釣り堀というイメージが払拭され、『エリアフィッシング』という名が周知されはじめたのは2000年前後。このエリアフィッシング黎明期の2003年に、PRESSOはファミリーブランドとして産声を上げました。
「当時は、エリア専用のルアーやロッドはあるにはありましたが、現在とは比べ物にならないくらい種類も数も少なかったんです。そんな状況の中、ルアーはもちろんロッド、リール、ラインとエリア専用タックル一式をラインナップしているファミリーブランドのPRESSOが登場して、みんな驚きました。私も驚いたし、DAIWAがエリアフィッシングにかける本気度が感じられたことをよく覚えています」と、PRESSO誕生のときからフィールドテスターとして歩みを共にしてきた高田達也さんが、当時を振り返って話してくれました。
2023年の今年、PRESSOは誕生から20年の節目を迎えました。エリアフィッシングに必要なタックル一式をラインナップしているファミリーブランドが20年もの歴史を刻んだのは、数あるエリアフィッシングブランドの中でもPRESSOが唯一無二です。
誕生のときのPRESSOのブランドコンセプトは『スタイリッシュに釣りを楽しむ』ということ。このコンセプトは現在も変わらずに一貫しています。
「PRESSOとはイタリア語で『身近』という意味です。身近にある釣りだからこそオシャレに楽しみたい、といった想いが込められています。このコンセプトはこれからも変わることはなく、PRESSOの歴史をこれからも作り続けていきます」と高田さんは言います。
高田達也さん。PRESSOフィールドテスター。エリアフィッシング黎明期より以前から管理釣り場へ足しげく通い、PRESSOと歩みを共にしながらこの釣りをけん引してきたレジェンド。
20周年に合わせてリリースされた3モデル
20年の節目を迎えた今シーズン、20周年モデルとしてPRESSO LIMITED AGS 20th Anniversaryをリリースします。これには3モデルがラインナップ。それぞれのモデルを高田達也さんが63UL、三浦敬児さんが658ML-S、そして和田浩輝さんが61MLFをプロデュースしました。ダイワ独自の最新ロッドテクノロジーを惜しみもなく投入した3つのモデルは、究極ともいえる完成度を実現しています。お三方に、自らが開発したロッドの特長について解説していただきましょう。
63UL
高田さんがPRESSOフィールドテスターとして開発に携わってきたロッドは数知れず。どれもが妥協を許すことなく生み出したロッドですが、その中でも高田さんが特に印象が強く、愛着を感じていたのが12年前にリリースした63UL。
「12年前の63ULは投げる、アタリをキャッチする、曲げて寄せる、といったロッドに求めるすべての基本性能が最高レベルにあり、それがバランスよく凝縮されたロッドでした。今回の20th Anniversaryも、最高レベルのトータルバランスを意識して開発しつつ、12年前にはなかった最新のロッドテクノロジーを搭載しました。12年前の63ULから比べると、格段に進歩しています」と高田さんはいいます。
20th Anniversaryの63ULが搭載したテクノロジーの中で高田さんが特筆するのがSVF COMPILE-X NANOPLUS。これによって、感度とルアーの操作性が格段に進歩したといいます。
「大物をヒットさせたときにも、スムーズに曲がってくれます。トラウトの動きへの追従性もよく、安心してやり取りのできるロッドです」と高田さん。
58ML-S
現行のPRESSO LIMITED AGS 58ML-Sをベースに誕生したのが20th Anniversary 58 ML-S。
「PRESSO LIMITED AGS 58ML-Sに搭載されている2段テーパーソリッドは、これまでに使ってきたいろいろなソリッドティップの中でも群を抜いた性能です。この2段テーパーソリッドは20th Anniversaryの58ML-Sにも搭載しています。この2段テーパーソリッドの何がすごいかというと、感度なんです」と58ML-Sの開発を担当した三浦さんは語ります。
しなやかでトラウトに違和感を覚えさせることなく初期掛かりさせられたり、ルアーに絡みついてくるようなアタリに対しても弾くことなくフッキングさせやすい、というのが従来のソリッドテーパーの一番のメリット。半面、しなやかなために若干感度が鈍くなりがち、というのがソリッドの弱点でもありました。しかし、2段テーパーの形状にすることで、チューブラーティップに近い感度を実現させることができたのです。
