この人気赤丸急上昇のターゲットは、いったいどんな奴なのだろうか(?)。そして相手のことが少しでもわかったら、ボクたちもどのような方法をとればいいのかが少しずつわかってくるはずである。
イカという生き物は、タコと同様になにかエイリアン的なイメージが強い。ふだんは普通にしているのに、相手を襲うときはいきなり豹変して襲いかかり、捕食するような印象をもたれやすい。イカ、特に今回の話題のアオリイカは、イワシやサバっ子などの小魚類はもちろんのこと、スジエビやクルマエビの子などのエビ類は大好物。また成魚でも弱っていたりすると容赦なくその腕で捉え、捕食してしまうのだ。
アオリイカのエサの捕食方法は、まず眼でエサを捉えているようだ。 イカやタコの眼は、機能的にも研究者たちの間でかなり進化しているものと考えられていて、特に形の認識能力に関しては人間の目に近いものがあるといわれている。この眼で何かを捉えると、それがエサであるかを探り、瞬時にエサと認識すると静かにそのターゲットに近づいていく。スーッと相手に寄るときはジェット噴流で近づき、自分の位置の微調整や静かに相手に寄って行くときなどは、エンペラ(胴の縁にあるヒレのこと)を使って、音もなく忍び寄る。エンペラを使った動きは、前進も後進も上昇も降下も可能で、例えればヘリコプターのような動きができるのだ。そして、10本の腕の中の2本が触腕といって、バネ仕掛けの細工のように瞬時に伸び、先端の吸盤も駆使してエサを捉えるのだ。 このように書くと、いかにもハンティングの名手のように思えてしまうが、実際はそうでないから面白い。 ニ年ほど前に、東伊豆でシロギスを捕食しようとしていたアオリイカを海中で発見。ボクはどうやってアオリイカが捕食するのかを観察しようと考えた。 アオリイカは、最初にシロギスを見つけたときは海底から2mぐらいのところを泳いでいた。それからじわじわと高度を下げ、海底から50cmぐらいの層を泳ぎながらシロギスに近づいた。タイミングを見計らって、さらにシロギスに接近し、シロギスとの距離も40cmほど。シロギスはこの危機を察知しているのかわからないが、のんきそうに仲間と泳ぎながら海底の砂の中のエサをあさっていた。シロギスにとっては最大のピンチなはずである。 次の瞬間、アオリイカは腕をはじいて触腕のミサイルをくりだした。ボクの目ではさすがにスローモーションでは見られなかったが、アオリイカが触腕をくりだしたその瞬間に、シロギスは危険を察知してすばやくわずかに身をひるがえした。まるでプロボクサーのスウェーバックの技でパンチを避ける様を見るようであった。 ビクンッとシロギスが身を反転。わずかなことだが、狙いをさだめてくりだした触手は空を切り、だらしなく伸びたままぴろぴろとさせていた。どうも繰り出した触手を相手の動きにそって修正しながら伸ばすといった器用な芸当はできないようなのである。 捕れそうだったエサをはずした無念さがアオリイカにもあるようで、伸びた触腕はしばらく伸ばしていたものの、ようやく気を取り直して、伸びきった触腕を格納した。すぐに気を取り直して相手を攻撃するのかと思いきや、一度はずした相手は続けて攻撃しても避けられてしまうということを学習しているようで、深追いせずにその場をあとにしていた。 この一連の行動を見る限りは、アオリイカのハンティングは一見精度の高い精錬されたもののように思えるが、実はミスも多く、意外と不器用な行動のようである。 |
一般的なルアーのアクションとは違って、アオリイカのエギングの際のアクションは棒引き、ストップアンドゴー、フリーフォールといった直線的なシンプルな動きに限定した方がノリがいいはずであるとボクは考えている。直線的な動きであれば、アオリイカも相手の動きを読んで触腕ミサイルをくりだせる。ここで予測不能なアクションを織り交ぜてしまうと、エギの動きが複雑になり、アオリイカも触腕ミサイルをくりだせないし、くりだしても前出の話のようにはずしてあきらめてしまうケースもある。それだけ精度の低い攻撃であれば、少ないチャンスも確実にものにしようという行動につながり、一度捉えたものは逃がすまいというしがみつきの行動が起きる。
ということは、ボクらからすると、シンプルなアクションで臨んだほうが、アオリイカがエギをアタックし、抱きついてハリにかかる。そう、アオリイカをゲットできる確率も高くなると考えられるのではないだろうか?
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