ダイワへらマスターズ

 
ダイワへらマスターズ2012全国決勝大会レポート
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集合写真

11月16日(金)~前夜祭~

へらぶな釣り界随一のメジャービッグトーナメント「ダイワへらマスターズ」。今年の第18回全国決勝大会の舞台は、茨城県古河市にある「三和新池」で行われた。2010年、オーナーに、往年のプロ野球大投手であり、大のへらぶな釣りフリークとしても知られる松岡 弘氏を迎えて大幅にリニューアルされた同池は、濃い魚影はそのままに、コンディションのいい大型が揃う人気管理釣り場となっている。

さて、マスターズ全国決勝大会は、いつものとおり前夜祭から始まる贅沢なプロローグ。試釣を終えた選手達は、三々五々、会場となるホテルに集結し、いよいよ翌日から始まる決戦を前に、ルール説明、そして、予選ブロックの組み合わせ抽選会に臨む。各ブロックの顔ぶれは、以下の通り(敬称略)。

Aブロック 斎藤心也(兵庫県 昨年3位シード) 鳥居裕輔(埼玉県) 
沼尻孝一(茨城県) 田邊忠史(埼玉県)
Bブロック 米田勇一(岩手県) 天笠 充(千葉県 昨年王者シード) 
南 治孝(兵庫県) 赤川武寿(茨城県)
Cブロック 鈴木則之(栃木県) 浜田 優(埼玉県) 
遠藤裕康(埼玉県 昨年2位シード) 茂木昇一(埼玉県)
Dブロック 鈴木千秋(滋賀県) 石川竜也(京都府) 
黒沢清孝(埼玉県) 太田武敏(茨城県 昨年3位シード)

抽選結果が出た瞬間、会場がどよめく。

注目はCブロックだ。

なんと、「ミスターへらマスターズ」浜田優選手を筆頭に、昨年2位の遠藤裕康選手、2008年王者の茂木昇一選手、そしてタイトルこそないものの、各全国大会で暴れ回っている実力者、鈴木則之選手がいきなり同組に入ったのだ。優勝候補4人が、いきなり予選ブロックで対戦する…。なんとももったいない組み合わせであるが、これがマスターズなのである。

浜田選手は、東日本ブロック大会8位とギリギリで通過してきた。しかしそれだけにリラックスした表情が印象的で、今大会では勢いのある若手を相手に何かをやってくれそうな雰囲気が濃厚である。そしてその浜田選手が会長を務めるトップスタークラブに所属する遠藤、茂木両選手。手の内は完全に見切られている上で、大きな壁を超えなければ「その先」はない。数々の激戦を演じてきた鈴木選手でさえ、組み合わせ後のインタビューでは動揺が隠せない様子であった。

Aブロック、昨年の大会を大いに沸かせた斎藤心也選手には、屈指のオルラウンダーとして知られ、近年、各トーナメントでも絶好調の鳥居裕輔選手がぶつかる。今回関西のBブロックから選出された鳥居選手は予選・ブロックと地元の斎藤選手と共に試釣りを繰り返した間柄。また、激戦の東日本ブロック大会を1位で抜けてきた新進気鋭の田邊忠史選手、同じく5位の沼尻孝一選手の2名が実力者2名にどう絡んでいくのか、注目だ。

Bブロックは、なんといっても昨年覇者の天笠 充選手に注目。安定感を増し続けるメーターウドンセットは盤石の構えで、すでにその釣り姿には浜田 優選手に通じる風格さえ漂う。しかし、チョウチンウドンセットの使い手として知られる赤川武寿選手、関西の実力者、南 治孝選手は、番狂わせを演じるには十分な役者。また、岩手から初出場の米田勇一選手の実力も、ある意味未知数であり、目が離せない。

Dブロックは、やはり昨年3位の、天笠選手と双璧をなるセットマイスター、太田武敏選手に注目が集る。今回の三和新池は地元の釣り場ということもあり、気合いも十分。攻撃的なメーターセットが信条の優勝候補筆頭だ。太田選手の牙城を崩しにかかるのは、チョウチンウドンセットの使い手として知られる滋賀の鈴木千秋選手。メーターが渋れば、勝機は十二分。新進気鋭の石川竜也選手、じわじわと実績を挙げつつある黒沢清孝選手も強い。

さて、試合会場となる三和新池の状況である。

ズバリ、大本命はメーターウドンセット。

竿の長短こそあるにしろ、釣り方としては「ほぼこれ一択」という状況で、何人かの選手やスタッフに聞いたが、「チョウチンウドンセットでは遅すぎて勝負にならない」という見方が体勢を占めていた。つまりそれだけ池の状態は良く、「釣れている」のである。

ますます天笠選手有利か…はたまた地元の太田選手か、ベテラン浜田選手か――――――?

