「カサゴ」は、船釣り・投げ釣り・磯釣り・ルアーフィッシングと幅広く狙われる釣りのターゲット。アタリも明確で、ビギナーにも釣りやすい。また、食しても刺身、焼魚、煮魚、から揚げ、鍋ととても美味しくいただけるサカナだ。今回は、そんな人気者の意外な面をクローズアップしてみようと思う。
サカナの中にも自己主張が強く、縄張り意識の強いものがいる。最も有名なのは川に棲むアユだろう。アユは自分が食べるコケのはえた岩の周囲1〜2mを縄張りとし、他のアユが自分のテリトリー内に入ってくると、体当たり攻撃をして、結果的にそのアユを追い出してしまう。その行動を逆手にとった釣り方がアユの友釣りである。
アユと同じような縄張り意識がカサゴにも見られる。カサゴの場合、「エサ場なのか、ねぐらなのか、お気に入りの場所」という要素なのかはわからないが、自分なりのテリトリーを築く。範囲的には半径2〜3mぐらいのものである。 他のカサゴが入ってくると、相手が明らかに自分より大きい場合は別として、ほぼ同じぐらいだったり、相手の方が小さい場合は体当たり以上に凄い闘いを繰り広げる。最初は相手の前に出て、自分の方が大きいようにエラを張ってみせる。それでも相手がひるまない場合は、相手の口先あたりに噛み付く。 まるでキスでもしているように見えてしまうのだが、実際はそんなロマンチックな話と違う。さらにエスカレートしてくると、口を大きくあけて、相手の頭をのみこむようにかみつくのだ。噛み付かれた相手は闘いに負けたことを認めて逃げることになる。 こういった闘いで、元からいた奴が勝てばいいのだが、必ずしもそうなるとは限らない。侵入してきた相手にその場所を乗っ取られることもしばしばなのだ。カサゴの世界もなかなか厳しいものである。 もう一つ踏み込んで考えれば、「カサゴの友釣りができるのではないか??」とも考えられる。だが、実際に「おとりカサゴ」を泳がせれば、必ず根に入ってしまい、とてもまともな釣りにはならないだろう。 |
カサゴの場合、基本はモスグリーンのような色に、複雑な形の暗色の模様が入り、そこに暗褐色の斑が組み込まれたような体色である。ところが、妙に赤みの強い体色のものや、黒っぽいのもいたりする。 これは、どうも棲んでいる環境によるところが大きいようだ。カサゴは、岩礁帯、ゴロタ石場、砂地まじりの岩場などを好んで棲み、水深もそれこそ2〜3mの超浅場から、水深100m近いところまで棲んでいる。深いところに棲むのは、比較的赤味の濃い体色のものが多く、砂地まじりの岩礁帯のものはモスグリーン系の浅い色、完全に岩礁帯に棲むものはモスグリーン系の濃いものが多い。 これはおそらく周囲の環境になじむという要素が強いのだろう。また深場のものが赤味が強い傾向にあるのは、次のような理由が考えられる。 太陽光のスペクトルがプリズムを使った理科の実験に示されるように虹色の7色に分けられる。だが、中でも赤い色は海の中で色が最も吸収されやすく、海の中では水深が深くなればなるほど黒く見える。深くなると太陽の光も届かなくなり、薄暗い世界となる。そうなると、闇にまぎれてしまい、他のサカナから見つけられにくく、自らの安全に役立つという要素と、捕食する際にも相手に気づかれにくく、捕食の成功率も高いのかもしれない。 ただ、そうすると黒色が最も有利となるわけで、なぜ体色を黒にしないのかという考え方もできる。たが、仮に白い砂地の海底では、薄暗い中でも黒色は見つかりやすく、そういった要素も加味されているのかもしれない。 もしかすると、種の保存という意味合いからも体色を深いところでは赤く、砂地では薄いモスグリーン系にするという要素で進化させてきたことなのかもしれない。そう考えると、カサゴの親戚筋にあたるオニカサゴも赤味の強い体色であり、アコウなどの深海系のサカナになると赤味がさらに強くなる傾向にあるのもある意味納得できる要素ではないだろうか。 |
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