渓流ルアーフィッシングにチャレンジしてみよう(後編)

2回目はシーズンとタックルをご紹介。

 ビギナーやエントリーアングラーのために、渓流ルアーフィッシングをわかりやすく解説。前回はこの釣りの魅力とルール&マナーを小林将大さんに解説していただきました。後編となる今回も、小林さんに引き続き解説していただきます。後編では渓流ルアーフィッシングのシーズン、そして用意しておきたい装備やタックル&ルアーについてご紹介します。

フィールドとトラウトのコンディションは季節ごとに変化。

 ほとんどの渓流には解禁期間と禁漁期間が設けられています。言うまでもなく禁漁期間は、釣りをしてはいけません。河川によっては若干の違いがあるものの、多くが31日から9月いっぱいが解禁期間。つまり釣りをしてよい時期になり、これが渓流ルアーフィッシングのシーズンになります。ただし、一部の川ではCR(キャッチ&リリース)区間という特別な場所とレギュレーションを設けていることがあります。こちらは、禁漁期間であっても釣りができることがあります。

C&Rでのルアーフィッシングは、本格的な渓流とはまた一味違った魅力やおもしろさ、楽しみ方があります。こちらのC&Rに関しては 、機会があったらご紹介させていただきます」

 さて、本題の渓流ルアーフィッシングのシーズンに戻りましょう。解禁期間は約7か月間。この間、シーズンイン直後から終盤まで、魚たちも川のコンディションもすべて同じというわけではありません。季節ごとの変化の特徴や狙い方、いわゆるシーズナルパターンを解説します。

初期

 解禁から、桜が咲き出すころまでが初期になります。「解禁に入ったばかりは、なんとなくよく釣れそうな気がしますよね。でも、意外とこの時期は難しいんです」

 小林さんのいう難しい理由は、まだ水温が上がり切っていないから。3月に入れば春の気配を感じるようになってきますが、寒い日も多く、水温は冬期のままで上がり切ってこないからです。冷たい水を好む冷水系の魚であるトラウトといえども、一桁台の水温では活性はなかなか上がってこず、ルアーへの反応も鈍いシーズンです。

中期前半

 初期から中期の前半に入るタイミングは何月のいつごろ、といった具体的な日時では決めません。小林さんの場合は、桜の開花でそれを判断しています。

「それぞれの河川は場所も違えば標高も違います。ですので、中期に入る時期が早いところもあれば遅い川もあるんです。桜の開花も、全国一律で咲き始めるわけではありませんよね。桜の開花と中期に入るタイミングが一緒のことが多いので、私の場合は、それを判断基準にしているんです」

 桜が開花し出せば、そろそろ中期に入る時期とワクワクし、満開になったところで中期前半に突入したと判断します。葉桜から新緑が彩る5月に近くになれば、トラウトたちの適水温である1214度にまで水温は上がってきます。

「この中期前半に入ってから5月の下旬までは天候は安定しているし、シーズンで一番釣りやすい時期だと思います」

 そして、梅雨に突入していくと、トラウトたちの活性はさらに上がってきます。ちなみに、四国地方ではアマゴのことを『雨子』と書くことがあります。雨が降ると元気になる、というのが雨子と書く由来ともいわれています。

「桜が満開になってから梅雨までの中期前半は、非常に釣りやすいシーズンです。渓流ルアーにエントリーするのならば、この時期が一番いいと思いますよ」

中期後半

 梅雨が明けてから8月下旬までの盛夏が中期後半になります。このシーズンは、暑さによって水温が上昇。また、渇水も起きやすい時期なのでフィールドコンディションはあまりよくなく、少々難しい時期になります。

「河川選びが重要になってきます。冬に積雪の多い雪山を抱えた河川は、極端な水温上昇は起こしにくく、トラウトたちもそれほどタフにはならないですね。源流に近い上流域も水温の上昇はそれほどではないんですけど、渇水によってフィールドのコンディションが悪くなってしまうこともあります」

 暑さと渇水がネックになり、中期の前半よりも厳しいコンディションになりがちなのが後半の特徴です。

終盤

 9月初旬から禁漁までが、終盤のシーズンになります。真夏の高水温も峠を越えて活性を取り戻してきた個体もチラホラと出てきます。すべてのトラウトたちがルアーをよく追ってくれるわけではありません。また、終盤に入るとトラウトたちは産卵を意識し出す個体も現れ、ルアーに興味を示さなくなることがあるのです。