各選手さまざまな想いを胸に、宴の夜は静かに更けていった。

11月17日(土)~予選ブロック~

「第一試合 ~メーター、予想外に渋る~」

夜が開けているというのに、外はまだ暗いまま…。

朝6時、ホテルから三和新池へとやってきた選手達は、不安げな表情で空を眺めていた。

気温は6℃。寒い。そして、今にも雨が落ちてきそうな曇天だ。

朝食を終えた選手達は、雨に対する備えもあるのか、早めに桟橋へと道具を運び、準備に取りかかる。

試合会場となるのは、三和新池の4本の桟橋の中でも最も実績のある、東桟橋。土手向きの1列に、手前からA~Dブロックという順に選手達が並ぶ。各ブロック、準決勝に進めるのは、たったの1名。ブロック内でマスターズならではの1対1の総当たり戦を行い(したがって計3試合)、勝ちポイントを最優先に順位を決定。同ポイントの場合は、3試合で釣り上げたへらの総重量で決する。試合時間は、全て2時間となり、昨年までの「1時間経過後の釣り座交代」は今年から廃止された。

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大会初日。どんよりとした雨雲が三和新池を包む

7時30分、ホーンの合図で、いよいよ予選第一試合がスタートする。

下馬評どおり、ほとんどの選手がメーターウドンセットを選択。今年も第三者機関である日本へら鮒釣り研究会の面々が審判員として招かれ、試合前にはタナのチェック(ウキからオモリまで1メートル以上)と、ウキのチェック(全長20センチ以上 オモリ負荷0.5グラム以上)が行われた。使用竿は10尺が最も多く、「8尺より、やや長めがいい」という傾向にあるようだ。メーターウドンセット以外では、短竿によるタテサソイを駆使したチョウチンウドンセットが3名。また、Dブロックの石川選手が「飛燕峰 烈火S」19尺沖打ちのウドンセットと、新べらを意識した奇策に出た。使用竿は、「龍聖・N」が圧倒的多数。他には「DAIWA HERA X」や、早くも新登場の「玄むく」の姿も。

しかし、何かがおかしい…。

すぐにでもメーターウドンセットの打撃戦がスタートするかと思ったが、誰もアワせる素振りすら見せないまま、15分が経過。そして、ファーストヒットを決めたのは、Aブロックの田邊選手のチョウチンウドンセットであった。そして30分が経過した頃、ようやくメーター組のウキが動き始める、という予想外のスローな展開。動き始めた後も怒濤の釣り込みを見せる選手は一人もなく、明確なキメアタリを出せず首をひねる姿が目に付く。ただ一人長竿を振る石川選手も絞るがスレも多く、他を圧倒するペースには届かない。対照的に、下馬評では「不利」とされていた、田邊、赤川、鈴木千秋のチョウチンウドンセット組が健闘を見せ、メーター組を抑え込んでいく。

注目のCブロックは、全員がメーターウドンセット。そして、浜田選手を鈴木則之選手が苦しめていた。試釣と感触が違うのか、当初リードしたものの「龍聖・N」11尺を振る浜田選手の釣りに、いつもの冴えが見られない。対する鈴木選手は全く同じ「龍聖・N」11尺メーターで王者に食らいつき、持ち前の粘り強さを遺憾なく発揮してジワジワとヒットペースを上げていく。結果、7.05キロ対5.35キロで浜田選手を破る大金星を挙げてみせたのだ。しかしこの「敗戦」が、この後、意外な展開でマスターズを面白くすることになるのだが…。

同ブロックの遠藤vs茂木の注目カードは、僅差で遠藤選手が競り勝ち、まずは1勝となる。

Aブロックでは、新鋭・田邊選手のチョウチンウドンセットが力強い釣りを展開。メーターで悩む沼尻選手を寄せ付けない。斎藤vs鳥居の実力者対決は、先にバラケのタッチを掴んだ斎藤選手に軍配。得意のインスタントウドンセットで、予想より渋くなったメーターのへらにもきっちり対応してきた。

