オニカサゴ FISH WORLD トップへ

2.まさに旬のサカナ!

この時期、どうしても鍋が恋しくなるものです。そんなとき、鍋の食材として最高に美味しいのがオニカサゴ。釣って楽しく、食べて美味しいという、まさに一石二鳥以上の満足度のあるターゲットです。

このオニカサゴ、ずいぶん前から種としては混乱期が続いたのですが、何年か前からきちんと整理されました。私たちが俗称オニカサゴと呼ぶサカナは、イズカサゴ(ニセフサカサゴと呼ばれていました)、フサカサゴ、コクチフサカサゴの3種。特にイズカサゴは最も大きくなり、いわゆる本物、本オニなどと呼ばれます。

この時期の釣り場は、水深100〜180メートルほど。砂地または砂礫底、岩礁帯、岩礁混じりの砂地または砂礫底など。さすがにこの水深は、普通のダイビングの装備ではまったく歯の立たないエリアで、さすがの私もこの水深での彼らの行動は見たことがありません。ですが、非常に珍しいケースで伊豆大島の水深35メートル付近の海底で、イズカサゴを発見したことがあります。

このときは、海底が砂地で、まるでスキーの中級者以上用のゲレンデのような斜度で深みに落ちる途中の箇所。おそらく産卵か、何か彼らの特別な行動のために深場から一時的に上がってきたものと考えられます。ちょうどそこにひとかかえほど岩があり、その陰にじっと潜んでいました。基本的に彼らの行動は、海底でじっと待つ、いわゆる待ち受け型です。もちろん必要なときには泳いで移動するのでしょうが、海底に自身を同化させ、自分の目の前にエサが泳いできたとき、または飛びつける射程距離内に入ったときに海底から飛び上がり、大きな口で飲み込むようにして、海底に舞い降りる。このような喰い方のはずです。(実際にこのときにイズカサゴの喰い方を見たわけではありませんが、オニカサゴと呼ばれる3種の1つであるコクチフサカサゴなどは水深15メートルほどの場所にもいて、このサカナを観察するとこのような喰い方をしていました)

正確なタナ取りと誘いが決め手

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伊豆大島の水深35メートル。非常にレアなパターンで出遭ったイズカサゴ。撮影しようと近づくと、猛毒の毒腺を持つ背ビレの棘を立てて威嚇してきました。

このように考えてみると、オニカサゴの釣り方の大きなポイントが見えてきます。

釣り船は、船頭がここぞと思う釣り場に船をとめ、潮の流れと風の方向とを読んで、効果的な流し方をしているはずです。船が流れれば、真下の海底は時々刻々と変化します。海底がまっ平らなはずもなく、タチを正確に取らなければ、あるときは仕掛けが海底をズルズルとはっていたり、ときには3メートルも5メートルも海底から上層をエサが漂うことになるかもしれません。海底をオモリと仕掛けがズルズルと引きずられていれば、オニカサゴは警戒してしまいますし、エサも見つけにくいはずです。また、とんでもなく上層をエサが漂っていても、はたしてエサを見つけられるか、仮に見つけられたとしても飛びつけないはずです。海底から1〜2メートルほどのところをエサがふわふわと漂っていれば、オニカサゴは本能的に飛びついてしまうはずです。よく、釣りの教本などに少なくとも1分に一度は正確にタチをとり、ハリスの長さ分を巻き上げ、適度に誘いをかけながらアタリを待つと書いてあるはずです。まずはこれがこのサカナの生態を考えても、基本となる釣り方でしょう。

もうひとつさらに付け加えるなら、潮の流れが速いときは、仕掛けも強い風に吹かれるこいのぼりの吹流しのようにたなびいています。このことをイメージすべきです。極端な話をすれば、天秤から先のミキイトとハリスとが真横になってたなびいている。(実際にはここまでになることはめったにないと思いますが、かなり大きくたなびいているケースは多いと思います)定石どおり仕掛けの長さ分を海底から巻き上げてしまうと、エサがかなり上の層をたなびくこととなり、結果的に海底に居座るオニカサゴの捕食行動につながりにくいケースをつくりだしてしまうことが考えられます。このようなときは、定石を少し拡大解釈し、仕掛けの長さの半分程度を海底から巻き上げるようにして待つといいはずですね。潮が速いかどうかはご自身の判断に頼るしかありませんが、ミチイトが斜めになることや、ビビビーンというミチイトの振動の強さ(潮の流れによって弦楽器のようにミチイトが振動する)などで潮の速さを判断し、臨機応変な対応をすると好結果につながるはずです。

猛毒のヒレ棘には厳重注意!

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混乱しやすいのだが、南日本の浅いところに棲む正式名称オニカサゴというサカナ。全長は40センチほどになり、このサカナも背ビレの棘に猛毒を持っています。
オニカサゴの俗称で呼ばれる3種のうちのひとつコクチフサカサゴ。最大でも25センチほどの小型、浅いところにも棲んでいます。このサカナも猛毒の持ち主。

オニカサゴは、背ビレの棘に毒蛇に匹敵するほどの猛毒を持っています。何のために彼らがこれほどまでの猛毒で武装しているのかはわかりません。ただ、伊豆大島の海底でイズカサゴを発見し、水中カメラを向けて近づいたときは、明らかに背ビレや胸ビレを広げ、こちらを威嚇しました。カサゴの仲間などは、大きな捕食魚に喰われたとき、ヒレというヒレを全開し、骨のように硬い棘を立てて飲み込まれないように抵抗する防御行動をとります。おそらくオニカサゴも同様だと考えられます。そこにさらに猛毒が必要なのかどうかは疑問で、はたしてオニカサゴをくわえた大型魚にこの毒がどのように作用するのかは謎です。

ただ少なくとも私たちにはとんでもない害を与えます。オニカサゴを持つときは、基本は磯でアイゴをつかむような頑丈なバリバサミ(フィッシュホルダー)などを使い、イシダイ釣りなどで使うガンガゼバサミ(トゲチョキ)を使って背ビレの棘を切り落としてしまうと安全です。尻ビレにも大きな棘があるので、ここも切っておくといいでしょう。ただし切る際は風向きを考慮し、また顔を必要以上にサカナに近づけないことです。毒棘を切り落とす際に毒液が飛散することがあり、これが目に入ると失明するという話もあります。切る際は船べりから船外に出した低い位置で切るか、水を入れたバケツの中で、いずれの場合も前述のようにしっかりとサカナをはさんで行なうといいでしょう。

もし万が一刺されてしまった場合、応急処置として、傷口を海水もしくは真水で洗い流し、50度ほどのお湯を患部にかけるといいです。お湯をかけたら血の巡りが良くなって逆効果と思われがちですが、これはオニカサゴの毒が蛋白毒であり、熱によって毒を固めてカラダに拡散しないようにするものです。毒そのものに致死力までは少なく、よほどカラダが弱った人でない限り大事に至ることはないようですが、とにかくいまだかつて経験したことのないような激痛であることは免れません。この応急処置で、痛みは半分ぐらいにはなるはずですが、必ず医師の診察を受けるべきです。しかもそれは地元の病院の方がいいと思います。都会の病院よりもあきらかに対処例も多いはずですから。。くれぐれもご注意を。

※釣魚水中生態学入門より移設