文・写真/小池勝 こいけまさる 1945年広島市生まれ DAIWAフィールドテスター
全日本サーフキャスティング連盟 島根協会 G・A・Cサーフ会員
1987年4月下旬のこと、画期的な形状をした発売前のトーナメントプロキャスターSS―45リールは、 9人の男たちと一緒に長崎県の上五島空港に降り立った。
6月1日の全国一斉発売に先立って、《ザ・フィッシング》ロケの収録のためだ。
番組のキャスターは、わが国のルアーフィッシャーのさきがけ、テツ西山こと西山徹氏、釣り人は《鴨谷計幸のカレイ指南》でおなじみの、全日本サーフ広島協会長鴨谷計幸氏(当時)と、がちがちに上がってしまった私の二人。
ロケの結果は、尺ギス天国とは言え4月下旬の釣況は厳しく、一日目などは暴風雨で体が吹っ飛びそうな状況、結果最大は26㌢と物足りない結果だったが、リールとニューロッドのポテンシャルには驚愕と大満足の連続だった。
【それまでのリール、その時々の釣り人たちを楽しませてくれました。】
(1960年代スポーツ5000)
(1980年代プロキャスターST)
スポーツ5000は、一つのスプールに太糸も細糸も巻けるよう《エコノマイザー》が常備されていました。
プロキャスターST8000は、ライン放出を重視してコップ型スプールに設計されていました。
このころが投げ釣り万能タイプのリールから、キス釣りに対応するリール開発の黎明期だったように感じます。
そして前出のごとく1987年に登場したのが、ドラグなし45mmストロークの《トーナメントプロキャスターSS-45》
あれから33年、45mmストロークのリールは日本全国のキャスターに愛され続け、キャスターの皆さまの声を反映しながら、数々の後継機を送り出しながら今日に至っている。
そして今、2019年登場の最新機種を手に、キスに遊んでもらっている私は、なんという幸せ者だろうか。
(19 トーナメントサーフ45を手にしてキスとの対話を楽しんでいる)
大好きなキスに一年中遊んでもらっている私、自分なりの季節ごとの付き合い方をご紹介します・・・・・、ただお魚釣りは数学のように「答えは一つ!」ってことはありませんので、ここは目くじらを立てないようご笑覧ください。
冬・・瀬戸内の海水温が10°Cを切っていたころ、冬ギスと言えば九州の平戸島や天草諸島に出かけていたものですが、現在では瀬戸内海の海水温上昇により、場所さえ探せば一年中引き釣りを楽しめるようになりました。
1月の小雪がちらつく中、ちょっとした港の中で水深が4m前後あれば、お腹周りに脂肪を溜めこんだ冬ギスが食ってきます。
(ある年の1月18日の釣果)
《多回性産卵》と言って、水温が最適でエサが豊富なら、カレイやチヌなどの魚とは違って、何回でも産卵を繰り返すシロギスですが、さすが冬季の水温では産卵はしないため、お腹周りには脂肪が貯まっています。
春・・3月のお彼岸が過ぎたころ、ちょっとだけ活性化を感じさせる春ギス、冬ギスでも夏ギスでもない微妙な警戒心で、アタリは「モソモソ」といった感じで冬ギスよりも釣りにくくなります。春ギスの場合、食い込ませようとするよりも、一匹ずつ即合わせで掛けることが多く、巻くスピードも、できるだけゆっくり巻いてキスが追いついて、エサを吸い込めるように誘います。
こんな時、トーナメントサーフ45のLGタイプはもってこい!ハンドル一回転68cmの巻取りで、HGと比べると20cm違います。これは冬ギス・春ギスに限らず、夏場でも効果を発揮する場面もあります。その日のキスの状況でゆっくり巻きたい時など、以前はハンドルノブではなく、ハンドルの軸を3本指でつまんでゆっくりと回していたこともありましたが、LGだとしっかりハンドルノブをもってキスのアタリを楽しむことができます。
夏・・八十八夜(2020年は5月1日)を過ぎ、待ちに待った夏が近づく・・古くからの格言で「八十八夜を過ぎるとキスが陸を向く」というのがありますが、瀬戸内の実際は渋い!!!春ギスに比べ、確かにアタリは夏めいてはいますが、なかなか・・・・しかし逆にこれが面白い!
6月も中旬になると、愛する瀬戸内のキスには悪いですが、山陰のキスに会いに行きます。
連掛け、大ギスと釣り場を巡り歩く・・・・・。
JR山陰線の列車を見ながら、ある時は裏のお家のおばちゃんに「お茶でも飲みんさい」と優しい言葉を掛けていただきながら。
皆さまにそっと耳打ち・・・・・・、魅惑的な夏の夜、大ギス狙いの場合、トーナメントサーフ45からちょいと浮気して《アオリマチックBR》と《キャスティズム》ロッドで置き竿釣りを・・・・・・・これがまた楽しい♪♪
やっと涼しさを取り戻した静寂の中、突如鳴り響くドラグ音、クラッチをフリーにしたアオリマチックは、違和感なく大ギスのファーストキッスをキャッチする!!
(この時のロッドはトーナメントサーフでしたが)
8月も終わりに近づくと、早い場所では《落ち》状態を見せ始め、L型天秤をIの字にして良型が連で掛かってきます。
(良型が5~6匹掛かると天秤はまっすぐになって悲鳴をあげているよう)
毎年8月の最終日曜日、日本全国に少なくなった《鳴き砂》で知られる島根県大田市の琴が浜で、気の置けない仲間20人くらいで30年近くキス釣りの集いをしています。
ルールは50匹到達早上がりor3時間・・・・・・。
私はキスを遊び道具として扱うのが好きではないので、落ちの入り口にいるキスを一人何㎏も釣るのは可哀そうだと思っています。 一応、競技なので、早上がりのためには小さなキスもクーラーに入れるようになりますが、そのキスは競技後に、参加者みんなで手分けして刺身・湯引き・てんぷら・ガーリックソテー・南蛮漬けなどにして、残さずおいしくいただいています。
(私はだいたい てんぷらとガーリックソテー係)
秋・・10月の声を聞くと、投げ釣りの2大ターゲットの一つ、カレイ狙いに興じ、キスとの出合いはカレイの産卵が終わる年明けまで、お預けとなります。
ロッドは《トーナメントサーフT30-405》、リールは《トーナメントISO 4500遠投》
(カレイ狙いの竿に釣れた良型の冬ギス)
私は以前から、キス釣りを始めるなら《落ちギスシーズン》からと言っています。
エサ取りよりも早く、ガンガン当たってくるアタリを楽しめるからです。
えさは青ゴカイの方が安価ですが、サイズがバラバラで匹数計算だと石ゴカイの方が安くつきます。
動きの鈍い冬ギス・春ギスには石ゴカイの1匹付け。
食いがたっている夏場は、ハリいっぱいか、ちょっと余すだけにします。
落ちに入って8連10連すべてのハリに掛けることにこだわるなら頭の固い方だけ刺し、尻尾は使いません。
柔らかいと食い逃げされ、せっかくパーフェクトを狙っても、エサだけ取られてしまうことになります。
山陰西部における夜の大ギス狙いには青ゴカイが最適です。
私なりの季節ごとの付き合い方をご紹介しました。
皆さまにも季節ごとの投げ釣りの楽しみ方があると思います・・・