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1.今や春を告げるサカナの代名詞。堤防、磯、船、ルアーの超人気ターゲット!

四季のうつろいを大切にする日本民族。特に厳しい冬から、その寒さが緩んで春になる喜びをさまざまなところで見出しているようです。例えば、ボクの友人に岩手県出身の方がいるのですが、彼の故郷の雫石では、次のようなことでそこに住む人たちは春の到来を感じているようです。盛岡市の西側、ちょうど岩手県と秋田県との県境に近いところに、岩手山という2000メートル級の県最高峰の山があり、春の訪れとともに山頂付近の雪が融け、黒い山肌が露出します。その形がこちらに向かって飛来する鷲の姿に似ていて、この鷲に似た形が1週間ほど見られるそうです。もちろんさらに融けると鷲型は崩れてしまうのですが…。この鷲型の模様が見えると、春の到来を感じ、農作業の準備を始めるきっかけになるとか。このように感覚で春の到来を感じるという要素は日本には数多く存在するようです。

また日本全国的に見ても、例えば春告鳥はウグイス、春告草は梅の花、そして昔は、春告魚はニシンとされていました。ところが近年、ニシンの漁獲が激減し、新たに春告魚と呼ばれるのがメバルです。場所によっては、魚へんに春と書くサワラが春告魚とされる場合もありますが、メバルが春のサカナとして認識されるようになって来ました。メバルが釣れるようになると、いよいよ春の到来なのです。

メバルの生態が徐々に明らかに!

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メバルの幼魚は、ホンダワラなどの海藻の陰に隠れ、千とか万という尾数単位でのかなりの大きな群れを構成。基本的に海藻の陰に隠れて暮らしています。
成魚になると、十とか二十尾程度の数の群れを作ることもありますが、比較的規模の小さい群れを作ることが多くなります。単独でいても、カサゴのように縄張り意識はないようです。

メバルは、食卓においても、また釣りにおいても実にポピュラーなサカナ。沖の船釣りで釣れる、俗称沖メバルは、やや季節的な意味合いが違ったりもするのですが、磯や堤防、船の浅い水深で釣れるメバルは、まさに春のサカナと言えるでしょう。

メバルも、体色が赤茶色のもの、黒いもの、銀白色の要素の強いもの、金色のものなどがいて、ボクたち釣り人の間では、勝手に昔から金メバルとか、黒メバルとか、赤メバルなどと呼んでいました。ですが、2008年夏の魚類学学会論文で、クロメバル、アカメバル、シロメバルの3種に正式に分類されました。きちんとDNA鑑定して、メバルは前述の3種として存在することになったわけです。おそらく学会では大きなニュースになったのでしょうが、釣り人にしてみれば、「やはり俺たちの思った通り」ということになりますね。

さて、今まで正式な名称だったメバルも、いまや俗称のメバルということになってしまうわけですが、メバルの生態の話を少々することにしましょう。

メバルは、幼魚時代は、海藻の陰などで千とか万という単位で群れます。成魚になると、群れの規模は小さくなり、多く群れた場合で十や二十、時には百程度ということもありますが、基本的には数尾、または単独ということが多いようです。特に数メートルから10メートル程度の浅場に棲んでいるメバルは、それぞれが単独で海藻の陰に潜んでいることが多いですね。だからといって、カサゴに見られるような縄張りを形成するわけでもなく、仲間意識はもちろんのこと、反仲間意識も緩く、非常にアバウトな関係であることが多いです。

特に好きなエサとしては、アミなどの小さな甲殻類です。天然の海では、アミがまるで蚊柱のように変則的な球状で群れていることがあります。そんなアミの蚊柱をメバルが見つけると、そこに突入して何度も口を開けてパクつき、かなりの量のアミを捕食しているのが見られたりもします。また、1月下旬から2月一杯ぐらいの房総半島や神奈川の三浦半島などでは、カタクチイワシの活エサでメバルが釣れますから、この時期の食性は小魚ということになります。もちろんエビやカニも大好物と言えます。

メバルの眼が大きな理由

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メバルは、潮が止まると、まるっきり活性がうせて、海底に腹をつけて休んでいることも多いです。それでも潮が動き出すと、シャキーンとして、積極的に捕食行動に出ます。

メバルは目張という字が当てられています。これは、やはりこのサカナの名の由来である眼が大きく張り出しているという外的な特徴から来ています。たしかに、他のサカナに比べて、眼の大きさは大きいですね。でも、これは単に大きいだけではなく、彼らの生活から派生した進化的な要因と考えたほうがいいでしょう。

野生動物でも、フクロウやメガネザルなどの動物は、眼が大きな動物として知られています。フクロウは薄暗い中や月の光等で見つけた獲物を捕まえて食べます。また、メガネザルは樹上で生活し、ほとんど夜間に昆虫やトカゲなどの小型脊椎動物を捕食して生活しています。眼を大きくすることで、夜間の乏しい光を捉え、夜の闇に適応していった動物といえるでしょう。

なぜ眼が大きいかということは、カメラのレンズと同じことがいえます。ちょうど冬季オリンピックやサッカーのワールドカップの年なので、テレビで目にすることも多いと思いますが、スポーツカメラマンの多くは、まるで大砲のような大きなレンズを使って撮影しています。これは遠いところを大きく撮影するための望遠レンズなのですが、遠いものをはっきりと写すためには、競技場の不足しがちな光をより多く捉える必要があり、結果的には前ダマと呼ばれるレンズ最前面のレンズの径を大きくする必要があるのです。これは動物の眼と共通する点で、眼が大きな動物は、薄暗いところや夜間での生活に適していったものと言えるのです。

ということは、メバルも薄暗いところが好きなのか、ということになります。たしかに海に潜って観察すると、カジメという海藻の間に潜んでいたり、岩陰でカラダを立ててホバリング(本来はヘリコプターが空中のある位置に上昇も下降もせずに留まる意味)していたりします。やはり薄暗いところで捕食するなどの生活に適していることは確かなことでしょう。

ただ、だからといって明るいところにまったくいないのかというと、メバルの場合は、前述のフクロウやメガネザルとは違い、明るいところにもときには出て行ったりします。こうなると、メバルはこうであるという先入観による決め付けは通用しないということになりますね。

ひとつだけ確実に言えることは、メバルは視覚にかなりの重きを置いた生活をしているということでしょう。つまり、メバルを釣りたければ、ビジュアルにうったえる。エサの存在のアピールや誘いが有効であるということ。釣れないときは、エサを大きくしたり、タナを変えてみたり、積極的に仕掛けを動かしてみたり、ルアーやワームの色を変えるなど、基本に戻ったことが釣果を左右するということでしょう。

※釣魚水中生態学入門より移設