Bブロックは、やはり天笠選手が強い。…といっても、昨年王者の表情に余裕はない。竿10尺メーターウドンセットで臨んだ天笠選手だったが、やはり予想外のウキの動きの少なさに面食らったのか、珍しく焦りの表情も見せる。思った以上にメーターのへらが渋っているようで、それは同ブロックの赤川vs南の対戦にも如実に表れており、僅差でチョウチンの赤川選手が破れたものの、その差は僅か150グラム。ここにきて、「チョウチンでも十分勝負出来るほど、メーターが渋っている」という状況がはっきりとする。

Dブロックの注目、太田選手もまずは黒沢選手を破って1勝。しかし、その表情には焦燥感すら漂っている。釣果は僅かに4キロ。「勝った、釣った」という実感はないのだろう。「全然ダメ。第二試合は開き直って8尺で攻めます」と、表情は硬い。そんな太田選手を焦らせていたのが、チョウチンウドンセットで手堅い釣りも見せた同ブロックの鈴木千秋選手の存在だろう。長竿で奇策にでた石川選手を落ち着いて突き放して1勝をあげる。釣果的に図抜けているわけではないが、ここまで渋ると、安定感のあるチョウチンは強い。

「第二試合 ~苦しむメーター勢を横目に、カリスマが仕掛ける~」

9時30分、第一試合が終了。空はますます暗くなり、ポツポツと冷たいものも落ちてきていた。

第一試合終了後、遠藤選手にコメントを頂く。

「難しいです! 乗る時は早いんだけど、そういうアタリがなかなか出ない。いい感じのサワリは続くんで、ついつい待ってしまうんですけど、そのまま何もアタらない…。早いアタリをどうしたら出せるのかが分からないし、かといって待ってもまずアタらない。いろいろやりながら2時間が過ぎちゃった、という感じです」

おそらくこの遠藤選手の言葉は、ほとんどの選手達の心情を代弁したものだったに違いない。それほど、第一試合を終えたメーター組の選手達の表情には、「こんなはずじゃなかった」という言葉が浮かんでいた。

しかし、この劇的な変化が、今年のマスターズ最大のドラマを生み出すことになる。

Cブロック第一試合、鈴木選手にまさかの敗戦を喫したカリスマ浜田 優選手が仕掛ける。

第二試合の準備中、対戦相手の茂木選手の隣で、浜田選手が長い竿を継いでいく。会場に、静かなどよめきが起こる。

大きなウキが、竿一杯の位置に揺れる。まさか…

浜田選手が出した竿は、「龍聖・N」16尺。釣り方はなんと、段差の底釣りである!

メーターから、まるで対照的な釣り方である「段底」へのスイッチ…。この大舞台で、ここまで大胆な作戦変更を敢行する選手には、そうそうお目にかかれるものではない。しかし、浜田選手の目には確かな光がある。何か確信があるのか…。

10時、第二試合がスタート。…と同時に、Bブロックの天笠選手がヒット。その後は第一試合と同じく、メーターウドンセットとチョウチンウドンセットが一進一退の攻防を繰り広げていく。そんな中、異様な光景が目に飛び込んでくるのである…。

「ズシャッ!」

重厚な水切り音を響かせ、浜田選手の竿が大きく曲がる。両手で支え、じっくりと時間をかけて上がってきたのは、キロクラスの大型である。その魚が水面に出た瞬間、対戦相手の茂木選手が思わず苦笑いするほどの見事な型である。

底に、大型はいた。

いや、試釣の時から釣れるのは分かっていたのだろう。そして、思った以上にメーターが渋った。ならば、数は少なくても、この大型を2時間で10枚も釣れば十分に勝負になる――――――。

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第二試合Cブロック。1敗を喫した浜田選手が、まさかの段底にスイッチ。茂木選手を圧倒する

同じく第一試合で1敗し、後がなくなった茂木選手も、15尺で沖打ちメーターウドンセットで大型新べらを交えた釣りを展開。しかし、相手が悪かった。隣の浜田選手の段底は一定のペースで確実なアタリを刻み、茂木選手を…いや、会場の空気を一変させてしまうほどの威力を見せつけるのだ。

