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1.好奇心をあおって喰わせろ!

海水温の最も下がるこの時期、このときを待ってましたとばかりに出てくるのがカレイ。特に東京湾ではカレイの仲間の中でもマコガレイが注目されます。

マコガレイは、水深100メートル以浅の砂地または砂泥底を好んで棲んでいます。東京湾では2月から4月の中旬ぐらいまで、比較的浅場でマコガレイが釣れます。ちょうどこの時期が産卵期にあたるため、浅場に集まるものと考えられています。

また、砂地や砂泥底には波や潮流でつくられた砂紋やヨブと呼ばれるクレーターのような窪みができます。面白いことにそのヨブには、カレイが多く集まっていたりします。潮に乗ったエサがその辺りにたまりやすいのか、それとも他にエサの捕食に有利ななんらかの理由があるものと考えられます。

カレイの仲間は眼が悪い?

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マコガレイは、冬から春先にかけての東京湾のターゲットとして人気も高い。数が釣れる釣りではありませんが、相手との駆け引きの楽しめる奥深い釣りです。
カレイの仲間は、背ビレと腹ビレでカラダを持ち上げ、このままの姿勢で這うように動いたり、時には飛び出すかのようにこの態勢からダッシュをかけたりします。

海に潜ってみると、カレイの仲間は海底でじっとしていることもありますが、たいてい海底ぎりぎりをそれこそ滑るように泳いで動き回ります。常に泳ぎ続けると言うのではなく、落ち着きなくちょこまかと動き回ると言う感じです。おそらく何か食べるものを積極的に探す行動だと思われます。この辺が、同じ体形をしたヒラメとは違うところです。ヒラメは捕食に関しては完全に待ちうけ型で、海底に身を潜めて、近くにエサが来たときに飛び掛るという捕食方法です。カレイの場合は、ひとところでじっとしているかと思うと、眼をくるくると回し、自分の周囲の状況を探ります。何かがうごめいていたり、他のサカナが何かを食べようとして暴れて海底を濁らせてしまうようなことには目ざとく反応します。なにかおこぼれをあずかろうとか、場合によっては相手からうばってしまおうという、ややさもしい根性の持ち主のようです。まぁカレイの面目を保つ言い方をすれば、好奇心が旺盛で、なにか自分の眼で確かめないと気がすまないという感じでしょうか。

また、彼らの行動を観察していると、どうも眼があまりよくないような行動をとります。例えば、海底でイソメがうごめいているのを視覚に捕えると、まずその付近に急行するのは素早く行動します。ただ、位置の把握が正確ではなく、だいたいあのあたりという暫定的な判断にもとづいて行動しているように見えます。エサに近づいて、さらにそれを眼で凝視し、エサと判断してから捕食します。好奇心が強いわりには、ある意味慎重な部分もあるようです。ただこのようなやり方はエサを捕食するまでに間があり、へたをすると他のサカナにエサを奪われる隙が多すぎるような感じもします。ただ、一度だけ面白い行動を見たのですが、エサの上にわざと乗って、そこからゆっくりと後ずさりしてエサを捕食したケースもありました。他のサカナに取られないようにエサを隠し、それからゆっくりと捕食するという知恵(?)のある行動なのかもしれません。

仕掛けを動かしてエサをカレイに視認させよう!

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カレイの仲間は、視力的にはあまり優れていないのかもしれませんが、眼をくるくると動かして周囲の状況を探ります。特に動くものに対しては目ざとく反応します。

前述のようにカレイはあまり眼がよくなく、しかも喰うことに関してはある意味慎重です。そんなカレイに喰わせようとするならどのような方法がいいのでしょう?

昔の釣りの本を見ると、カレイ釣りには円盤型のオモリを使い、サオで小突いて海底に砂煙をあげさせるといいと書いてあります。これはカレイの狙い方として的を得ていると思えます。ただ最近は円盤型のオモリはほとんどみられないので、分銅型などで代用するといいと思います。

またもうひとつのヒントが仙台周辺のマガレイ釣りにあります。この釣り方の仕掛けには、ええっ?と思えるほどいろいろなものがデコレーションが施されていたりします。

これは、いかに海底のマガレイに仕掛けを視覚的にアピールさせて、エサを相手に見つけさせるかということに通じます。ボクは仙台でマガレイを釣ってから、この方法は東京湾のマコガレイにも通用すると考えました。派手な仕掛けにして、ショッキングピンク色した分銅オモリで海底を小突いて狙うと、かなり確率よくマコガレイが釣れた経験もあります。ショッキングピンク色のオモリは、たしかに陸上では派手な色に見えますが、少なくとも水深30メートルの海底では、光の色の中では赤色が減衰するため、ピンクは色がなくなってグレーのような色に見えます。カレイにもグレー色に見えているかまではわかりませんが、影のような物体が動いて砂煙を上げていることに対しては好奇心を示すものと考えられます。

また、もうひとつ加えるなら、カレイはアタリがあってもすぐにアワセるのではなく、少し待ってエサを飲み込ませてからアワセた方がいいです。水中で観察しても、エサに喰いついて口の中に一部は入れるのですが、そこから飲み込むまでにはけっこう時間がかかります。喰い方が「どんくさい」のか、警戒心の強さのあらわれのどちらなのかはわかりません。が、アタリと同時にアワセてしまうと、エサの先だけ取られて、ハリはかからないことが多いです。だからアタリがあったら、軽く送り込んでしっかりと喰わせることが大切に思えます。カレイ釣りのベテランになると、アタリがあって送り込み、その後のもたれを感知して「ききあわせ」で確実にハリがかりさせていきます。この辺もカレイ釣りの奥深さが垣間見れるところだと思います。

※釣魚水中生態学入門より移設