「秋はトラウトたちの産卵シーズンです。ルアーに反応させるのが難しくなってきます。この時期にルアーに反応するのは小型のトラウトが多いのですが、30㎝を超える尺モノが釣れることもあります。また、婚姻色も出て他のシーズンでは目にできない、きれいな魚体を観察することもできます。終盤ならではの魅力がいくつもある楽しい時期です」

 時期によってコンディションは変わります。同じ渓流でも、楽しみや魅力が変化していくのも、渓流ルアーフィッシングのおもしろいところでもあるのです。

コバA (1).jpg

季節によって、フィールドだけでなく魚たちのコンディションも変化する。シーズナルパターンは確実に把握しておきたい。

同じトラウトでもエリアとは異なる装備とタックル。

装備

 日常とはかけ離れた深い自然の中で釣りを楽しむために、装備はとても重要になります。「快適に釣るというだけでなく、安全面にも直結します。渓流では水に立ち込んだり渡河したりすることが多く、身の回りの装備ではウェーダーは必須になります」

 ウェーダーは胸まであるチェストハイタイプがよいでしょう。また、ウェーダー選びではサイズも重要になります。渓流では一日の移動距離が34㎞になることも珍しくはありません。行動しやすいサイズの一着を選ぶようにしたいです。

ロッド

 タックルでは、ロッドがとても重要になってきます。

「よく『エリアロッドは使えますか?』といった質問を受けることがありますが、『渓流ルアー用のロッドを使うようにしてください』と答えています。整備されたエリアと深い自然の中にある渓流との環境は大きく異なり、同じトラウトを狙うためのロッドでも釣りやすさが全く違ってきます」

 渓流用ルアーロッドとエリア用ロッドとの一番の違いは、長さです。周囲がオープンになっているエリアでは56フィートが主流ですが、渓流用では4フィート8インチ~5フィート3インチ(142160㎝)が主流のサイズになります。渓流では頭上に木が覆いかぶさっているなど、スペースの狭い場所は少なくありません。そんな場所でもキャストに支障が出ないように、短めのサイズが必要になってきます。

「パワーもエリア用とはかなり違います。35gのルアーが投げやすいアクションとパワーになっています。ヒットしてからも、急流の中で暴れるトラウトを寄せてきやすい追従性を備えています。エリア用ロッドよりも、全般的に張りは強いです。張りの弱い柔らかめのロッドだと、根掛かりが多くなりやすいんです。張りがあると、ルアーを障害物から回避する性能も上がって、根掛かりのリスクは確実に軽減されます」

ルアー

 ルアーは、シンキングタイプのミノーが、渓流ルアーの主役になります。

「ミノーのサイズは5㎝、4.5㎝、4㎝の3サイズを用意しておくといいでしょう。川幅の狭い場所では4㎝、里川などちょっと川幅の広いような川ではアピールを強めたいので5㎝、といった具合に使い分けたいですね」

 ミノーではフックの選び方にも、ちょっとした注意が必要です。マイクロバーブを採用したシングルフックの場合、フッキングミスが少々多くなりますが根掛かりは少なくなります。トレブルの場合は、フッキングさせやすくなる反面、根掛かりは多くなります。

「それぞれに一長一短ありますが、ビギナーの方にはシングルフックをオススメしています。根掛かりが少なくなる分、ポイントに対して根掛かりを恐れずにアグレッシブに攻めていくことができるんです。攻める意識を強く持って釣りをした方が、上達は早くなります」

 ルアーでは、ミノーの他にもうひとつ用意しておきたいタイプがスピナーです。水流を受けるとブレードが回転し、トラウトに強くアピールしてくれます。ただ巻きのステディリトリーブが基本で、ビギナーアングラーでも使いやすいのが特長です。

 タックルとルアーは、渓流専用を使った方が釣果のアップが望めますし、何よりも上達が早くなります。

コバA (2).jpg

整備されたエリアと自然の渓流とでは、環境が全く違う。自然渓流の中でも扱いやすいロッドを使うようにする。

コバA (3).jpg

ロッドやルアーのタックルだけでなく、装備も大切。快適に釣りだけでなく安全性にも直結する。

2024年6月

            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30