LB(レバーブレーキ)。指1本でローターの逆転を制御する仕組みのリールは日本の釣り文化が生んだもので、世界を見渡してもほぼ類を見ません。なぜLBがフカセ釣りに適しているのか、レバーがもたらす恩恵とは何なのかを、いま一度考えてみましょう。
●LBの役割とは何か
LBとは、レバーを握る力加減でライン(道糸)を出すための機構です。LBの重要性を再認識するためには、まず「ラインを出す理由」を知る必要があるでしょう。
磯のフカセ釣りは、数ある釣りのなかでも特に細ハリスが多用される釣りです。磯では予期せぬ大物が食ってくることもありますが、通常でも1.5号ハリスで40㎝以上の魚とやり取りするわけですから、そもそもライン強度の限界近くで魚と対峙するのが、フカセ釣りであるといえます。
近年の釣り糸は強いので、1.5号ハリスでも、40㎝前後の黒鯛(チヌ)やメジナ(グレ)であれば竿を矯めているだけで浮かせることは可能です。しかし魚の引きは一定ではありません。磯魚が突っ込んだときの瞬間的な引きの強さはかなりのもので、無理に引っ張り合いをするとハリスは簡単に切れてしまいます。
やり取り中にラインを出す目的は、魚に引かれてラインに掛かる負荷が限界値を超えそうになったとき、テンションを緩めてハリス切れを回避することであります。これを指1本で行うのがLBリールなのです。
ラインを出す機構としては、LB以外にもうひとつ「ドラグ」というものが存在します。釣り全体を見ればドラグが主流であり、LBはフカセ釣りをはじめとするごく限られた釣りで好まれているにすぎません。
ではなぜ、フカセ釣りでLBの愛用者が多いのでしょうか。LBを使う理由は人によって様々かと思いますが、その優位点の最たるものは「魚の走りを早く止められること」と「瞬時に道糸を出して竿の角度を立て直せること」の二点にあるでしょう。
魚はハリスやハリの存在を知りません。ハリ掛かりした魚が力いっぱい突っ込むのは、目に見えない力に口元を引っ張られるからです。LBは釣り人の意志で逆転を制御できるという特性があり、ラインを一気に出して、理論上では瞬間的な“0テンション”を作ることも可能です。ラインのテンションをなくすということは、魚にとって“逃げる理由がなくなること”を意味します。
ドラグを滑らせてテンションを掛けたままラインを出すと、特に根への執着心の強い磯魚は、怖がって根際へ突っ込む傾向がありますが、LBで一気にラインを送り出すと、意外にその場でじっとしていいます。この間に竿を起こして弾力が効いた状態へ立て直すわけです。
フカセ釣りのタックルはよく考えて作られており、竿の弾力、道糸やハリスの伸びなどが総合的に作用することで、優れたクッション性能を発揮します。竿をしっかり曲げた状態、つまり竿の弾力が活かされた状態であれば、根ズレしたり、想定外の大型が食わないかぎり、ほぼハリスは切れません。
出すのも一気、止めるのも一気。竿の角度が悪くなったら一気にラインを出し、竿が立ったら逆転を止めて一切ラインを出さない。これがLBの正しい使い方といえるでしょう。
●力を抜くためのチカラ
「余計な力を入れないこと」
これは釣りに限らず、どんなスポーツにおいてもよく言われることです。不要に力むと関節や筋肉が硬くなり、思ったように動けなくなるからです。
しかし、力を抜くためには力が必要です。たとえば、10の力が必要な場合、20の体力がある人ならば半分の力ですみますが、11の体力しかない人は全力に近い力が必要になります。どれだけ力を抜くことができるかは、その人が持つ体力によって変わってくるのです。
そこで、本来は10必要な力が、半分の5の力ですむとなったらどうでしょう。体力のない人にも余裕が生まれ、関節や筋肉を柔らかく使えるようになったことで、動作も楽になるはずです。体力のある人にとってはより大きな余裕となるでしょう。
「ブレーキ力と逆転のレスポンスを高めることで、軽い力でレバー操作を行えること」
これがダイワが次なるLBリールに求めた命題でした。ブレーキ力が上がればレバーを握る力が軽くてすみ、余裕が生まれます。繊細なロッド操作が可能になり、不利な体勢でもやり取りに集中できます。大物と格闘する際も腕にかかる負担がグッと軽減されるはずです。
ブレーキのレスポンスが向上すると、必要量のラインを送り出す時間を短縮できます。竿を伸されそうになっても即座に体勢を立て直すことができ、必要以上にラインを出さずにすみます。特にラインの出し過ぎが致命傷となる磯際では、その効果がより際立つでしょう。
今秋、新開発のハイパワー&ハイレスポンス「BITURBOブレーキ」を搭載した「TOURNAMENT ISO LBD」が満を持してデビューします。軽いタッチで強力なブレーキ力を発揮し、逆転レスポンスもクイック。やり取りのフィーリングを根本から変えるLBリールの登場です。