銘竿の系譜
枯法師物語 その3
これぞ「The 枯法師」
最先端素材・技術と感性の融合
オンライン開催となった「釣りフェスティバル2022」の1月21日。
ついに「七代目枯法師」がそのヴェールを脱いだ。六代目から9年の時を経て新生「枯法師」が誕生したのだ。
勘の良い釣り人はこの「枯法師物語」が始まった時、今日を予想していたのだろう。すでに昨年暮れからその兆しを感じていたようだ。
釣果のみを追い求めず、大自然の中で一枚のへらぶなと語り合う至福を享受する。その思想を軸に貫いてきたのはへら竿の本道を貫く正統派中硬本調子。そして見て手にするだけで釣り人を酔わせる和竿を髣髴とさせる意匠。
そうした「枯法師」の「枯法師」たるあり様は「七代目」でも当然継承されているが、ダイワが誇る最先端素材・製竿技術が総動員されたことで、機能面では超ハイテクロッドの域に到達している。
それゆえ最新の釣り環境、釣技の進化に対応しているといえる。
つまり「七代目枯法師」は現時点で実現しうる最高の機能と変らぬ感性が融合した作品といえるのだ。
そんな「七代目」の誕生をひときわ深い感慨を持って見つめるのは生井澤聡。
「五代目」からこの竿の開発に深く関与してきた生井澤は、「七代目」に対してそれら以上の情熱を注いできた。
今回はそんな生井澤に「七代目」の全貌を語ってもらった。
↑初代と七代目を手にして ↑七代目への並々ならぬ想いを感じた
まさに「The 枯法師」
生井澤は「七代目・枯法師」をこう解説する。
「プロトからずっと開発に関わらせていただいた『七代目枯法師』がついにデビューしたことは、僕にとっては最高の悦びです。それは機能も外観も僕の要求に完全に答えた作品に仕上がったからです。『枯法師』は誕生するたびにひとつのエポックとなってきましたが、今回の『七代目』はより大きなエポックとなると思います。まさに『The 枯法師』『枯法師の中の枯法師』といってもいいくらいの出来栄えです。それほどの自信作です」
↑テストは節ごとにチェックしつつ実際に使用して検証する地味な作業の連続
七代目の革新部分
「『七代目』は『六代目』と比較して少し変わりました。『六代目』よりさらにワビサビを追求し、ダイワのテクノロジーを満載して『枯法師』としての理想を実現したのが『七代目』です。具体的には18,21尺を除く短・中尺アイテムはより細く繊細さを増し、その意匠は本物の和竿と錯覚するような質感を持ち、調子的には竿を大きく曲げて弧で魚を浮かせるイメージです。しなやかな曲りを見せますが、肉厚で粘りとパワーがあります。ですから一見、華奢に見えても魚は楽に上がってきます。
すでに取材でも何度か使わせていただいています。その中で『六代目』と『七代目』を交互に使う場面もあり、その差をダイレクトに感じることが出来ました。『七代目』は『六代目』とは竿としては全く別モノに仕上がっていますね。『六代目』のしなやかシャープな釣り味も最高でしたが『七代目』はさらにいい。しなやかで粘る別格なものがあります」
↑今まで以上に大きな弧を描き、美しい曲がりで浮かせる竿へと進化
アイテムごとの特徴
さらにつっこんで生井澤は尺ごとの印象も語ってくれた。
「すべての尺にそれなりの味がありますが、個人的には15尺が好きです。4継になったことで実にしなやかさが増しています。ですがカブらないギリギリのバランスをだすことで、使い勝手や操作性を損なうことなく、へらぶなと語り合える竿になっていると思います。
注目すべきは実は短尺です。今回短尺アイテムが一番違いが明確で面白い仕上がりになっています。尺ごとにこだわった重心バランスを調整したからこそ可能になったしっとり感がありますね。小さな池でのんびり楽しみたい、そんなイメージです。もちろん競技でも牙を剥いてくれるでしょう。ズバリ、勝てる竿ですよ。曲がった時に発生する竿のトルクが勝手にへらを浮かせて、寄せてくれるから取り込みも早い。意外なのは乗っ込みにも使えることです。大型のへらにも負けないパワーがありますからね。ガマに走られるような釣りでは硬い竿のほうがいいけど、掛かりの少ないフィールドではワンランク細仕掛けが使えるからより面白い釣りができると思います。
そして驚くのは18尺と21尺です。めちゃくちゃ持ち軽く仕上がっているんですよ。ですから一気に扱いやすくなりました。これらの長尺は今までの『枯法師』の長尺のイメージを完全に覆すでしょうね。
要するにすべての尺において、それぞれの長さが最高のパフォーマンスを演じてくれるわけですよ。
↑七代目は長い開発期間を経て、あらゆるシチュエーションでのテストが行われた
磨かれし外観
外観や塗りも素晴らしい出来栄えです。笛巻きの間隔、尺ごとに変えてある玉口の段塗りなど、最高です。この辺は僕のこだわりでしたから、嫌われるほどうるさく注文を出しました。でもダイワの技術陣はそれに確実に答えてくれました。結果、これまでの歴代枯法師のどれにも似ていないけど、‟これぞ枯法師!"と言えるような素晴らしい竿が出来たと思います」
↑どの部分を見ても質感の高さとこだわりのディテールに満ち溢れている
七代目に適したシチュエーション
そして生井澤は実釣場面を思い描いてまとめてくれた。
「『七代目枯法師』は釣り堀から野釣りまで幅広く使える竿ですが、どうせなら景色のいいフィールドで釣りたいですね。画になる竿ですから美しい水辺がよく似合います。そこでへらぶなを掛け、竿の曲りを見上げれば至福のひと時を味わえるでしょう。
そんな意味ではへらぶな釣りの醍醐味を味あわせてくれる凄い竿ができたと思います。皆さんにも早く手にしていただきたい。きっと『枯法師』だけが与えてくれる釣り味に酔い痴れ、満足を感じることでしょう」
生井澤はこうまとめてくれた。
「七代目」の発売予定は3月。
今年は春の訪れが一層楽しみになりそうだ。