トラウトとアングラーとをつなぐラインは、非常に重要な役割を担っています。タックルバランスの要、といっても過言ではなく、ラインのセレクト次第で釣果を大きく左右します。ラインをセレクトするときに注意すべきポイントは素材です。エリアフィッシングで使用されているライン素材は主に4つ。ナイロン、フロロカーボン、PE、そしてエステルになります。それぞれ特徴は異なり、また長所と短所もあります。この4つの素材の性能をしっかりと把握してライン選びをすることが大切になるのです。4素材の特徴を、それぞれ詳しく解説しましょう。
素材の違いで特性ががらりと変わる。ラインは号数やlbの違いだけでなく、素材を選ぶことが重要
ナイロン
扱いやすくコストパフォーマンスにも優れた素材
ポピュラーな素材で、一番の特徴はしなやかなこと。リールのスプールへのなじみがよく、扱いやすい素材です。適度に伸びるために強いバイトに対しても弾きにくく、激しいファイトのときでも暴れまわるトラウトのパワーをショップアブソーバーのように吸収してくれて、バラすリスクを軽減してくれます。比重は1.14(PRESSO TYPE-N)と比較的軽く、スプーニングの表層巻きでもレンジキープさせやすくなります。コスパがいいというのも、ナイロン素材のメリットのひとつになります。逆にデメリットとしては、適度な伸度があるために感度が若干鈍るということ。
感度に優れた張りのあるロッドを使っていて、バイトがあっても弾かれることが多かったり、クランキングで乗せの感覚でフッキングしたいときには、張りのあるロッド+ナイロンラインのタックルバランスが有効になります。ナイロンラインをセットすることで、タックル全体のバランスを、少々乗せ気味のフィーリングに修正できるのも、ナイロンラインの大きなメリットのひとつになります。
かけ調子のロッドでも、ナイロンをセットすることや、やや乗せ調子のロッドフィールにすることもできる
フロロカーボン
リーダーだけでなく、メインラインで使っても効果的
比重が1.78(PRESSO TYPE-F)と、4つの素材の中で一番重たいのがフロロになります。比重が重いために、軽量スプーンでも低層をレンジキープさせやすいのが大きなメリット。伸度が低いために感度はよく、小さなバイトを拾っていく繊細な釣りにもマッチしています。水中での光の屈折率が水に近いために、目立ちにくいというのもフロロの大きな武器になります。耐摩耗性に長けているのもフロロのメリットのひとつ。
フロロはメインラインだけでなく、リーダーに使われることも多くなります。リーダーとして使えば、強烈なトラウトの引きに対してショックアブソーバーの役割を果たし、メインラインへの負担を軽減してくれます。そして、もうひとつ。擦れによるラインブレイクを回避する役割も担っています。フックリリーサーを多用するエリアフィッシングの場合、リリーサーのワイヤ(針金)でラインに負担をかけてしまうことは少なくありません。耐摩耗性のあるフロロだと、リリーサーをラインに引っ掛けて寄せてきても、大きなダメージを受けずに済みます。エステルやPEではリーダーは必須になりますし、アングラーによっては、細いナイロンラインを使うときでもフロロのリーダーをセットすることもあります。
フロロはメインラインとしても使えますし、リーダーとしても優秀な素材なのです。
PE
伸びの小さな特性は操作ルアーとの相性が最高
ナイロン、フロロ、エステルは単繊維の、いわゆるモノフィラメントライン。対してPEはポリエチレン素材のラインを4本(4本以上の場合もあります)編み込んだブレイデッドライン(撚糸)になります。一番の特長は伸度が非常に低く、感度に優れていること。小さなアタリでも、しっかりとロッドティップまで伝達してくれます。また、伸びが少ないので、ロッドアクションをダイレクトにルアーに伝えてもくれます。ボトムルアー、ミノー、ポッパーといった操作系ルアーとの相性もいいライン素材です。
伸びが小さいことでいくつものメリットをもたらしてくれますが、反面、フッキングなどで瞬間的に強い荷重がかかった場合、結節部分の負担が大きくなります。そのため、衝撃を吸収してくれるリーダーは必須になります。また、結び目もすっぽ抜けやすいので、特にリーダーとの結節は、正しいノットでしっかりと結んでおくことが非常に大切になります。
マイクロスプーンからヘビーウェイトのボトムバイブまで、すべてのルアーをカバーするユーティリティライン素材です。
エステル
マイクロ系と好相性の繊細な釣りにマッチする素材
ポリエチレン素材のラインです。比重は1.38(PRESSO TYPE-E)でフロロほど重くはありませんが、ナイロンよりは比重があり、水になじみやすいのが特長です。伸度も小さく、感度にも優れています。そして、エステルの一番の魅力が、軽量ルアーでも遠投しやすい、ということ。マイクロスプーンでも、驚くほど遠くへ飛ばすことができます。プレッシャーなどによってタフになりがちな昨今のエリアでは、マイクロ系のルアーの使用が必要不可欠。その使用頻度に比例して、飛距離を出しやすいエステルを使用するアングラーは増えてきているのです。特にシビアな釣りが要求されるトーナメントシーンでは、ほとんどの選手がエステルを使用しているほどです。
弱点もあります。強い荷重がかかって一度伸びてしまうと、強力が低下してしまうこと。ビッグトラウトとの激しいファイトをした後などは、強力が落ちていることもあるので注意が必要です。まめなライン交換が要求されます。瞬間的な強い負荷に対しても少々弱い、ということも頭に入れてください。強引なフッキングでアワセ切れのリスクを軽減するためにも、ドラグを少し緩めておくなどしておきたいです。また、リーダーの使用も必要不可欠となります。
張りが強くてクセのある素材で少々扱いにくい、ともいわれています。しかし、PRESSO TYPE-Eは、従来のエステル素材に比べると、かなりしなやかな設計になっていて、扱いやすさはかなり改善されています。ビギナーアングラーでもすぐに慣れて、エステルのよさを堪能できるはずです。
同じロッド、同じルアーでもライン素材によって飛距離が大きく変わる。エステルは軽量ルアーでも飛ばしやすい
状況によってラインを使い分けることが大切
それぞれの素材には長所と短所があります。ひとつのライン素材ですべてのルアーや釣り方をカバーするのではなく、状況に応じたラインセレクトをすることで、ロッドやルアーのポテンシャルを落とすことなく、釣果のアップを図ることができます。ロッドやルアーとの相性を吟味し、ライン素材をセレクトしてください。同じロッドでもラインが変わることで感度や乗せ具合、キャスタビリティは変わってきます。また、同じルアーでも狙った層をレンジキープさせやすくなったり、よりシャープなアクションをつけやすくもなります。