決して早い釣りではない。いや、段底自体、スローな冬の釣りだ。バラケをしっかりナジませ、ゆっくり抜き、そして、抜いた後も小さくサソいながら、しつこく待つ。そして、「チクッ!」。小さいが、対岸の観覧席からもはっきりと分かるアタリで、その度にギャラリーがどよめく。そして水面を割って出るのは、他の選手よりふたまわりは大きいへらなのだ。

浜田選手のメーターから段底へのスイッチ。それこそ、今年のマスターズでの大きなターニングポイントとなった。

「第三試合 ~全ブロック最終決戦~」

前ニ試合を終えた時点で、全ブロックともに通過者は確定せず。第三試合の結果如何で決まるという、へらマスターズ史上でもスリリングな展開へともつれ込む。

まずはAブロック。斎藤選手と田邊選手が2勝同士による直接対決となり、勝った方が準決勝に進出。

Bブロックは、天笠選手と南選手がやはり2勝同士で、同じく勝った方が準決勝へ。

Cブロックは遠藤選手が2勝で一歩リードだが、第三試合は浜田選手との直接対決で、敗れれば同ポイントとなり、総重量での決着。浜田選手の段底が型がいいだけに、心情的には浜田選手有利か。

Dブロックは、太田選手と鈴木千秋選手が同じく2勝同士の直接対決。勝った方が準決勝だ。

13時15分、夕方にかけて雨が強くなりそうなため、選手全員の了承を得て、15分繰り上げての試合開始となる。終了は15時15分。

雌雄を決する第三試合を支配したのは、やはり浜田 優選手の段底であった。

メーターで悩む遠藤選手を横目に、出だしからいきなり明解なアタリを連発。釣り座自体は奥から一気に手前になったものの、まったく関係ないとばかりに大型を揃えていく。ペースはジワジワ上昇し、打てば打つほどアタリのタイミングもどんどん早くなるという好循環。結果的に浜田選手は13.30キロという驚異的な釣果を叩き出して、8.80キロと、メーターとしては全体を見ても高釣果だった遠藤選手を大差で敗ることに成功。浜田選手が大型を取り込むたびに、遠藤選手は呆れたような笑顔を見せるばかり。そして見事、大逆転で準決勝への切符を手にするのである。

Aブロックは、新鋭・田邊忠史選手のチョウチンウドンセットが爆発。全体でも浜田選手に次ぐ10.95キロという素晴らしい釣果を記録し、メーターで8.60キロを釣った斎藤選手を退け、嬉しい初出場での準決勝進出を決める。

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予選第三試合Aブロック、斎藤選手との直接対決を制した田邊選手

Bブロックでは、得意のメーターで試行錯誤を繰り返しながらも、天笠選手が粘釣。8.10キロを釣り、5.20キロと波に乗れなかった南選手を冷静に退ける。後で聞けば「思ったより釣れなくて、試合中にいろいろ試していた」という天笠選手。本番で冷静にいろいろなパターンを試すという怪物ぶりは、やはり王者の風格だろう。苦心しながらも予選リーグ突破だ。

Dブロックは、メーターウドンセットで悩み抜いた太田選手とチョウチンウドンセットの鈴木千秋選手が大接戦。まさかの同枚数で、型に勝る鈴木選手が7.75キロ対6.45キロで勝利。嬉しい準決勝進出となった。終了間際に鈴木選手が掛けた大型が、勝敗を決した。

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予選第三試合Dブロック、気迫の太田選手を、チョーチンウドンセットの鈴木千秋選手が型で退ける

予選第三試合を終え、翌日の準決勝に駒を進めたのは、Aブロック田邊忠史選手、Bブロック天笠 充選手、Cブロック浜田 優選手、Dブロック鈴木千秋選手、ということになった。予想を覆し、メーターウドンセットは天笠選手ただ一人だけ。田邊、鈴木両選手が「不利」と言われたチョウチンウドンセット。そして、浜田選手に至っては、誰もが目を疑った「段差の底釣り」…。勝負とは、蓋を開けてみなければ本当に分からないものである。

天笠選手は前日試釣と大きく変わってしまった状況に迷いながらの釣りで、釣果的にもズバ抜けているわけではない。さらに、チョウチンの田邊、鈴木選手も、浜田選手の釣りを凌駕する程のパワーがあるかといえば…。この時点では、浜田選手の段底が圧倒的に「ノっている」感触であった。

