がりだし、それに合わせてトラウトたちの活性も戻ってきます。ポンドの中を元気に泳ぎ回り、また、ルアーへの反応もよくあります。秋のエリアは、とても釣りやすいシーズンなのです。しかし、少しでも釣果をアップさせたい、と思うのならば、秋のハイシーズンの特徴を把握し、そしてそれにアジャストさせた攻略法を構築していく必要があります。今回は、秋のハイシーズンをテーマに、高田達也さんが解説します。

活性の戻ったトラウトたちは散る傾向にある。

「秋のトラウトのコンディションの特徴のひとつとして、散った状態になりやすいことが挙げられます。高水温の夏場は涼を求めてシェードだったり、水のよく動くインレットや散水周辺など、居心地のいい場所に溜まる傾向にあります。しかし、秋になって水温が下がり活性が戻ったトラウトたちは行動範囲が広くなり、ポンド全体に散った状態になるんです。

 また、散るのは横の面だけではなく、縦のレンジもバラける傾向にあります。ルアーによく反応してくるトラウトが表層にも低層にもいることが多くなるんです。このような状況のために場所をあまり選ばず、また、レンジもシビアに攻めていかなくても、そこそこの釣果を上げることができて、釣りやすいシーズンになるわけです。

 しかし、漠然と釣りをしていては、釣果は頭打ち。もう一歩上の釣果を目指すのならば、この散った状態を上手に攻めていく必要があるんです」

 散った状態を上手に攻めていくには、まずは、遠投が重要になります。飛距離を出して広範囲を攻めていくことで効率よく散ったトラウトを狙っていくのです。もうひとつが、レンジのセレクトとリトリーブスピードのコントロール。どのレンジでもある程度の反応は出るのですが、その中でも特にヒットやアタリの多いレンジに的を絞ります。その好反応レンジでルアーローテーションを行うわけですが、このとき、リトリーブスピードに気を配ることが大切になります。

「最初は少し重ためのスプーンで、速めの巻きでチェックします。そこからスプーンウェイトを落としてリトリーブスピードを少しずつ下げていくんです。最終的にはクランクベイトを使ったデッドスローまでスピードダウンさせます。こうして、スピードを落としながらチェックし、より反応のあるスピードを見つけて、それで重点的に攻めていけば、漠然と釣りをしているときよりも、圧倒的に釣果をアップさせることが可能になるんです」

オススメの明滅系カラーは、水質にあわせてパターン選択。

 秋のハイシーズンで実績の高いスプーンカラーが明滅系です。ただし、明滅系がよいからといって、ファーストから終わりまでそのカラーを使うわけではありません。

「カラーローテーションで基軸になってくるカラーは、そのポンドの水の色にマッチさせたカラーになります。クリアウォーターならばグリーンメタリックやブルーメタリック。マッディならばオリーブやブラウン系といった地味なカラーになります。これらのカラーをベースにしつつ、明滅カラーをサシ的に使うことで、トラウトの目先を変えられて釣果を伸ばすことができるんです。

 明滅カラーでも、いくつかのタイプがあります。クリアウォーターならば表がアピールの強いカラーならば裏は黒などのダーク系。マッディならば表は地味なカラーで裏がホワイト、といったあたりをチョイスするといいと思います」

大型トラウトが難しくなる理由とその攻略術。

 秋のハイシーズンは、いろいろなルアーによく反応して非常に釣りやすいコンディションですが、一部例外があります。大型のトラウトは、釣り上げるのに一筋縄ではいかなくなるのです。

「大型トラウトは、秋になるとスポーニング、つまり産卵を意識するようになるんです。実際には養殖イケスで生まれ育ち、品種改良されたトラウトたちは、産卵をすることはありません。でも、DNAには『秋になると産卵』といった情報がインプットされていて、意識だけは産卵に向いてしまうんです。こうなると、捕食なんかは二の次になり、ルアーに対しての反応が極端に鈍くなってくるんですよね。このような理由によって、秋は大型トラウトのヒット率がガクンと下がってしまうわけです」

 スポーニングを一番強く意識する水温は1415℃。この水温に近づくにつれ産卵への意識が強まり、それを過ぎると産卵を忘れたかのように再びルアーを追い出すようになります。秋の大型トラウト狙いはかなりタフではありますが、その打開策が全くないわけではありません。

