本流ヤマメ、考察。
DAIWA
ダイワフィールドテスター 白滝 治朗 × ダイワフィールドスタッフ 狩野 昌彦
新たな価値観とは?

本流釣りはリールを使わず竿一本で、より広大なフィールド、もっと大きな魚を求めてその守備範囲を広げ、ついには最大級の鮭科魚類キングサーモンを仕留めるにまで発展を続けた。

そんな中、本流釣りの原点ともいえる本流ヤマメ(アマゴ)に新たな価値観が見出されている。本流釣り発祥ともいえる中部と本流釣りの本場・北関東を、それぞれ代表する渓流師、白滝治郎氏と狩野昌彦氏が本流ヤマメ(アマゴ)の魅力とアプローチの変化、そしてそれを支えるタックルの進化について語り合った。

本流ヤマメの現在を考える
白滝 狩野さん、最近の本流釣りはサクラマスとかシロザケとか、白石さん(白石勝彦・ダイワフィールドテスター)は海外でキングサーモン(鱒乃助)とかシルバーサーモン(銀鮭)なんかまで本流竿で仕留めていますが、最近はどうですか?私はどうしても地元中部の長良川界隈での本流アマゴやサツキマスになってしまうんですが・・・
狩野 そうですね。私もシーズンには年に数回サクラマスとか鮭を釣りに遠征していますが、サラリーマンですので普段は地元の利根川をメインにシーズンと水況を見ながら北関東の河川を中心に釣行しています。
白滝 そうするとターゲットはヤマメになりますね?
狩野 そうですね。本流の居着き系のヤマメとノボリと呼ばれる遡上系のヤマメがメインでサイズ的には30〜50cm位です。多少エリアと狙い方は変わりますが、3月の解禁から秋の禁漁まで長いシーズン楽しめるのが魅力です。
白滝 僕は夏は鮎釣りになってしまうけど(笑)。鮎解禁までは休みの日は渓流域でのアマゴ、本流シーズンになるとそれこそ毎日出勤前に本流アマゴ、サツキ狙いで川に浸かります。
それでも遡上魚のサツキとなると本当に良い時期って早く来てくれる年で1ヶ月、ゆっくりのときは2週間(笑)、下手したら10日間ぐらいしかないんです。
狩野 うらやましい環境ですね、利根川のノボリもそうです。熱心な方はそれこそ毎朝通われますが、やはり多くの本流師のターゲットとしては遡上系も含めた本流ヤマメということになると思います。
白滝 数もずっと多いしね。年に1匹釣れるか釣れないかよりもやっぱり適度に釣れないと楽しくない(笑)。そういう意味ではもっと本流のヤマメ(アマゴ)釣りに注目が集まっても良いと思うんです。そうすると道具もパワーを最優先した遡上魚系の本流竿の軟らかいものではなく、それなりの竿がほしくなりますよね。ノボリといってもヤマメはヤマメな訳ですよね。
その場合、何が一番重要なんですかね?もうかつて言われたパワーはね、十分な訳だから・・・。
狩野 きっちりと魚の居る場所を把握して筋にきっちりエサを流し込むことです。
「感度のSMT」が釣りを変える
白滝 そういった意味では今回見せていただいた新しい【スーパーメタルトップ】が搭載された「遡」は本当にビックリしました。そうか、そこに来たか〜って感じです。私は鮎釣りをするのでそれこそビビっときました(笑)。
正直、今までは渓流では“感度”って二の次っていうか、度外視していましたね。ちゃんと振り込めるか、ちゃんと取り込めるか?これだけしか頭に無かったわけですから。
でもこれに感度が加わったら、これは凄いと思います。狩野さんが本流釣りにおいて重要な感度って言ってるのはどうなんですか?魚の気配なのか?それとも確実に底、石をたたいたりする、流しのほうなのか?どっちもなのかもしれないですけど・・・
「感度」の重要性とは、魚の気配を察知できるかどうか。
狩野 流しに関してはひと流しでもう川底の状態がある程度分かっちゃうんですよ。見た目とかである程度の筋や石の状態は今まででもわかるんですけど、【スーパーメタルトップ】だと丁寧に流していくとその筋にある底石の並びの様子がわかります。
これだけでも相当優位なんですが、「遡」のメタルトップの機能評価をしていく中で何回か「居る」、「来る」っていうのが分かった時があったんです。前当たりみたいのを感じたんです。「来る!」っていう感じの。目印には何も出てないんですけど。普通に流れているように思えたんですけど、「あれ?」と思った時がありました。それからはもう、真剣に“感度”の重要性について考えました。
白滝 チューブラー穂先では感じれられない感覚?