試合終了後、ホテルに向かう道中で、雨はついに本降りとなる。

そしてホテルでは、盛大な中夜祭。その場で翌日の準決勝の組み合わせ抽選が行われる。結果、浜田選手vs鈴木千秋選手、天笠選手vs田邊選手、という対戦カードに決定。

明日の予報は、朝には雨が上がり、快晴。晴れ渡った三和新池に、いったいどんなドラマが待ち受けているのだろうか…。

11月18日(日) ~準決勝&決勝戦~

「準決勝 天笠選手vs田邊選手」

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前日とは打って変わった青空の下、準決勝が始まる
準決勝は左から、田邊選手vs天笠選手、浜田選手vs鈴木千秋選手

明けて18日、前日とはうってかわり、朝から晴れ渡った空。雲が抜けたせいか、風が強く、関東の冬を象徴する天気だ。しかし、気温は12℃と思った程低くなく、前日の6℃に比べればかなり暖かい。

東桟橋奥が、準決勝の舞台。奥から、田邊選手、天笠選手、少し間を開けて、浜田選手、鈴木千秋選手と並ぶ。さらに間を空け、惜しくも予選で破れてしまった残りの全選手がズラリと並び、準決勝と同じ時間で、次年度の地区大会決定戦シード権を争う形となる。ここで6位までに入れば、来年度の地区大会「決定戦」へのシードが確定。つまり、1勝すれば再び全国の舞台に戻ってこられるのだ。

7時30分、定刻どおりに準決勝スタート。

最奥の田邊選手に対するは、天笠選手。「DAIWA HERA X」9尺チョウチンウドンセットの田邊選手に対し、天笠選手は「龍聖・N」10尺によるメーターウドンセットだ。

開始早々、2投目で段底の浜田選手が絞るも、他の3人はアワせるそぶりもみせないまま時間だけが過ぎていく。昨夜の冷たい雨の影響か、さらに食い渋ったのか…。

30分後の8時、ようやく天笠選手がアワせるが、スレ。取り込む前に審判に向かって首を横に振る。続けて絞るは、またしてもスレ。天笠選手が釣れ始めに2連続スレというのは、非常に珍しい。何かがおかしいのか、天笠選手の釣りにいつもの堅実さが見られない。

対する田邊選手は、下ハリス70センチという、独特の長ハリスの釣り。いったんは必ずバラケを深ナジミさせ、持たせたまま待つのか、サソイで強制的に抜くのか…という2パターンで食いアタリを導き出していく。8時10分に、先に1枚目を釣ると、その後もジワジワとペースを上げていき、天笠選手にまったく引けを取らない釣りを展開し、ギャラリーを沸かせる。天笠選手は眩しそうに左手をかざしながらウキを注視し、1枚、また1枚と何かを確かめるように釣り始める。しかし、ハリスをさらに77センチへと伸ばした田邊選手が、おどるようなウキの動きの中での「チクッ!」でスパート。8時42分には6枚目を釣り、4枚の天笠選手をリードする。

そして中盤以降は、まさにシーソーゲーム。田邊選手が釣れば天笠選手が釣り…を繰り返し、両者まったく譲らぬ釣りを展開。試合はそのまま終盤までもつれこみ、9時24分の時点で、両者8枚。そして26分、なんと田邊選手が痛恨の道糸切れで掛けた1枚をロスト。そして30分、試合終了の合図と同時に天笠選手がアワせるも、空振りで天を仰いで試合終了となる。

両者8枚。そしてなんと、電子秤としては非常に珍しい、両者6.00キロの同重量。大会ルールに従い、予選総重量で上回った天笠選手が、4年連続の決勝戦進出を決めたのである。

初出場とはいえ、個性的なチョウチンウドンセットで前年覇者を最後の最後まで苦しめた田邊選手。勝負に「たられば」は禁物だが、最後のラインブレイクがなければ…。しかし田邊選手は「道糸を切ってしまったのは、自分のアワセが強すぎたため。ついつい力が入ってしまって…。でもそれも実力のうちです。天笠選手は、やはり強かったですね」と爽やかな笑顔で勝者を讃えていた。

