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1.海中での仕掛けのイメージ力が釣果を左右する!

ちょうどこの時期、マダイの乗っ込みを迎えます。乗っ込みとは、産卵期前の荒喰いのこと。産卵という、とてつもないエネルギーを必要とする彼らにとっての最大のイベント。そのイベントが終わった彼らは、お腹はえぐれたようにへこみ、全体的にもげっそりとやせてしまうほどです。それに備えて彼らはしっかりとエサを喰っておく。つまり裏を返すならば、釣り師にとっては、マダイ、しかもこの時期は良型をゲットするこの上ない最大のチャンスタイムなのです。

砂地は海底スレスレ、岩礁地帯は根の中腹

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1キロ未満のマダイは、好奇心の方が警戒心より勝っているので、かなり確率高く喰ってきます。小型でもマダイはマダイです。釣り上げたサカナは、乱獲にならない限りきちんと食べてあげたいものです。
2キロを超えると、マダイもかなり警戒心を持ち始めます。つまり老成すればするほど、なかなかハリには掛かってくれないことになります。ですが、コマセとタナとの関係をしっかりと読めれば、大物も夢ではありません。

そんな絶好のタイミングにマダイを釣ってみたい。しかし、なかなか思うようには釣れないというビギナーの方たちの話もよく耳にします。

マダイというと、なにか中層を泳ぎ回っているような印象を受けますが、実際には砂地の海底だと海底スレスレでエサをとることが多いのです。やはり海底付近にいるエビ・カニ類、アミ類、小魚類、イカ・タコ類、貝類などが主な食料。砂地の海底での捕食行動に出る時は、まちがいなく海底スレスレのラインで喰ってきます。もちろんベタ底で喰うこともありますが、コマセが効いている場合は、海底から1〜2メートルの辺りで喰うことが多いものです。

よくコマセマダイで、ビシを海底に着底させてからハリスの長さ分のミチイトを巻き取ってアタリを待つというのはこのためです。ただ、このときにただハリスの長さ分だけのミチイトを巻き取って待つだけでいいのでしょうか? なぜ同じことをやって、ベテランとビギナーとではっきりとした釣果の差が出るのでしょうか?

それはイメージ力だとは思います。船の船頭は、暫定的な目安として、ハリスの長さ分だけを巻き取って、コマセを2〜3回振って待てと言います。もちろん5割6割程度の確率で、それでも釣れることはあるはずです。あとの4割はイメージ力の差が大きく影響してきます。

例えば、潮の流れを計算に入れてみましょう。単純にハリスの長さ分だけ、例えば10メートルの長さのハリスを使っていて、10メートル巻き上げてアタリを待つというのは、潮の流れがまったくなくて、テンビンからほぼ真下にハリスが垂れ下がった場合に付けエサが海底スレスレにあることになります。潮の流れがあると、ハリスの部分はちょうど鯉のぼりの吹流しのように流れにたなびきます。強い風が吹けば吹流しはほぼ真横にたなびきますし、緩やかな風なら軽くたなびきます。どれぐらいの潮が流れていて、ハリスがどれだけたなびいているのかをイメージしながら、海底から何メートル巻き上げて待ったらいいかを探ります。

でも、実際にはどうしたらいいのかわかりませんよね。その辺がいわゆる「経験と勘」の話になるのですが、こんな感じではないかと試してみることです。例えばそこそこの流れがあると判断できる場合に、仮にテンビンからハリスが45度ぐらいに傾いているとしましょう。このような場合なら、三角定規の両サイドが45度の角度のものをイメージします。この三角定規の長い辺がハリスの長さ分の10メートルにあたるので、他の一辺を計算するとだいたい7メートル。(※三角関数です。10割る1.4でおよそ7になります。わからない場合は、ただ聞き流してください)つまり、テンビンから45度の角度でハリスがたなびいているとすると、海底から7メートル巻き上げれば、ちょうど付けエサが海底スレスレに計算上はなるわけです。

ただ、いまの計算は、まるで図面を引くような形でハリスがたなびいた場合のものです。実際には、ハリスが潮の流れに吹かれると、ハリスの部分が持ち上がり、放物線のような曲線をハリスが描いて付けエサがふわふわとしながらぶら下がります。この場合も、使うハリスの太さによってハリスの吹かれる度合いは異なりますし、太い軸のやや重めのハリを使う場合と、細い時期の軽めのハリを使う場合とでは微妙にぶら下がり方も異なります。つまり、その辺の微調整は、自分なりに探っていかなければならないのです。もっと綿密に考えるなら、コマセの流れ方も潮の強弱で異なります。うまくコマセの流れの中に付けエサが入るようにイメージするのはかなり難しいでしょう。でも、そこまでのイメージ力は難しいとしても、ハリスのたなびき方がどのようになっているかぐらいまではなんとかできそうです。

他の人は釣れているのに、自分にはアタリすらない

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砂地の海底では、大物でも小型でも海底から1〜2メートルぐらいのところを回遊します。自然界では、海底にいるエサを喰いますが、コマセの撒かれた状況では、この回遊コース辺りで捕食することが多いと考えられます。

とにかく他の人にアタリがあって、自分にはアタリがないというのは何かがズレている証拠です。例えば、(1)付けエサの付け方が悪くて仕掛けを沈める途中で落ちてしまうとか、エサ盗りにエサを盗られたのにアタリを待っているようなエサがハリに付いていないケース。(2)コマセを詰めすぎてコマセが出ていないケース。(3)タナが合っていないケース。コマセマダイなら、たいていこのどれかのケースにあてはまります。(1)や(2)は簡単にチェックできるので、まずはその2点をチェックして解消します。それでもアタリがなければ、その次に(3)を考えます。特に(3)のタナは、たかだか1メートルタナがズレているだけでも、喰う確率は大きく変わってきます。極端な話、自分のビシからコマセがうまく出ていなくても、タナが合っていると他の人のコマセでも喰ってくることは多いものです。

そのときに前述のことを思い出してください。ハリスのたなびき方が弱く、付けエサが海底に着いてしまって、ズルズルと引かれているような場合。この場合でも、けっしてマダイは喰わないわけではありませんが、喰いが悪くなることは間違いありません。もしエサが残ったまま仕掛けを回収してみると、エサのオキアミに砂がたくさんついているものです。また、シロギスやトラギス、その他ベタ底にいる外道ばかりが釣れてくるのも、付けエサを引きずっている証拠です。ちょうど海底から1〜2メートルぐらいを付けエサが漂うようなイメージをするといいと思います。

前述の計算からすれば、少し潮が早く流れている場合に、ハリスの長さ分の巻取りではアタリがなければ、例えば巻上げを9メートルにしてしばらく様子をみる。それでもアタリがなければ、8メートルの巻上げにしてみる。このような探りをしていれば、必ずその日の状況に合ったドンピシャのタナが見つかるはずです。これは海面からの指示ダナの場合にもあてはまります。船頭の指示ダナを守り続けていてもアタリがない場合は、1メートル浅くしてみたり、深くしてみたりという探りをいれます。

ただし、ドンピシャのタナを見つけても、1日中まったく同じタナでありつづけることはありません。また前日がどうであれ、次の日も同じタナということもありません。とにかく常に探り続けることが大切なのです。アタリがなくなったら、また同じように探ります。潮が遅くなれば、ハリスの吹かれる度合いも弱くなってハリスが立ち気味になることをイメージしてタナを探るといいでしょう。

※釣魚水中生態学入門より移設