たくさんのアングラーの気配で警戒心が上がる
トラウトの活性が高まり、釣りやすいコンディションになる春のハイシーズン。気候も相まってたくさんのアングラーが釣行するようになり、エリアが一段と賑わう季節です。このような状況のときにちょっと気にしておきたいのがプレッシャーです。水際にいるアングラーたちの気配や目の前を頻繁に通過していくルアーによって、トラウトたちにストレスがかかります。これがプレッシャーとなって、口を使わなくなる、タフになることがあります。春はハイシーズンですが、プレッシャーを克服することで、釣果はもっとアップします。今回は、プレッシャーの克服術を高田達也さんが解説します。
トラウトの活性が上がっている春は釣果を上げやすいハイシーズン。しかし、状況によってはプレッシャーを意識した戦略を練る必要がある。エリアフィッシングのレジェンド・高田達也さんがプレッシャーの克服法を解説
プレッシャーのかかりにくい沖を直撃する
「活性が上がっていてもプレッシャーがかかっていると、ルアーに興味は持つんだけど、なかなかバイトに至ってくれない、というような状況になりがちです。そんなトラウトに口を使わせるメソッドが、プレッシャーの克服術になるんです」と高田さん。
プレッシャーの克服法にはいくつかあり、そのうちのひとつが、遠投して沖を狙うパターン。水際に立つアングラーの気配を嫌がって、沖に溜まることがよくあります。そこを直撃するのです。
「ウェイトのあるルアーを使う、というだけでなく、少しでも飛距離を出せるタックルバランスが重要になってきます。軽量のルアーでも遠くに飛ばしやすいエステルラインのPRESSO TYPE-Eを組み合わせてみてもいいですね。それと、沖を重点的に攻める場合のキーポイントとして、着水からピックアップまで、ずっと丁寧に引いてくる必要はないということ。沖のプロダクティブゾーンを離れたら、スピーディにルアーを回収します。手前まで、ゆっくり引いてきても手返しが悪くなるし、時間がもったいない。特に、トーナメントでは時間勝負ですから、沖から最後までのんびりと引いてくるのは時間をロスするだけで、効率的ではありません」
周りのアングラーが使っているルアーと異なるものを使うことも、克服法のひとつになります。
「似たようなルアーが目の前をひっきりなしに通過していくと、それがトラウトたちのストレスになるとも限りません。そこで、周りのアングラーが使うルアーとはちょっと異なる目先を変えたルアーを通すことで、口を使ってくれるようになるんです。例えば、周りがマイクロスプーンで繊細に攻めていたら、逆に波動が大きく、存在感の強いフルサイズのクランクベイトを使ってみる。また、カラーもナチュラルで地味な食わせカラーならば、アピールの強いカラーを使ってみる、という風に、周りと違ったことをしてみると、かなり効果的なんですよ」
気配を嫌がり、沖に溜まっていることが多い。遠投できるルアー&タックルで、沖のプロダクティブゾーンを直撃する
クランクベイトで攻略するふたつの戦略
「この攻略パターンを知っている人は、少ないと思います」と高田さんが前置きして教えてくれるプレッシャーの克服法が、クランクベイトのちょっと特殊な使い方。ここで使いたいクランクベイトがWABCRA Jr. 25SS SR。スタートは、ややスローに引いてきて、その周辺のトラウトの様子をしっかりとチェックします。プレッシャーが強くかかっているトラウトはほとんど無反応ですが、その中に振り向いて反応する個体がいれば、あまりプレッシャーを感じていないというサイン。そんなトラウトを視認したらデッドスローで引いて、波動が出るかでないかのタイトな動きでじっくりと見せて、口を使わせます。
「潜りもせず、浮き上がりもしないレンジキープする限界のスロースピードで引きながら、ウォブンロールを極力抑えるようにして巻いてくるのが大切なんです。トラウトが寄ってきたら、そこでリトリーブを止めないことも大事。動きを止めると見切ってしまい、そのままプイッとルアーを見切ってしまいます。クランクベイトは強い波動で寄せてバイトさせるのが基本ですけど、プレッシャーのかかっているトラウトに対しては見せてじらせてバイトさせるのが有効なんです」
そして、もうひとつのクランクベイトの使い方もご紹介しておきましょう。こちらで使いたいのがWABCRA DR。存在感のあるフルサイズボディで、その大きな動きで発生させる波動も強烈なのが特徴。
「通常は、トラウトは上から落ちてくるものに対して強い反応し示します。だけど、プレッシャーがかかっていると、下から上へ浮き上がっていくものに反応しやすくなります。これを利用した使い方なんです」
着水したらハンドルを3~4回転素早く巻き、一気にダイブさせます。そこから、デッドスローで巻いてきます。リトリーブスピードはただ遅いだけではいけません。ゆっくりと浮き上がっていくぐらいのスピードで巻いてくるのが、重要になります。いわゆる、巻き上げの軌道ですね。WABCRA DRの場合、浮き上がってくるほどのゆっくりとした巻きスピードでも、しっかりと水を噛んでウォブンロールで動き、波動も出してくれます。WABCRA Jr.では、波動をほとんど出さないほうが有効ですが、浮き上がりの軌道で誘う場合は、ある程度の波動を出して、その存在をトラウトに教えてあげた方いいのです。
「プレッシャーのかかったタフな状況だと、マクロスプーンを使ったフィネスな展開になりがちですが、クランクベイトでアグレッシブに攻めていくのも作戦のひとつなんです」
クランクベイトはリトリーブスピードが重要。じっくりと見せてバイトを誘う時は超デッドスロー。浮き上がりの軌道で誘いをかけるときには、レンジキープするスピードよりも遅く巻く。