「2段テーパーソリッドを搭載したPRESSO LIMITED AGS 58ML-Sで十分に満足していたんですけど20th Anniversaryでは、新たにSVF COMILE-X NANOPLUSが搭載されました。これによって、これまで満足していた感度がさらにアップしたんです。これには自分でも驚いているんですよ」と三浦さんはベタ褒めです。
61MLF
シビアなコンディションの中で行われるトーナメントで、和田さんが一番の愛着と信頼をもって使っているのが『PRESSO AGS 61MLF』です。エリアトーナメントでは、和田さんに幾度となく優勝をもたらしてくれた愛竿です。このPRESSO AGS 61MLFをベースに開発したのが20th Anniversaryの61MLFです。
「常にトーナメントを意識しながら釣りをしています。そんな私のフィッシングスタイルは、アグレッシブに掛けていくこと。そのため、使っているラインはエルテルがほとんどで、あとは状況やルアーに合わせてPEを使うなど、低伸度のラインが多いんです。今回、開発を任された20th Anniversaryの61MLFでは、さらに掛けの性能に磨きをかけ、また、低伸度ラインとの相性をもっとよくすることに主眼を置いて開発しました」と和田さんはいいます。
和田さんが考えている20th Anniversaryの方向性をクリアにしてくれたのがSVF COMPILE-X NANOPLUSでした。この搭載によってアグレッシブな掛けの性能は大きく向上しました。
「PRESSO AGS 61MLFとの違いを特に大きく感じるときが、遠投してディスタンスがあるときのフッキングです。これまで、距離の離れた状態でアワセても、フッキングさせるまでにわずかなタイムラグを感じていたんです。でも20th Anniversaryの61MLFでは、沖でバイトしてきてもタイムラグを感じることなくビシッとアワセることができます。PRESSO LIMITED AGS 20th Anniversaryの61MLFの性能は、PRESSO AGS のそれに比べると格段に進化した感じです」。
23-24のシーズンインでリリースするニュールアー
うだる暑さのサマーシーズンがひと段落すれば、秋のハイシーズンに突入です。そのタイミングに合わせて、新しいルアーが3モデル、PRESSOのルアーに新たにラインナップされました。それぞれのルアーのテストに携わったスタッフに、そのルアーの特徴や使い方を詳しく解説していただきます。
PRESSO RATTLIN'POPPIN'BUG
人気と実力を備えたRATTLIN'POPPI'BUGにガラスのラトルボールを2個内蔵。スプラッシュやポップサウンドに加え、ラトルボールが奏でるサウンドで、アピール力がさらにパワーアップ。
「風で水面が波立っているときなど、スプラッシュやポップサウンドだけでは、どうしてもアピールが弱くなってしまいます。でも、ラトルがあるとそのラトルサウンドがアピールし、トラウトを水面まで呼び寄せてくれるんです。ファーストではRATTLIN'POPPIN'BUG、セカンドでノンラトルのPOPPIN'BUGをローテーションさせると効果的ですよ」と和田さんはいいます。
PRESSO MEGA POPPIN'BUG
オリジナルのPOPPIN'BUGよりも二回りほど大きなサイズのMEGA POPPIN'BUG。
「サイズは大きくなりましたが、基本的な使い方はオリジナルのPOPPIN'BUGと同じです。ショートジャークでスプラッシュやポップサウンドを発生させたり、ショートトゥイッチでドッグウォークさせます。高活性のときには一発でバイトしてくる強烈な集魚パワーがあります」と三浦さんは使い方を解説します。
ボリュームがある分、引き抵抗も大きくなります。しっかりと水の抵抗を感じながら操作できるので使用感が高く、ビギナーアングラーでも非常に使いやすいポッパーです。
PRESSO RAVE2
20年前、PRESSOが誕生したときにリリースされたRAVE。その数年後、生産が中止となり、多くのアングラーから惜しまれつつ表舞台から姿を消しました。
