■Q3:スタンダードモデル3種(44S/50S/61S)はどう使い分ける?
小林:「エリアの規模」で使い分けます。私がミノーイングを楽しんでいる渓流の規模は、大まかに3つに分けることができて、それぞれのエリアに「ミノーのサイズ」と「釣れる魚の平均サイズ」が紐づいています。もちろん例外はありますが、基本は以下のとおりです。
小渓流:44S
沢や源流の一歩手前、または支流に多いロケーション。川幅は狭く、水面に木々がオーバーハングして(覆い被さって)いる箱庭的な小場所。プレゼンテーションはピッチングを多用する。大物が潜んでいることもあるが、多いのは18~22cmの魚。
渓流:50S
フルキャストでは対岸をオーバーランしてしまうが、ピッチングではもの足りない川幅のエリア。サイドキャストで広く探ることもあれば、スポットをねらってピッチングすることもある。平均対象サイズは25~30cm。
中流:61S
川幅は、上記「渓流」の倍ほど。このあたりまで下ってくると空は大きく開けていて、鮎釣り師の姿が見られるようになる。サイドキャストが主でピッチングすることは稀。平均対象サイズは30cm前後、40cm超えもねらえる。
以上のように私はSilverCleekミノーのサイズを使い分けています。けれど、たとえばいちばん大きい「61S」を中流で使用する理由は、「中流で釣れる魚が大きいから」というだけではありません。中流は川幅が広く、水量が豊富で流れも速く太いので、広範囲を効率よく探るために、ミノーにある程度の重量と大きさが求められるのです。重いほうが飛距離を出しやすく、流れの中でコントロールもしやすい。また、大きいミノーのほうが魚から見つけてもらいやすい、というのも中流で「61S」をメインにする理由の一つです。
逆に、狭い小渓流では、魚が着いていそうなスポットを一つ一つ丁寧に探ることができます。ここでは、効率よりも、魚に無用なプレッシャーをかけないことが優先されます。質量が小さいミノーのほうが、着水音を抑えやすく、水中での存在感も薄いため、ねらっているスポットの魚にだけアピールすることができる。逆にこのような小場所で大きなミノーを使ってしまうと、1投で広範囲にアピールしてしまうため、ねらっていないスポットの魚にまで遠目にルアーを見られたり、感づかれたりして、意図せず反応させてしまいます。極端な例えになりますが、バスフィッシングで用いられるビッグベイトを小渓流でキャストしたら、たった1投で、そのエリアにいるすべての魚に強烈なプレッシャーを掛けることができるでしょう。
詳しくはまたの機会にしますが、渓流ミノーイングでは、魚の"食性"に訴えるだけでなく"縄張り意識"や"反射行動"も利用します。こうした釣りにおいては1投目の重要性が非常に高い。「1投目」を具体的に言えば、「魚に最初にルアーを認識させるとき」です。このとき、魚に中途半端にルアーを追わせてしまうと、次のキャストで再び反応させて釣るのは至難の業です。
川幅が広いエリアで、魚のほうからルアーを見つけて食ってきてほしいのか。それとも小場所で、限られたスポットを一つ一つ丁寧に探っていきたいのか。この観点でルアーサイズを選んでみてください。