北海道南部以南から九州南部に分布という日本を代表する磯魚・カサゴ。大きな頭部が笠をかぶって見えることから、笠子と呼ばれるようになったという話も聞く。堤防や磯、船から積極的に狙われている人気のターゲット。 ガシラ、アラカブ、ホゴ、ガガナ、ガガニ、ガンガラ、シャッコなどの地方名があり、地方名の多さこそが日本の各地に根付いたサカナであることの証なのである。今回は、このカサゴについてである。 |
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カサゴの性格について、まず一番に挙げられるのが好奇心の強さであろう。
なにか不思議なことや面白そうなことに対しては、カラダが先に行動してしまう。面白いこととは、サカナにとってはキラリと光ったり、不思議な動きということである。
ボクが一番興味深いと思ったのは、もう10年近く前に行った釣りバリの沈降実験。ハリそのものが、どのように沈むかを水中で観察していたときのことだ。
たとえばチヌバリのようにひねりの入ったハリは、素バリ状態ではハリが真横を向いて、くるくると風車のように回転しながら沈む。ちょうどこの実験を金バリで行っていたのだが、実験を進めていると辺りにいたカサゴがボクの周りに大集結。きらきらと金色に輝きながら、しかもくるくると回りながら沈むハリに興味を示したからなのだ。ハリを沈める。ハリはくるくる回りながら沈む。すると、いつでも飛びつく用意はあるぞ(!)といわんばかりに、すべてのカサゴがそのハリの沈みを凝視しているのだ。
ボクは、ひそかにこれはカサゴが素バリに飛びついてくるのではないかと思っていた。ところが、事態は思わぬ方向に進展した。5〜6回と同じ動きしかしないものに対して、ほとんどのカサゴたちがこれは喰い物ではない、という判断をくだして自分のテリトリーに戻りはじめてしまったのだ。なかにはしつこいのが2尾ほどいたが、彼らも沈んでいる最中は興味深いアクションをしていた釣りバリが、海底に落ちたとたんにつまらなくなるのを知って、最後にはブイッとそっぽを向いて戻ってしまった。
この行動から、カサゴは実に好奇心が旺盛であるが、意外と食い物であるかないかの判断を冷静に、しかもすばやく行っているといえるだろう。
つまり、たとえばソフトルアーなどを使った釣りの場合、まず大切なのがアクションの派手さであろう。このことでカサゴの興味をひくことが先決。次に大切なのが変化をもたせることだろう。アクションの変化も必要だし、何度も同じルアーを用いずに色や形、違うアクションをするものなどを頻繁に換えて、カサゴにイミテーションのエサであることを見切られないようにすべきであるということが言えそうである。
魚類図鑑などでは、カサゴは夜行性のサカナと記述されている場合が多い。たしかに夜釣りでは釣れてくることもあり、夜間に行動していることは間違いない。だが、ボクは今まで何度も夜の海に潜ったことがあるが、ボクの観察ではカサゴは夜眠っていることのほうが多い。
カサゴは日中、岩の上や、岩礁近くの砂地の海底に鎮座して、エサの到来を待つ。しかし、無骨な怖面の顔をしたサカナでも、さすがにボクらが近づくと岩の間などに逃げこむ。夜間は、岩の間で寝ているようだが、何尾かは岩の上で鎮座しているものもいる。だが、その鎮座は大概うたたねか熟睡していることが多く、水中ライトで思いっきり照らしても、指先で触れても逃げない。なんどもやっているうちに目が覚めて、あわてて逃げ出すというケースがほとんどである。
いつぞやは寝ぼけた奴もいて、あわてて逃げようとした際に自分のあごを岩角に思いっきりぶつけてふらふらしながら岩陰に入っていたドジなものもいたぐらいである。
つまり、このことは、カサゴは夜間にエサをとったりする行動もするが、実際には本当の意味の夜行性のサカナとは言えないようである。
カサゴの捕食行動の面白い面はもうひとつある。海底でオキアミを撒いてみた。すると、どこからともなくカサゴたちが集まり、周囲でさかんな捕食行動が始まった。
よく観察してみると、カサゴはあれほどまでに大きな口をしていながら、いきなりはエサを飲み込まない。ボクはてっきり、あの大きな口でガバッと吸い込むのかと思っていたのだが、順序としては口先で必ずくわえるのである。それからおもむろに飲み込む。おそらくオキアミそのものが死んだエサであり、生きたエサの場合とは喰い方が違うのではないかと考えられる。オキアミを口先でくわえることで、これが喰い物かどうかを判断し、それから飲み込むという慎重さもあるのである。
この間も三浦でクロダイ釣りをした際に、何尾かの良型カサゴを釣った。エサはオキアミだったのだが、アタリがあり、ウキがゆっくりと沈む。クロダイとうたがってウキがスーッと消えてからあわせてやると、ちょうど口にかかっていたり、のどにかかっていたりした。オキアミエサの場合は、一呼吸遅らせて合わせるというタイミングがよろしいようです。
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