「RAVEの生産が終了したときは、私もちょっと残念な思いに駆られました。でも、今年、RAVE2として復活したんです」と、初代RAVEの開発に従事した高田さんはいいます。
2代目となるRAVE2は、初代の性能をほぼそのまま踏襲しています。初代と大きく変わった点といえばウェイトのバリエーションが増えたことです。
「20年前に比べると、今のエリアはかなり繊細な釣りが要求されます。ウェイトのバリエーションが増えたことで、状況ごとに細かく対応できるようになりました。初代RAVEの代名詞的なデザインであるテールが反り上がったダックテールも、RAVE2ではしっかりと採用していて、始動や立ち上がりの早さは初代と遜色ありません」と高田さんはいいます。
PRESSO DOUBLE CLUTCH 48F
HMKLの代表にして、日本を代表するハンドメイドルアービルダーの泉和摩さんが、チューニングを監修したPRESSO DOUBLE CLUTCHシリーズに48㎜サイズが追加ラインナップされました。この48Fで泉さんをうならせたのが、圧倒的ともいえる飛距離です。
「同サイズのミノーに比べるとビックリするくらいよく飛びます。また、動き始めのレスポンスも、ものすごくいい。ミノーの場合、メリハリのある動きというのは非常に大切で、始動が早いと動きのキレがよくなるんです」と泉さんはいいます。
圧倒的な飛距離やキレのいい動きを実現させたシステムがサイレントオシレートVer.S。このシステムは移動式シンカーを支えるシャフトにフッ素加工を施してウェイトの動きを滑らかにする、というもの。プレッシャーが掛かって沖にトラウトが溜まりがちな状況では、この飛距離は間違いなく大きなアドバンテージをもたらしてくれます。
泉和摩さん。HMKLの代表。DAIWAのバスフィッシング部門でのフィールドテスターも務める。ミノーのハンドメイドの第一人者。
究極の軽さを追求したPRESSO AIR AGSシリーズに2モデルを追加。
昨シーズン、斬新なスタイルで鮮烈なデビューを果たしたPRESSO AIR AGS。注目すべきはそのデザインよりも軽さの限界に挑んだこと。このPRESSO AIR AGSに今シーズン、2つのモデルが追加ラインナップされました。その2モデルをソリッドティップに強いこだわりを持つ三浦敬児さんにご紹介していただきます。
55L-S
ソリッドティップ搭載のロッドというと、操作系ルアーとの相性が非常によいなど、少々特化した性能のモデルが多いです。しかし、55L-Sは、いろいろなルアーを使える汎用性を最大限引き出すように開発されました。
「55L-Sは、ティップのソリッドセクションの長さを、従来のソリッドモデルのロッドのそれよりも、ちょっと短めに設計されています。これによって、感度がかなり向上していろいろなルアーへの対応性がアップしたんです。ソリッドティップを一度試してみたい、というアングラーの方には、汎用性のあるこの55L-Sはぴったりのロッドだと思います」と三浦さんはいいます。
全体のサイズを5フィート5インチと少々短めに設計。ミノーイングでのジャークやトゥイッチなどのロッド操作がしやすくなり、また、女性やジュニアアングラーでも扱いやすいサイズになっています。
61ML-S
意のままにルアーをコントロールできる操作性、アグレッシブにフッキングさせていく掛けの性能。ソリッドロッドが得意とするこれらの性能を、さらに磨きをかけるべく開発した操作系ルアーに特化させたスペシャリティモデルです。
「ティップにはソリッドを採用しています。チューブラーほど硬くはないけど、従来のソリッドほどしなやかではありません。ミノーやボトムルアーを動かすときに、よりキレのいいアクションで操作できるように、ソリッドをこの硬さに調整したんです」と三浦さん。
従来のソリッドよりも硬いが、チューブラーよりもしなやか。このため、ミノーイングでありがちなミノーにじゃれついてくるようなアタリに対しても、弾くことなくしっかりとフッキングさせることができます。
「ルアーを動かすとき、よりキレのいい動きを出したいのなら低伸度のPEかエステル。フワッとした少しナチュラルな動きを出したのなら伸びのあるナイロンラインを使ってみてください。ラインのセレクトで、ルアーの動きをコントロールできるのも61ML-Sの特長のひとつなんです」と三浦さんがアドバイスします。