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天笠選手と田邊選手は、まさに一進一退の攻防

「準決勝 浜田選手vs鈴木選手」

開始早々に1枚を掛けた浜田選手が、横綱相撲を見せる…。

予選第二試合で切り替えた、「龍聖・N」16尺段底。釣れ始めも早く、持続力もあって、型もいい。序盤から飛ばした浜田選手は、ジワジワと「玄むく」8尺の鈴木千秋選手を引き離していく。8時40分、浜田選手が5枚目の大型を掛けた時、鈴木選手はまだ2枚。昨夜の冷たい雨による底冷えの心配はなかったようだ。釣れてくるへらぶなも、昨日以上の大型だ。

しかし、鈴木選手も黙ってはいなかった。

同じチョウチンウドンセットの田邊選手とは対照的に、短バリスに活路を見出した鈴木選手。打ち始めは下ハリス60センチで入るも、「思った以上にへらがいて、スレが多かった」ことから、思い切って35センチにスイッチ。そこから独特のタテサソイを駆使した釣りが威力を発揮し、ジワジワと浜田選手を追い上げていくのである。

しかし、時間が足りなかった…。

終盤にかけて、ややペースを落とした浜田選手を追い上げたものの、時すでに遅し。浜田選手7枚6.55キロ、鈴木選手5枚3.70キロという結果で勝敗は決した。枚数では2枚差まで追い上げた鈴木選手だったが、重量差は想像以上。やはり、段底はヒット率がいいだけでなく、型が抜群にいいのだ。

惜しくも破れた鈴木選手だったが、試合後は一点の曇りもない笑顔を見せた。

「浜田さんに先行されて、自分はスレやカラが多くて…。ハリスを詰めてからはなんとなくリズムに乗れたんですが、遅すぎましたね。完敗です。憧れの浜田さんと対戦出来て、幸せでした。また来年がんばります」

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終盤、鈴木選手もジワリと追い上げるが…

結果、浜田選手が決勝進出。天笠選手と、いよいよ頂点を争う。

「シード権争奪戦」

準決勝と同時間帯に行われたシード権争奪戦では、茂木昇一選手が魅せた。

「DAIWA HERA F」16尺。予選ブロックで敗れた浜田選手と同じ段差の底釣りに切り替えたのだ。そして、師匠のお株を奪う釣りで序盤から好ペースを維持。10.55キロという高釣果を叩き出してシード権争奪戦1位を決め、優勝経験者としてきっちり見せ場を作ったのである。

2位は本領発揮の鈴木則之選手、3位はチョウチンウドンセットの赤川武寿選手、4位は斎藤心也選手、5位は南 治孝選手、6位は太田武敏選手。以上6名が、次年度へらマスターズ地区大会決定戦のシード権を獲得。最短距離で、再び全国決勝大会を目指す。惜しくも7位以下となった選手は、地区大会予選からの再挑戦となる。

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準決勝と同時間に行われたシード権争奪戦では、16尺段底の茂木選手が見せ場を作った

「決勝戦 ~段底vsメーター。最後の最後に舞い降りたドラマ~」

「段差の底釣り」の浜田 優選手。

「メーターウドンセット」の天笠 充選手。

竿はともに「龍聖・N」で、浜田選手が16尺、そして天笠選手は準決勝までより1尺短くし、9尺。

この二人による至高の決勝戦が、10時50分にスタートする。

向かって左に浜田選手、右に天笠選手。東桟橋にはこの二人と審判員のみ。14名の全国大会選手達も観戦席に混じり、固唾をのんで頂上対決を見つめる。同じく2時間の勝負だ。

その観戦席の空気は、「浜田有利」。

段底はアタリ出しも早く、安定感があり、何より型がいい。

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決勝戦は、浜田選手vs天笠選手。試合を前に、固い握手

対する天笠選手は、ここまで苦心の釣りで、薄氷を踏むような勝利で勝ち上がってきており、いつものように対戦相手を圧倒するような釣りは、今大会ではまだ見られていない。釣果的にも浜田選手より少ない。

そんな雰囲気の中、いよいよ決勝戦が始まった…。

開始3分、やはり先陣を切ったのは浜田選手だった。

3投目で初アタリをもらうと、しっかりと乗せて大型をゆったりとタモに導いて1枚目。やはり浜田選手有利か。

しかし、続いてアワせたのは天笠選手だった。今大会を通して、メーターウドンセットは少なくとも初アタリをもらうまでに15分以上かかっていた。しかし「桟橋にたった二人」という特殊な状況になった決勝戦で、予想外にウキは早く動いたのだ。いや、天笠選手はこれを狙っていたのか。

