抜きの流儀
DAIWA
新流儀【抜き】を考える ダイワフィールドテスター 白滝 治郎
温故知新“小継渓流”

“渓流釣り”という釣りのジャンルにおいて現在、源流から本流まで色々なフィールドにおける多種多様な釣法が登場しています。その中でも、昨今見直されつつあるのが渓流釣りの原点ともいえる落差の大きい中小河川における渓流釣りです。

渓流釣りの本質は、川の瀬音と鳥のさえずりに囲まれながらネイティブな渓魚と語らうことだと考えています。実際にそんなフィールドが最近日本全国で復活しつつあり、「沢山釣るよりも綺麗な1匹に出会いたい」という渓流ファンがまた少しづつですが渓流に戻ってきているのは喜ばしいことです。と、同時に今まで少し時代から取り残されていた感の否めない小継渓流竿が一気に脚光を浴びるようになってきました。

渓流釣りの本質は変わらなくても竿や糸から小物類に至るまでのタックルの充実がまた渓流釣りを身近なものへと近づけてくれているのです。特に竿と糸の進化には目を見張るものがあり、その性能を最大限引き出すことで今まで以上に快適で楽しい渓流釣りを実現してくれます。

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キーワードは“細糸”と“抜き”

ダイワではもともと「細糸で抜く」というコンセプトで開発された「琥珀」シリーズという小継渓流竿シリーズが存在しています。

「ゼロシリーズ」や「琥珀本流シリーズ」などのように性能の一部を特化させた派生機種が今では渓流釣りの1つのジャンルとして確立するなど“琥珀抜き調子”は現代渓流釣りの礎を築いてきた機種といえるでしょう。

そんな“琥珀抜き調子”をベースとしながら、小継渓流竿における“細糸”に特化したのが「EP TT(テクニカルチューン)」であり、このたび、振り込み、ドリフト、抜き(取り込み)という渓流ロッドに求められる3つの要素を高次元でバランスさせながら、抜き性能にさらに磨きをかけて開発された新しい抜き竿が「流覇」です。

進化した最新のタックルとテクニックを駆使することで、これまでに名人にしかできなかったような領域へと簡単に踏み入れることができるようになりました。

今回は最新の渓流釣りに求められるタックルと私なりの使い方について解説させていただきます。

Xトルク
パワー、操作性に革命をもたらすネジレ防止の最適構造

従来構造(竿先に対して0度、90度)に、ダイワ独自のバイアスクロス(±45度に斜行したカーボン繊維)を巻くことで、ネジレを防ぎ、パワー・操作性・感度が飛躍的に向上。
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1.軽い仕掛けをピンポイントで打ちこむ振り込み性能

釣り人が狙った投餌点に正確に振り込めるということは渓流竿にとって不可欠な要素です。仕掛けを振り込む所は、渓魚が定位するであろうポイントの上流側になります。渓魚が定位するポイントは一般にYパターンとかICパターンと呼ばれ、流れの集束部になります。

その流れに至る上流側が投餌点となりますが、川の流れは不定常変で、投餌点も前後左右へと動きます。この常に変化する投餌点を見極めピンポイントで仕掛けを投入するために大切なのが振り込み性能です。糸の強度が大幅に向上したことによって私は通常0.1号〜0.2号のフロロカーボンの水中糸にポイントによって4号〜B位までのガン玉を使い分けています。この軽い仕掛けを穂先のしなりで振り込みますが、振り込んだ後に穂先がスッと収まることが重要です。これを穂先の「抜け」といいます。

Yパターン ICパターン

EP TT」「流覇」はこの「抜け」を高次元で実現させることで、これまでポイントへ打ち込むようなエサ打ちからソフトにエサを置きに行くような投餌が可能になっています。「抜け」の良いロッドは振り込みからドリフトへとスムーズに移行できます。

2.仕掛のブレを抑えて流すドリフト性能

仕掛けを投餌点へと振り込んだら、流れに馴染ませドリフトへと移行します。このとき目印のブレを最小限に抑え、水中の仕掛の状態を読み取りながらドリフトができる竿が理想です。最近は渓流釣りにおいてもポイントの斜め上流に立ち、狙った流れの筋へ餌を流し込む釣りが主流となっています。“抜き調子”のシリーズに搭載されるチューブラー穂先は感度を向上させ、絶妙なロッドバランスが仕掛けのブレを抑えてくれます。このことが渓魚の口元へと違和感なく餌を届ける理想のドリフトにつながります。この感度の良さこそ微妙なアタリに瞬時に反応することを可能にし、確実に渓魚を針掛かりさせることにつながるのです。もちろん、仕掛をしっかり底へ入れるための目印調整、オモリワークは絶対に必要です。