狩野 取れないんだと思いますね。スーパーメタルじゃないと。
白滝 それは鮎の友釣りでも同じですよ。オトリ鮎がね、こう針引っ張って泳ぐじゃないですか、掛け針が石を拾う感覚が良く分かるんですよ。あれは今までは全然目印にも出ない、でもここまでならばチューブラーでも「競技」とか「スペシャル」だと感じられる。でもそこに【スーパーメタルトップ】が加わると、オトリ鮎が変な動きをした時とか、野鮎が居て立ち止ったとか、急にハっと向きを変えるのが分かるんです。もちろん、目印にでるほど追われる時もあるんですけど、出ないものも相当感じるんです。そうするとオトリをそこに止めたり、もう一度泳がせたりして掛けられる。
鮎にしろヤマメにしろ今まで感じれなかった、「居る」っていう気配を感じられれば、粘れるし、逆にいえば居ないって確信できればそこは見切れるわけですよね。やっぱり粘るか見切るかっていうのは数少ない魚になるほど非常に重要な部分で、それだけで釣り上げるチャンスが増えますね。
狩野 そこが一番だと思います。圧倒的に水中の情報量が増えるんです。今まで取れなかった情報が取れるっていうのは最大の魅力です。
白滝 喰った時のアタリとかはどうですか?狩野さんは糸はやはりフロロがメイン?
狩野 そうです。ほとんどフロロの太いところですね。でかいオモリ付けて、ドリフトで思いっきりドラグ掛けて・・・それでも魚がハリを噛んだのが分かります。流しきりでわざと止めていて、ミミズが『ガチッ』ってかじられるのが分かります。そのくらい感度がいい。必ずしも、糸が直線で張っていなくても感度は出ます。
白滝 おそらく大物釣りで流芯に対して仕掛けがまっすぐ入っているわけない、必ずフケている。フケているけれど情報がくる。
狩野 それを上手く生かして使ってもらえばまた本流釣りはちょっと変わるかなと思うんですよ。
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同じスーパーメタルトップでも、求められる要素によって異なるセッティングがされている。
白滝 やっぱりその良さをみんなにどれだけ分かってもらえるか。感度が良いと新しい感覚の釣りを提案できますよね。
私なんかは鮎竿でもう【スーパーメタルトップ】の魅力が分かっているから良いけど最初はどんな感じだったんですか?鮎竿に搭載されているのとは同じ素材でもだいぶ違うみたいだけど・・・
狩野 実は最初から専用設計じゃなくて、鮎竿用のトップを前の「遡III P-2」につけるところから始まったんです。小さいBくらいのオモリを使ってる分には普通なんですけど、流れ方も・・・当たりの出方も・・・。ところが4B5Bと大きなオモリを付けだすと穂先がお辞儀をするっていうか、ぴょんぴょん跳ねる、しかも最初は良いと思っていた竿先のしなやかさが邪魔をして大石の巻き込みに吸い込まれてしまって根掛かり連発です(苦笑)。それで食い込みとか余計な欲を出さないで大きいオモリが普通に使えて、最大のメリットである感度を突き詰める方向でテストしました。
白滝 で、あの鮎竿とはまったく異なった発想の感度重視のセッティングで、メタルの露出部分の短いようなトップになったと・・・。
狩野 最終的には・・・。あそこまで詰まったんです。もっとチューブラーみたいにということで太い径も試したんですけど、いろいろ試していくうちに突然感度が良いのに当たって、それがこの穂先です。
今回の「遡」にはP-3とP-5があって、この2本はメタル部分の径やテーパーだけでなく、巻かれているカーボン素材のパターンも異なるので、本流ヤマメを視野に入れたP-3と、より大きく硬い口を貫くためのP-5という風にセッティングが違うんです。
白滝 【スーパーメタルトップ】も用途によって変わってくる時代になってきたんですね。楽しみな反面、迷うようになってしまいましたね〜。すごい!あれを見た時には、ホントにビックリした。
狩野 あとは、重さがクリア出来れば最高ですね。
スーパーメタルトップ
水中の気配すら察知する次世代穂先

