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1.男女群島で大型爆釣のニュースも飛び交う超人気ターゲット!

関西でグレ、関東でメジナ、九州でクロ。そのほかにも地域によって呼び名が異なりますが、北部北海道を除く日本全国的に分布し、主に磯釣りのターゲットとして人気の高いサカナです。

正確には、日本近海で見られるメジナは3種。メジナ、クロメジナ、オキナメジナ。その中でもメジナは、通称クチブト。クロメジナは、尾ビレ後端がやや長いことからオナガ。オキナメジナは、口元がやや不細工なことから、ブタメジナなどとも呼ばれています。いずれの種も、ウロコがしっかりとしていて、荒磯でしっかりと生きていかれるカラダつきをしています。ヒキは強く、最後の最後まで激しく抵抗することが、人気のひとつと言えると思います。

メジナが根に入るというのはどういうことなのでしょうか?

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メジナは、ハリがかりすると、ほぼ真下の海底に向かって突進します。そのときに、少しでも逃げる隙を見出せば、すかさず岩肌に張り付いたり、岩の隙間に頭を突っ込んだりします。

まず最初に、メジナの棲家についてお話しする必要があるでしょう。メジナは、前述の3種とも、岩と岩の割れ目、オーバーハングした岩の下側、大きな岩の下などを棲家にしています。あまり狭い空間だといなかったりするのですが、入り口が狭くても中が広くなっているような空間があれば、そこを棲家にしています。日中もそこに潜んでいたりもしますが、そこを出てエサを食べて、再び戻るような行動をしています。

また、本来の性格はかなり神経質で、おどおどとしたそぶりをよく見せます。(ただし、コマセなどに酔うと、実に大胆に変身し、他のサカナたちを寄せ付けないような行動もよくとります。またコマセに乱舞している時は、水中撮影で近寄っても逃げないことがよくあります)

さて、ハリにかかったメジナはどのような行動をとるかというと、全力で真下に泳ぎます。そのスピードは、ボクたちの想像をはるかに超えていて、かなり速いものです。これが真実なのかはわかりませんが、サカナには痛点といって痛みを感じるところがないと学説的には言われています。でも、以前、水中でイシダイがガンガゼを食べようとして、ガンガゼの反撃をくらって、その棘が数本口の周りに刺さった瞬間を見たことがあります。そのときのイシダイに、痛そうなそぶりが見られたので、まったく痛点がないというのは、ボク的には信じていません。いずれにしても、ハリがかりしたメジナは、間違いなく口の辺りに違和感を感じているでしょうし、何かしらに引っ張られているという束縛感も感じているはずです。その呪縛的な状況を打破しようと、海底に向かって全力で泳ぎます。

また、メジナも含めた磯魚たちは、カラダについた寄生虫などを取ろうとして、岩肌や砂地にカラダをこすりつける行動をふだんからよくとります。つまり、そのハリがかりしたメジナにしてみれば、岩肌にカラダをこすりつけてとろうとしたりするのは、ごく自然な行動といえるでしょう。

たった1本の背ビレの棘を立ててふんばる

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海藻にハリスがかかって、そこにまきついてしまうケースもあります。このときは無理に引いてはずそうとすると、ハリスで海藻を縛ってしまうことになり、さらに事態を悪化させることになりかねません。

そもそも岩肌に自分のカラダをこすりつけたり、本来の棲家のような場所に逃げ込もうとする行動は、実に自然ななりゆきです。ですが、何度か実際に根に入ったというメジナを確認してみると、ほんのちょっとした岩の隙間に頭を突っ込んでいたり、隙間に入って背ビレの棘を立てていても、そのうちの1本が岩に引っかかっているというようなケースがほとんどです。

ただ、そこは磯魚の強みで、仮に棘1本でも引っかかっていると、さらにカラダをよじってその場に張り付き、ちょっとやそっと引っ張っただけでははずれません。さらにウロコを立てる場合もありますし、エラ蓋を張って張り付く場合もあり、そうなると手のほどこしようがありません。無理にサオをあおって根から引き出そうとすれば、サオを折ってしまうか、ハリスが切れるか、そうでなければミチイトが飛ぶか、そのどれかになるでしょう。

うまく根から出すためには

サオ尻をたたくといいとか、サオをゆするといいとか、ミチイトを張ったまま待つとか、いろいろな方法が伝えられていますが、どれも有効かは不明です。根に入ったメジナを見る限り、ただひとつ言えることは、とにかくサカナをリラックスさせること。サオであおれば、その力がラインを通じて伝わることとなり、張った背ビレやエラ蓋、ウロコをたたむどころか、さらに意固地になって張ってしまいます。また、そうやって張り付くことは、メジナにとっても体力を消耗させることと、外敵に襲われやすいというリスクを伴っています。つまり、カラダが自由になれば、本来はその場所から彼らは逃げたいのです。そのような状況を作ってやるためには、やはりミチイトが張らない程度まで緩めてやり、その場から逃げ出すチャンスを与えてやることだと考えられます。ただし、逃げる方向によっては、さらに事態を悪くしてしまうこともあり、根から出せるか出せないかは、運によるでしょう。

意外に多いのが、ウキやヨリモドシが途中で引っかかっていること

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根に入った良型メジナを確認しに潜ってみると、ちょっとした隙間にカラダを入れて、背ビレの棘を1本そこに引っかけて、カラダをよじってメジナが踏ん張っているという姿を確認しました。

単純にサカナが岩の間に頭を突っ込んでいるだけなら解決できることも多いのですが、そう単純にはいきません。メジナが根に入る場合、足元の根に入ることが多く、ハリス、ミチイトが岩に沿って張り付いた状態になることが多いものです。岩の表面には、貝類やフジツボ、柔らかいサンゴのたぐい、その他の付着生物が多く、そこにウキやヨリモドシ、ガン玉などが引っかかる多重なケースも少なくありません。サオをあおったときに、根がかりのような強固さを感じた時は、まさにこのような事態になっていると考えたほうがよさそうです。

そのような場合は、無理に引けば、ハリスやミチイトは傷み、簡単に切れてしまいます。こんな場合も他力本願になるのですが、ミチイトを緩め、サカナに自由を与えて、うまく岩からサカナが離れる方向に逃げてくれれば、うまくこの事態から脱却できる可能性はあるでしょう。いずれにしても、とにかく無理に引っ張って根からサカナを出そうというのは、よほど仕掛け自体が太い糸で組み立てられている以外は、絶対に逆効果。相手の興奮を収めさせて、相手が行動に出た時に必ずチャンスはあります。このような事態に遭遇した時は、ぜひ試してみてください。

※釣魚水中生態学入門より移設