「秋に大型のトラウトを獲りたいのならば、リアクションで攻めていくのが最良のパターン。リアクションのルアーといえばミノーです。小魚のエサをイメージさせてバイトさせるわけではないので、カラーはナチュラル系よりもチャートや半透明のゴーストなど、強くアピールさせる色がいいですね。また、ミノーアクションは、控えめよりも大きく動かしアピールさせてみましょう」

 レギュラーサイズのほとんどのトラウトたちは、産卵とは無縁の行動をとりますが、大型トラウトはスポーニングを意識して釣るのが少々難しくなります。レギュラーサイズの数釣りだけでなく、ビッグサイズのトラウトも狙っていきたいのならば、リアクションで狙えるミノーは必須のルアーになります。

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婚姻色の出てきた良型のトラウト。産卵を意識しているため、ルアーへの反応が悪くなり、これがタフになる理由

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ロッド操作でトゥイッチやジャークを駆使し、ミノーをトリッキーに動かして大型トラウトに反射的にバイトさせる

開催予定の日程と参加方法

秋の気配を感じ始めると、エリアの水温は徐々に下がりだして適水温に近づいてきます。そして、暑さでバテたトラウトたちの活性も戻ってくれば2024年後半の秋・冬シーズンが開幕です。この開幕にあわせてTRY PRESSO'24が開催されます。今シーズンは、年内に10か所の人気管理釣り場で開催を予定しています。昨シーズン同様に注目のタックルやニューアイテムがブースに展示され、それらを使って試釣することができます。また、PRESSOのフィールドテスターがやってきて、エリアフィッシングスクールを開講します。(参加するテスターの顔触れは未定) 

TRY‼ PRESSO'24の日程と会場は次の通りになります。 

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以上の10か所で開催を予定しています。

参加費は無料になります。ただし、会場となる管理釣り場の遊漁券などは、各自でお買い求めください。参加受付方法は、DAIWAアプリのMyDAIWA会員証からチェックインします。事前にDAIWAアプリをダウンロードし、MyDAIWA会員登録をお願いします。

実釣するからチェックできることは、たくさんある

今シーズンも来場を予定している高田達也さん(924日の開催には来場決定で、そのほかは未定)に、TRY PRESSOの楽しみ方をお話していただきました。

「ロッドやリールのタックルをショップで購入するときは、実際に手に取って選びますよね。ロッドならば硬さ、リールならば回転の滑らかさなどをチェックします。だけど、ショップではわからない、実釣しないとわからないことってたくさんあるんです。例えば、ルアーをつけてキャストしたときのロッドフィール。小さなアタリがどれくらいキャッチできるのかといった感度。また、ヒットしてからトラウトを寄せてくるまでのドラグの調子やロッドの曲がり具合など。さらに、いつも自分が愛用しているリールを展示されているロッドにセットしてみて、全体のタックルバランスなんかもチェックできるんです。

TRY‼ PRESSOでは、気になるタックルを手に取ってみるだけでなく、それで実際に釣りをして、いろいろな所をチェックできるのが一番の楽しみ方というか、魅力ですよね。今シーズンはPRESSO LTD AGSから2モデル、PRESSO AIRからも2モデルが追加ラインナップされ、さらにリールでもLUVIASがフルモデルチェンジされました。もちろん既存のタックルもたくさん展示しています。ちょっとでも気になる、と思ったらぜひ手に取るだけでなく、それで釣りをして試してみてください。

釣り教室では、私が講師を努めます。わからないこと、疑問に思ったことがあれば、何でも質問してください。会場でお会いできるのを楽しみにしています」 

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当日は釣り教室の講師だけでなく、タックルの説明もわかりやく解説してくれるミスター・PRESSOの高田達也さん

カスタムの魅力を知ることのできる絶好の機会

PRESSOだけではなく、TRY PRESSO'24ではSLP WARKSもブースを出展予定です。魅力的なカスタムパーツを多数展示。もちろん、カスタムでチューンナップしたリールを使って実釣&試釣していただくことも可能。和田浩輝さんはSAL WARKSのテスターも務め、その彼からカスタムパーツでのチューンナップやドレスアップの魅力やメリットといったお話を直接聞くこともできます。

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カスタムパーツで武装したリールを相棒に、トーナメントで善戦を繰り広げている和田浩輝さん

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