軽量金属として知られるチタン素材を構成した超弾性チタン合金素材に、カーボンとグラスのコンポジットシートを巻きつけテーパーをつけたものが、スーパーメタルトップ。柔軟ながらもカーボンやグラスより強度があるため、従来より細径や極先調子の穂先を作る事が可能。また、超弾性金属素材特有の非常に強い振動特性により、アタリを手元まで響かせる高い伝達性を実現。金属ならではの強度を持ちながらもしなやかで、視覚にも感覚にもしっかりとアタリを伝えてくれる新世代穂先。
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穂先素材の特徴
魚のサイズと竿の強さのバランスが重要。
白滝 やっぱり最初は違和感ありました?私なんかは鮎竿で慣れてるから「こんなもんかな?」くらいの感じだけど・・・(笑)
狩野 一番最初に預かった時には正直穂先の重さにすごく違和感を感じました。わずかあの先だけなんですけど、振った感じが頭が遅れてくる感じ。それでも鮎竿で開発された【Vコブシ】化することでだいぶ改善されています。
白滝 でもそれにも増して感度をとられたってことですよね?
狩野 そうですね。
白滝 後はやっぱり、最初は違和感があるけれど、慣れるとそうでもなくなるってことですか?
狩野 ちょっと使えばすぐ慣れる部分だと・・・。初めて【スーパーメタルトップ】を搭載した竿を手にされる本流師の方が今までの感覚でお店とかで竿を伸ばすと先が少し重くて軟らかい感じがすると思います。「始めから同じですよ」とスーパーメタルの竿って今の段階では言えない。
白滝 鮎竿も最初はそうでした。グランドスリムなんか最初は相当好みが分かれましたもん。ただ、使うとそれを上回るメリットが出てくる。そこが、面白いところ。
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狩野 今回も実はチューブラーの試作も作ってもらってテストしたんです。穂先を入れ替えながら同じポイントを同じ仕掛けで流して・・・でもあれだけ違うと、チューブラー入れる意味が見つからなかった。それを確信できるくらい全然違ったんです。
白滝 あと鮎竿と違って竿先の重さでしならせやすいのか、振り込みも楽になったような感じがしますね。
あと「遡」の曲がりを先程見せて頂いて、胴までギューンって曲がるじゃないですか。実際のパワーっていうのはどうなんですか?
狩野 伸ばして振った時にメタルトップの重さで柔らかく感じるかもしれませんが、曲げてくるとこの素材本来の強さみたいなのが出てくる感じでやっぱりP-3はP-3の強さが十分にあります。それには【Xトルク】の影響も大きいと思います。
白滝 そうか、それもありましたね。鮎竿・渓流竿ってとこで行くと、【V-ジョイント】があって、本流大物竿だと【Vコブシ】があって、【Xトルク】と来て、ついに【スーパーメタルトップ】が搭載された。
狩野 【Xトルク】は鮎竿ではどうでしたか?
白滝 パワーロッドではものすごく効果的です。節のネジレをおさえながら上手く手元までパワーを伝えてくれる。それによって瀬釣りなんかだと例えば引いている時のオトリ鮎のコントロール、あるいは手元に飛ばす時のコントロール、そのブレがなくなった。それを鮎ではすごい感じていたんです。
実は今回関東の笹尾テスターのご意見も頂きながら一緒に「長さのメリット」を活かした本流ヤマメ(アマゴ)専用竿として「琥珀本流ハイパードリフト スーパーヤマメ95MR」という竿の開発に携わらせていただいたんですが、そこで改めて渓流竿における【Xトルク】の優位性を感じました。
今回はどの部位に【Xトルク】が入ると有効かの検証も兼ねていろいろな組み合わせで使わせていただいたんですが、鮎竿の時とはまた違いますね。
【Xトルク】と【Vコブシ】の組み合わせで特に大物を掛けて獲るという部分でのハッキリとした差を感じました。
画像 Xトルク
狩野 逆に私はその竿を見せていただいて、利根川でも水温が上がって遡上した魚を釣るのに丁度よいな〜と思いました。
鬼怒川とかでも欲しいところだし、さすが本流ヤマメを良く知りつくした笹尾テスターだなって。
白滝 それは、川のヤマメの大きいヤツのこと?
