文・写真/大野 等(おおのひとし)1969年富山市生まれ。DAIWAフィールドテスター。全日本SCF・北陸協会岩瀬釣友会会員。
2011年の9月某日。
ロッド企画担当者とやってきたのは能登半島・外浦の大川浜。
2012年の春発売予定のスカイキャスターともう一本、取り出されたのがこのスカイキャスターのプロトモデルに、AGSを取り付けた一本。これが初見でした。
「今日は、AGSと、金属フレームガイドで釣り比べて、どんな違いが感じられるかを試したい。」と担当者。
秋のシーズンたけなわの大川浜。
釣り始めてみたらシロギスが数珠つなぎになる。とにかく投げれば釣れる。この状態では、はっきり言って「よくわかりませんでした」というのが正直な感想でした。
こうして2011年からAGSの装着を念頭に入れた開発がスタート。プロトロッドを手にすることから始まったのですが、 使えば使い込むほど、違和感のようなものを感じてくる。
『ノイジー』
とにかく、にぎやか、なのです。カーボンフレームになったことでSiCリングを通るPEラインの編み目が擦れてくる感触すらもビリビリと手元に伝わってくる。ちょっと負荷を掛けて巻き上げるような場合だと、リールのラインローラーが回ってないんじゃないか?と感じるぐらいギュルギュルと音がする。
竿先から、竿を握る手元にいたるまで神経を集中すればするほど伝わってくる音感が多くて気持ち悪いという感触すら感じてしまうことがありました。
企画担当者に「AGSってイヤ、気持ち悪いよ」と伝えた時期もありました。しかし、そんな違和感も、慣れというのか使い込んでくると、当たり前になってくるのが面白いところ。
次第に、こう感じるようになってきました。
AGSでは、うるさいほどに音がしていたのが金属フレームのガイドでは、音がしない。その音のしない感触が、AGSに慣れた身体には、逆に、当たり前に聞えるはずのモノが伝わってこない。これは不安になってくる!
従来の金属フレームがいかに、その部分で伝わるはずの微細な音をカットしていたか! ということを思い知らされる感覚になってきました。AGSを一度使うと、金属フレームのガイドが使えなくなる、というのは他の釣り種目で言われてきたこと。ノイジーが快感に変わる。それが理解できるようになったのでしょうか。
マスタライズキスを開発していた頃、そのほとんどはトップガンを使用して、キスのアタリがより明確に出ることが命題でした。ところが、ここ数年はフロート系のシンカー使う人が多くなってきました。
DAIWAも、フロートシンカーW/Gを発売したわけですがフロートシンカーを使うと錘の引き感は、軽くなるのですが、海底の状態を明確にトレースする感覚はダウンします。魚の居所を探ってサビいているのに、底地の情報量が減る。しかしAGSを使うことによって、そのあたりの情報量をカバーしてくれる。単純に、マスタライズキスのようにアタリが明確になるという部分を期待されるならちょっと違います。ロッドを通して伝わってくる情報量が一気に多くなる。最初は戸惑いを感じる方も多数いるでしょう。それでも慣れるとやめられない。
そこでブランクスの持つ機能として、キスのアタリを捕らえるという特性では、マスタライズキス。底の情報量が飛躍的に多くするのがトーナメントキャスターAGS。こんな感じでしょうか。
さて、AGS装着モデルの開発に際して、企画担当者、設計者から、指針のようなものが打ち出され、テスター側とのやりとりが始まりました。
1.AGS搭載のロッドは、飛距離が伸びる。
2.AGS搭載のロッドは感度がいい。
飛距離に関しては、北海道の開発チームがご担当ということで、陸上での飛距離測定を行い、実際のデータとして、投げカタログ2014「投魂」に出ている通りだと思います。
私は設計者とのやりとりの中で、AGSで感度というのをテーマにしていくならば、ガイドのセッティングにこだわりました。従来のガイド数、ガイド位置とは違った考え方でやったほうがいいのではないか?
フィネス化(小口径化)による多点化で、感度を突き詰めたセッティングをやりませんか?と 。
テストを繰り返して、決定したのが、今回製品化された、27号と30号に採用となった2番竿にガイドは1個。穂先側を小口径多点化した、8点のガイドセッティングです。 33号、35号モデルに関しては、飛距離を考慮に入れて7点でいくということで、感度と飛距離の両立する口径とガイド位置でのセッティングになりました。
テスト当初は、シーバスロッド用のガイドをそのまま付けていましたが、投げ釣り用に新しく開発した元ガイドをトーナメントキャスターAGSは採用。キャスト時のライン放出の第1波に対して、独自の絡みにくい形状となっています。
いま全国で試投会が開かれています。
実際、AGSの感覚を実感された方も多いでしょう。ガイド軽量化による飛距離にこだわる。やはり話題の感度に期待する。投げ釣りの趣向はさまざまですから、ご当人にあった吟味があると思います。ひとつ提案させていただくなら、出来れば従来の鉛系の錘。
感度の違いをより体感するために、少し、引きずり感覚の重い錘を持参ください。海底をじっくりトレースしてみることで、AGSの真骨頂を味わうことができると思います。