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4.カワハギの巧みな摂餌行動を見た!

この時期になると、沖釣りの人気魚種としてカワハギ釣りがヒートアップ。

というものの、カワハギ釣りというのは不思議なもので、関西や九州などではほとんど行われない、関東エリアに妙に偏る釣り文化とも言えるが、徐々に全国に浸透しつつもある。このカワハギ釣りに一度でも興じてみると、その虜になってしまう魅力がある。

カワハギは、釣り師によって丁寧にハリにつけられたエサを巧みに盗っていく。まさに怪盗ルパンに宝石をさらわれてしまうように、こっそりと跡形もなく盗ってしまう。その悔しさは味わってみなければわからない。そしてうまくハリがかりさせたときの強い引き込み、また海面近くまで巻き上げても何度も強く引き込む釣趣のよさ。そして夏を過ぎ秋〜冬期はカワハギの肝も発達し、その食味のよさもさらに加わるというのがカワハギ師を大増殖する要因だ。

そのカワハギを釣るためには、カワハギの手口がいかに巧妙なのか、それは海の中から観察する以外に方法はない、と考え、そこでボクはダイワのカワハギプロジェクトに参加した。

1)カワハギは光るものに興味を示す

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光るオモリも集寄と同じ効果が見込める。たたき釣りでオモリをたたくとオモリはキラキラとしながら踊る。その動きにカワハギは強く興味を示した。

まず、カワハギは好奇心旺盛なサカナ。何か興味をそそるようなもの、例えば集寄(しゅうき)のようにキラキラと光るものには興味を示して寄ってくる。最近は、オモリもキラキラと光るようなものが使われている。先日の実験では、その光るタイプのオモリを突っつくシーンも目撃した。

「タタキ釣り」などは、オモリや集寄を躍らせ、カワハギの好奇心をあおって自分の仕掛けにカワハギを寄せる効果はある。しかし、オモリはまったくの影響はないが、集寄に関してはそれを振ったときの振動や集寄自信の動きがサオ先に伝わり、微細なカワハギのアタリと誤認してしまうケースも発生している。この辺は特に最近のカワハギ竿が先鋭化しているので、使う使わないは釣り師の好みになるだろう。

2)カワハギは海底のエサには気を許す

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カワハギの本来の摂餌方法は、海底に強く息を吹きかけるようにして水を吹きかけ、砂泥を舞い上がらせて、そこに隠れているエサを掘り出して摂る。

「たるませ釣り」といって、幹糸を海底に這わせ、付けエサを喰わせてハリがかりさせる方法があるが、この方法は実に理にかなっているということが水中観察から再確認できた。

カワハギの本来の摂餌方法は、海底に向かって45〜60度ぐらいの角度で下を向き、海底の砂泥に対して海水を強く吹きかける。砂泥は舞い、そこに隠れていたエビカニやゴカイ類などが飛び出してきたのを捕食するという方法。やはりこのようなエサの喰い方が彼らにも自然なのだろう。

観察していると、彼らも本来の喰い方であるためなのか、幹糸が海底を這い、エサが海底に置かれているという状況下でのエサの喰い方はより積極的となり、何度もハリが口の中に入るというケースも確認できた。

仕掛けが立っているような状況では、ハリからエサを喰いちぎるようにして喰うため、なかなかハリが口の中に入るというチャンスは少ない。

つまり、仕掛けを寝かせてハリが口の中に入るというチャンスを多く作ってやることこそ、カワハギのヒット率を高めることになる。さらに、そのタイミングをサオ先で感じることができれば、怪盗ルパンをゲットできる確率も高まるはずだ。

3)最近は「たるませ釣り」でも釣れないケースが出てきている

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海底に横たわった幹糸。付けエサも海底に置かれてある。そういった状況では、カワハギは安心して付けエサをほおばる。そのときにハリが何度も口の中に入った。

おそらく釣り師とターゲットというのは、どの釣りにおいても「いたちごっこ」の連続なのだろう。釣り方流行というのも、まるでファッションの世界のように十年単位ほどでその流行を繰り返す傾向が見られる。そういった点でも、最近のカワハギはスレてきて「たるませ釣り」などでの付けエサの喰い方に変化が出てきたのかもしれない。

ボクも先日カワハギ釣りに行ってきたのだが、午前中は「たるませ釣り」でポツポツ釣れたのだが、お昼ぐらいから「たるませ釣り」ではなかなかヒットせず、仕掛けを立てて、最初のアタリでハリに乗せる方がヒット率が高くなるという現象に直面した。

この辺は、なんらかの潮加減なのか、カワハギの気まぐれなのか、最近ときどき起こり得る現象だ。

この仕掛けを立てた場合は、さらにサオ先の鋭敏さが要求される。もともとカワハギ釣りには鋭敏さが要求されるのだが、とはいっても張りすぎてもやわらかすぎても乗りが悪く、そのあいまいな張りというのが鯨穂先などを使った和竿に求められていた。しかし最近は、最先端の技術を駆使し和竿よりもアタリの伝達性と操作性、乗りの良さに優れたカワハギ専用竿も多くリリースされ話題となっている。

カワハギと釣り師との間に繰り広げられる「いたちごっこ」はさらに激化していきそうな気配だ。

※釣魚考撮より移設