狩野 そうですね。だから、「遡」ほどのパワーはいらないんですよ。でも川は広いし、石もデカイし、ある程度のパワーは必要なんですよ。
今までは下流部が終わると、上流をパワーゼロで攻めているんですが、渇水ならば丁度良いけど、水がちょっと高いとパワーゼロだと掛けてからが大変なんです。
白滝 でもヤマメはヤマメだから繊細なアプローチじゃないと・・・。
狩野 喰ってこない(笑)
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白滝 長良川の場合は逆で、3月いっぱいくらいは「アマゴ抜」で十分なんですが、4月に入ってサツキが見えだすと時には水深4m近い大場所を狙うんですが、今年は竿を独り占めだったのでお蔭様でサツキとしては大きい41cmと44cmを2匹釣らせていただきました(笑)。
その中で分かったことが、魚のサイズと竿の強さのバランスが重要だということです。魚に対して竿が硬すぎると暴れるし、軟らかすぎるとイナせるような気がするんだけど最終的には竿負けして獲れる確率が減ってしまう。そうすると短時間で獲るためには積極的に魚を弱らせるようにしかけないといけない。
私の感覚ではいかに中層で魚に尾を振らせて弱らせられるかが重要なんです。その時【Vコブシ】かそうでないかの差は大きい、さらに【Xトルク】が組み合わさったことで魚が中層で首を振った時でも竿先が安定しているので安心してテンションを強めにしてのやり取りできるんです。これは取り込みの際も一緒ですね。
狩野 鮎でも本流の大物でも一緒ですけど竿を立てた時に魚が左右にブレるのが一番のバラしの原因ですものね。
「遡」もそのあたりはフル装備ですね。というか今年の本流竿は「EP 本流」でも【Xトルク】【Vコブシ】【V-ジョイント】と機能的にはフル装備状態ですけど・・・(苦笑)。
白滝 そうそう、あの竿も十分にイケてますね。安いからそれなり・・・でなくて付くべきものはちゃんと全部付いてる。
せっかく本流釣りを始めてもらっても、皆さん結構それをよう極めずに抜けていってるんですよ。掛ける、獲る機能が搭載されているというのは凄い後押しですね。
情報とか釣り方とかの提供面では我々にも責任があると思って反省しているんですけど、本当にフィールドに結構魚居るんですよ。
狩野 いきなり超大物でなく、まずは本流釣りの楽しさとやり取りの基礎を学ぶ意味でも是非30cm以上を目標に本流ヤマメ釣りをお勧めしますね。
白滝 それだと一気に釣れるフィールドが拡大しますしね。
後は長さ、硬さ、価格とそれぞれ特徴を持ったバリエーションが一気に増えたので、無理せずフィールドにあったタックルを選択してもらえば楽しい釣りができると思います。
狩野 “感度”も忘れないでくださいね(笑)。
白滝 そうそう、本流竿に“感度”という新しい要素が加わったことでまた渓流竿全体に新しい方向性が見えてきたり、それがまた鮎竿にフィードバックされたりするとまた面白いですね。
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Vコブシ
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伝統の郡上竿を進化させた現代版タケノコ竿

Vコブシは鮎竿・渓流竿の先端部#1〜#3を短くセッティングすることで竿先の安定性を高め、感度の向上を図る設計思想。同時に中節〜元竿は節長が長くなる胴長設計と組み合わせることによって同じベンディングカーブを描きながらもタメが効く、パワーと操作性・感度を兼ね備えたロッドの実現に貢献する。
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