渓流ルアーフィッシングにチャレンジしてみよう(前編)

釣果以外の楽しさも凝縮された釣り。

 ルアーフィッシングのターゲットは様々で、いろいろなスタイルがあります。その中のひとつである渓流ルアーフィッシングの魅力や基礎知識を、小林将大さんがビギナー向けにわかりやすく解説します。

「渓流のトラウトゲームは、釣果だけに一喜一憂するのではなく、他にもたくさんの魅力が詰まった釣りです。この魅力の多さが、私を渓流トラウトゲームの虜にするんです」

 オープンで開けている里川、頭上を木々に覆われてうっそうとした深い渓谷まで、自然の中にどっぷりとつかって魚との一期一会を堪能する渓流ルアーフィッシング。エントリーするには少々敷居の高い釣りと思っているアングラーは少なくないようですが、決してそんなことはありません。この渓流ルアーフィッシングを2回に分けてわかりやすくご紹介します。

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小林さんの心を動かす、いくつもの魅力

 豊かな自然に包まれ、その中に溶け込むようにして釣りを堪能できるネイティブ感が、大きな魅力のひとつ。

「深い自然の中に入ると五感が研ぎ澄まされ、喧噪のある日常では絶対に味わえない爽快感や癒され感が得られます。豊かな自然の中で釣りをするって、本当に気持ちがいいんです」

 もうひとつの大きな魅力が、日本固有の在来種との出会いがあること。イワナやヤマメ、アマゴといった古来より日本に生息する魚たちに出会えて、また、同じイワナでも川によって生態に若干の違いがあったりもします。釣れた魚たちをじっくりと観察するのも渓流の釣りならではです。

「渓流の水はクリア。きれいな水に癒されますし、ルアーを追ってきて喰いついた瞬間を目の当たりにすることができます。岩陰から魚が出てきた瞬間は至福の気持ちになるし、それがルアーにバイトしたときには一気にエキサイティングな気分にさせてくれます」

一度、渓流ルアーフィッシングにトライしてみてください。そのおもしろさに魅了され、虜になるはずです。

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渓流で楽しむためのルールとマナー

 他のジャンルすべての釣りには、ルールやマナーが存在します。渓流のトラウトゲームにもルールやマナーはありますし、他の釣りにはないちょっと特殊なルールもあるのです。安全に、また、他のアングラーとのトラブルを起こすことなく楽しく釣りをするためにも、ルールやマナーは確実に頭に入れておいてください。

先行者がいた場合

「ルアーフィッシングに限らず、エサ釣りでもそうなんですけど、例えば渓流釣りには『頭ハネ』というマナー違反というか、暗黙の了解があります。これを理解せずにいると、他のアングラーさんとのトラブルになりますので、必ず守るようにしてください」

 自分よりも先に先行して釣りをしているアングラーがいた場合、この人を追い抜いて釣りをする行為がマナー違反。これは前述した頭ハネで、後から入ってきたアングラーが先行者よりも先に釣り上がり、上流のポイントを釣り荒らすことです。渓流では、下流から上流へ向かって移動しながら釣り上がっていくのが基本になります。警戒心の強い渓流魚たちにアングラーの気配などを察知されにくくするため、釣り上っていくのです。ところが、先行者を追い抜いて上流側で釣りをすれば、その先行者がこれから釣りをしようとしている場所を荒らしてしまうことにつながります。先行者からすれば、頭ハネはこの上ない迷惑行為であり、これは渓流釣りの世界ではしてはならないことです。

「先行者がいて、それよりも上流で釣りをしたい場合、どれくらいの距離を開けておけばよいか、ということを知っておいてほしいです。何100m以上といった明確な距離の線引きはありませんが、私が常に気に留めているのが3㎞以上は間隔をあけるということ。なぜ3㎞なのかというと、渓流を釣り上っていく移動距離おおむね45㎞になります。ですので、それだけの距離を開けていれば先行者が釣りをするエリアと被らない、と考えるからなんです」

 オープンエリアで比較的川幅の広い里川であれば、3㎞まで間隔を開けなくてもよいのですが、川幅の狭い上流域に至っては、小林さんのいう距離を開けておくようにしたいですね。

駐車スペース

渓流の釣りに限ったことではありませんが、駐車スペースに関するトラブルも多くあります。必ず、他のクルマの通行の妨げにならない場所へ止めるようにします。また、私有地への駐車も厳禁です。

「その河川を管轄する漁協では、漁協が管理する釣り人のための駐車場を用意しているところもあります。特に初めて釣行するような川では、そこの漁協に情報の確認をしてみて、駐車場の有無やどこに停められるのか、といったことを聞いておくとよいですね」

熊鈴

 自然の懐深くまで入って釣りをする渓流ルアーフィッシングでは、クマとの遭遇も珍しいことではありません。クマとの鉢合わせを防ぐために、自分(人間)の存在を熊に気づかせる熊鈴は、用意しておきたい安全アイテムです。しかし......

「熊鈴をつけるタイミングと場所に注意してください。早朝、熊鈴をジャンジャン鳴らしながら、民家の近くを歩いたりすると、住民の方たちにとっては、朝っぱらからうるさいと感じるはずです。民家の近くを通るときには熊鈴は外し、入渓したタイミングでそれを装備する。そんな思いやりのマナーも必要です」

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釣りの時間帯

 本州のほとんどの河川では、実釣できる時間帯を日の出から日の入りと決めています。しかし、小林さんはお昼過ぎの13時までには脱渓してほしい、といいます。

「山の天気は変わりやすい、とよく耳にしますよね。山間を流れる渓流も山の一部であり、天候が変わりやすいのです。特に、午後になると、天候の急激な変化が起きやすくなります。午前中は雲ひとつない快晴だったのが、午後になって急に雲が湧き出して激しい雨に見舞われる、といったことも珍しくはありません。そんなリスクを回避するためにも、13時までには釣り場を後にしてほしいんです」 

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安全第一で渓流ルアーフィッシングを楽しみましょう!

今回は、渓流ルアーフィッシングの魅力とルール&マナーにフォーカスして解説しました。次回はシーズンや装備、タックルにスポットを当てて解説いたします。そして、最後に小林さんからひと言アドバイス。

「とても魅力的な釣りです。でも、無理はしないでください。自然は美しいというだけでなく、ときには厳しい表情を見せることもあります。無理をせずに、安全第一で楽しんでください。特に単独で釣行するときには、あまり自然の奥深くまで入り込んでいかないこと。川のすぐ近くに道路が走っているなど、何かあった場合でもすぐに道路へ出られるような川を選んで、釣りをしてください。道路がすぐ横を走っているような川でも、渓流魚たちは生息しているんです」

2024年6月

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