強い流れのときのオモリワーク 画像
強い流れの中層を3号のオモリで流した場合、エサは流れてしまい定位する渓魚へ運ぶことはできない。そこでオモリを1号にアップするとエサは川底を流れ、渓魚へと運ばれていく。
マメなオモリワークで、その流れに合ったオモリを探り出すことが釣果アップのカギとなる。
 
3.間髪入れずに取り込む引き抜き性能

掛けた渓魚をその場で間髪入れず抜き上げることは、釣り場を場荒れさせず手返しを速くするために重要なことです。ダイワは竿先を若干強めに設定し、パワーのある胴部の反発力を上手く利用することで、細糸でもスッと抜ける“琥珀抜き調子”を開発しました。

もともと“V-ジョイント”の搭載によってその細糸対応力とリフティングパワーには定評が高かったところに「流覇」は新機能“Xトルク”を採用することで「抜きの安定性」を突き詰めたロッドとなりました。

フィールドテストを重ね、“Xトルク”を抜きの際に一番効果的な部位に取り入れ、抜きの安定性が大幅に向上。ネジレに強い特性によって水切れ時の渓魚の左右への動きを抑え、水を切った後の空中での安定性も高まりました。もはや飛ばすというより手元へ運ぶという感覚の取り込みになったのです。

抜くことができない大物をとりこむ時にも、ロッド先端部のネジレが抑えられるようになり、手元で走られたり、取り込み間際の首振りでのバラしも少なく、安心してタモ入れできます。何よりも“抜き”が決まると釣りのテンポもあがり、渓流を歩く足取りも軽くなるものです。

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4.さらに“抜き”の領域を広げる新たな調子

さらに「流覇」にはよりテンポ良く、そして本流域での幅広アマゴ(ヤマメ)を豪快に抜くための新アイテムが開発されています。

私の地元の長良川でも4月の声を聞くと本流での本格的なアマゴのシーズンとなります。当然初期のアマゴとは重量もパワーも大きく異なり、より餌の多い流れの強い瀬の中に入っていきます。

本流域を意識しつつ、小継の操作性を活かせるよう65の長さ設定で、より早いテンポの攻めの渓流釣りのために開発されたのが「流覇 硬調硬65M」です。

全体に硬い訳でなく、先端部分は振り込み、喰い込みも考え硬調のスペックを持ちながら新たにバランスを取りなおしたパワー系抜き調子に仕上げられています。

5.流覇とテクニカルチューンを使い分ける

「流覇」は抜き性能を突出させながら、ある程度の細糸の使用を可能にしています。実際にテストから仕上げの段階において私はフロロカーボン0.15号の水中糸をメインに使用しました。「流覇」は、テンポの良い釣りを身上とする私の渓流釣りを理想に近い形で実現してくれるロッドに仕上がりました。

しかし、時にはさらに極細糸を使用しなければ渓魚と対峙できない場合もあります。渇水時やスレた渓魚を狙うには0.1〜0.125号の極細糸が必要な場合もあり、そんなときは迷わず「テクニカルチューン」を登場させ、渓魚の反応を促します。取り込みよりまずは掛けることを優先させるのです。

もちろん、渓魚の喰いが立ったときや増水後の一番川のような好条件のときには、手返しを重視して「流覇 硬調」を持ち出し、水中糸を若干太めにして取り込み優先で攻めていきます。

大物が荒喰いするような時や盛期の幅広狙いには「流覇 硬調硬」を使用。今まで以上に豪快かつスピード優先の攻めの渓流釣りが可能になりました。

“抜き調子”という小継渓流竿の中に“細糸=「EP TT」”“テンポ=「流覇 硬調」”“スピード=「流覇 硬調硬」”というコンセプトを基に特化した機能を持つ竿が完成したことで、解禁から禁漁までの長い渓流シーズンを季節の移り変わりを感じながら目いっぱい楽しんでください。

流覇、EPテクニカルチューン
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