ダイワの並継へら竿各シリーズの重さを8尺で比較してみます。
HERA S・Fスペックの8尺 ...... 37g
HERA Vの8尺 ...... 41g
枯法師の8尺 ...... 50g
荒法師 武天の8尺 ...... 56g
軽量系デザインの【HERA V】は、SのFスペックには及ばないものの【充分に軽い竿】ということが言えます。
しかし、昨年のダイワへらマスターズ王者である遠藤裕康選手は、この試合でも普段の釣りでも【枯法師】を使っているにもかかわらず、HERA V 10.5尺=56gをロケで使用して、満足げに「重い」と評しました。ちなみに愛用の枯法師は10尺=70gです。
釣竿のなかでへら竿はとくに、そのなかでも短尺は顕著に、「軽ければ軽いほど良い」が通用しません。へらぶな釣りにおいてアタリ感度を担うのは、おもに「ウキと目」ですから、たとえば開発の過程でダイワ規格の曲げ強度を余裕でクリアしたからといって、その分、さらなる軽量性を追い求めたりはしないケースが多い。竿(手もと)が軽量になれば、相対的にエサや魚が重く感じられ、軽くしたことで疲労感が増すということが起きます。また、軽さは張りの強さに直結しやすく、それは短尺であるほど強調されます。パワーと驚異的軽量性の両立で「銀河系No.1へら竿(※【へら通信】編集部主観)」の称号をほしいままにしている【HERA R】、その最短モデルが12尺(=55g!!)というのはこうした理由もあるからです。
さて、遠藤選手の「HERA Vは重い」発言ですが、へら竿の"体感的重さ"は、重量やバランスだけでは決まりません。釣り人が感じる重さは、竿の調子やパワー、張りの強弱などに大きく影響されます。実際には軽いHERA Vの短尺モデルが、イイ意味で重く感じる理由の一つは、先調子でありながら胴に加重しやすく設計しているから。短い分、イヤな張りが生じてしまうところを、短尺専用設計で緩和し、シリーズ共通の"ほどよく硬式、しなやか先調子"に整えているんです。逆に長尺モデルでは、長さの分だけしなりやすく、実際の重量以上に重く(振れの収束が遅く、だるく)感じられてしまうので、設計上は"しっかり先調子"にしています。
ダイワの並継へら竿は、どのシリーズも継ごとに丁寧に、尺数ごとに根気よく、設計とテストをくり返し、完成された継の集合として渾身の一振りに仕上げています。
ダイワの並継へら竿は、スタンダードの次元が違います。
あまり目新しいところのない、ただただ扱いやすさのみを追究した【HERA V】ですが、だからこそ、この竿も丁寧に、根気よく作り込みました。
【ダイワ並継へら竿の設計思想Vol.01/03】