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1.カリフォルニアで見たアジの実態!

アジは、ボクたちの日常生活においても、もっともポピュラーなサカナです。釣りにおいても人気ターゲットであることは間違いないのですが、日本では潜っていてもなかなか大きな群れに遭遇しません。おそらく、昔はもっとたくさんいたのでしょうが、漁業でも盛んに漁獲されて数は減り、簡単には潜れないような場所にいるからだと思います。

ところが、つい先日訪れたカリフォルニアの海にはすごい数がいました。当たり前の話ですが、世界にはまだまだいるところにはいるようです。今回はそこで見た話をしたいと思います。

アジの群れは広がったりかたまったりする

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カリフォルニアで見つけたアジの群れは、アシカやアザラシといった外敵から身を守ろうと、海藻の合間に隠れていました。しかし、そんなことでアシカやアザラシから隠れられるわけありません。
姿は見えませんが、アザラシかアシカがすぐ近くにいたのでしょう。アジの群れは緊張し、突然その中央が割れました。おそらくこの背後にアザラシかアシカがいたのだと思います。

アジの群れで、今まで一番大きかったのは、メキシコで見た群れです。このときは、カツオに狙われていたようで、群れは巨大な球状となり、その中でアジたちは全速力で同じ方向を泳いでいるという状態でした。アジで構成された球は、直径8メートルほど。おそらく億単位以上の尾数の群れだったのでしょう。

この群れは、カツオの突入で真っ二つに球が割れ、泳ぐ行き先を失ったアジは、パニック状態で右往左往し、そこをカツオに狙われていました。

サカナがなぜ群れるのかはいまだに謎の部分も多いのです。例えば群れることで捕食魚よりも大きなサカナとしてみせるなどの説がありますが、それで捕食魚がビビッたり逃げたりする姿は見たことがありません。ボクが観察している限りでは、自分が生き残ろうとするための行動だと思います。捕食魚に狙われた時に、1尾でフラフラ泳いでいれば、一発で喰われてしまいます。ですが、群れの中に入り込んでいれば、仮に他の仲間が喰われたとしても、自分は生き残れる確率は高くなります。サカナが群れる理由は、この生き残り確率論が理由だと思います。

さて、今回、カリフォルニアで見たアジの群れはどうだったのでしょう? カリフォルニアでは、アジの群れは海藻の合間にかくれていました。ジャイアントケルプという、巨大なコンブが生えているのですが、その合間に隠れるようにしていました。なぜ隠れているかというと、アザラシやアシカから身を守るためのようです。

ですが、アザラシやアシカはとても賢く、そういったところにアジの群れが潜んでいることを知っています。ふらりと偵察に来て、群れがいれば襲って捕食します。アシカやアザラシは、動物園などで見ていると動きが緩慢に見えたりもしますが、海の中では魚雷ですね。何かが矢のように群れに突っ込んだと思うと、もうサカナの何尾かが捕食されています。

アジの群れは、外敵がいなくなれば大きく広がったり、狙われてギュッとかたまったり、群れの収縮を繰り返しながら移動していました。まさに弱肉強食の世界に彼らは生きているのです。

サバと混在していた

それこそ、海に潜っていると、サバの群れというのは日本ではなかなか見られません。ところが、カリフォルニアでは簡単に見られました。ただ面白かったのは、サバの単独の群れというのはなく、アジの群れに混じっていたことです。

このとき思い出したのが、アジ釣りでアジに混じってサバがよく掛かることです。このとき、ひとつ面白いことに気づきました。アジの群れに混じっているサバは、群れの下側にはほとんどいかないことです。サバはサバでかたまっていて、アジの群れの上側の層にかたまって混じっていました。

これを知ったからといって、アジ釣りの際にサバが避けられるかというと難しいのですが、わずかながらもアジとサバとでは泳ぐ層が違うということは、釣り分けるなんらかの方法はあるのかもしれません。

例えば、群れが移動してくる前に仕掛けを沈めてタナに到着させる。そうすれば、アジの方が先にエサを見つけて、掛かりやすくなるかもしれません。逆に、仕掛けを後から入れると、サバにエサが見つかりやすく、サバばかりということになることも多いかもしれません。この辺は、まだまだ調べることは多そうです。

なぜかイワシの群れとは交わらない

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左奥にシルエットとして見える魚影はイワシの群れ。アシカやアザラシに追われて、手前のアジの群れと一時的に交わることはあっても、一緒に行動することはなかった。

さらにもうひとつ面白いことを確認しました。このカリフォルニアにはイワシも群れでいたのです。

マイワシなのかは確認できなかったのですが、カタクチイワシではなく、ウルメイワシでもありませんでした。体側にマイワシのように班があったので、マイワシなのか、その近縁種でしょう。

そのイワシの群れもそれなりに大きく、この界隈を回遊していました。アジの群れよりも上の層を泳いでいて、ときおり表層を泳ぎます。やはりアシカやアザラシに追われると群れはまとまりながら移動します。そのときに何度もアジの群れとぶつかるのですが、一時的に群れ同士が交わっても、すぐにまったく別の群れとして油と水の関係のように分離してしまいます。つまり、イワシとアジは、群れとして一緒に行動することはないといえそうですね。

しかし考えてみると不思議なもので、アジにしろ、サバにしろ、イワシにしろ、日本では最もポピュラーな三大魚種といえるサカナなのに、生態の細部についてはまったくわかっていないのが実情です。

生態が解明されないから、釣りも謎の部分が多くて面白いと言えるのかもしれません。海に潜ってそれらが解明されてしまうと、釣りはつまらなくなる。いえいえそんなことは絶対にありません。どんなに細かく生態が解明されたとしても、釣りがそんなことでつまらなくなるほど、奥行きの狭いものではないことはみなさんもご存知だと思います。さらに高度に面白くなる。結論的には、その辺に落ち着くはずです。

※釣魚水中生態学入門より移設