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決勝戦でも浜田選手の段底が早々に火を噴く

続けて天笠選手がアワせる。これを空振ると、下ハリスをチェンジ。この時、35センチで入っていたハリスを、32センチに詰めていたという。さらに天笠選手は、決勝戦に際して、竿を1尺短く、ウキをワンサイズ大きくしていたのだ。全ては間引かれた釣り座により、ウキの動きが増えると見込んでのことだった。4年連続の決勝戦。そこで学び、時には苦杯をなめてきた天笠選手の大きな「成長」だった。

ハリスを短くした後、天笠選手が連続ヒット。これを皮切りに、手に汗握るシーソーゲームが展開されていく。

浜田選手が釣れば、天笠選手がすかさず掛ける。時には同時にヒット。

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間引かれた釣り座のおかげか、メーターウドンセットの天笠選手も早々にヒット

1時間が経過した11時50分時点で両者7枚と、まったく譲らず。

11時55分、浜田選手がジワリと返して「チクッ!」という理想的な動きで大型を釣ると、天笠選手がすかさず連続ヒット。1枚リードするが、すぐに浜田選手が釣り返す。

12時2分、浜田選手が連チャンを決めて11枚とすると、天笠選手がすかさず釣り返して10枚。すると同時に浜田選手が12枚目、13枚目、14枚目と怒濤の3連続ヒット。すると今度は天笠選手が3連続ヒットで13枚とする!

12時32分、浜田選手が静かに15枚目を釣り、このへらをフラシに入れると、スタッフに2個目のフラシを要求。空のままセットして16枚目に備えると、この時点から状況は大きな展開を見せることとなる…。

残りは約30分。型の差から言っても、浜田選手優勢は変わらず。天笠選手が釣っているへらも小さいわけではないが、重量で浜田選手を上回るには、最低でも3枚以上のアドバンテージが必要だろう。

「やはり、浜田 優強し!」

ギャラリーにそんな空気が色濃く流れ始めた頃、「異変」が起こっていた。

強く吹いていた風向きが変わる。

それまで、緩やかに右に流れて、ヘチのカケアガリに乗る形でブレーキが掛かっていた浜田選手の段底。もちろん流れはないに越したことはないのだが、手練れの浜田選手は、流れを利用する形でアタリを導いていたのだ。試合前、念入りに時間をかけて広範囲に水深をチェックしていた浜田選手の姿が頭に浮かぶ。しかし、あろうことか、いきなり逆の左の深い方に流れが変化してしまったのである。

流れが逆方向になった影響は、残酷なまでに浜田選手のウキに表れてしまう。

待てば待つほど、クワセエサは深みにはまっていってしまう。アタリ自体が半減し、そこでアタっても、カラやスレ。かといって、早いアタリが出てくれるほど甘くない。浜田選手の表情が一気に曇る。

対する天笠選手はどうか?

流れが反転した影響は、幸いにもメーターにはない。

いや、むしろ逆にへらがタナに入ってきたか。

何度も何度もウキ下を微調整する浜田選手を横目に、天笠選手の釣りが熱を帯びていく。

それまでより明らかにナジミ幅が深くなる。先端がチラチラと見えるまで深くナジませる。明らかに何かの「ギヤ」が変わった。

そこから、ファッファッとサソイの動作でバラケを促進。これに反応したへらが、短か目の下ハリスの先にあるクワセに飛び付く!

今大会、試行錯誤を重ね、定まらないパターンに苦しんできた天笠選手。しかし、その苦労に報いるかのように、最後の最後に「地合」が舞い込んできたのである。

深く入れる、サソイ、スパッ!

15枚で止まったままの浜田選手とは対照的に、天笠選手は今大会で最高のペースを構築。

何と、ラスト30分は6枚の固め釣りとなり、19枚でフィニッシュ。浜田選手はついに2個目のフラシに1枚もへらを入れることなく、15枚のまま終了のホーンを聞く――――――。

検量の結果、浜田選手15枚10.90キロ、天笠選手19枚11.35キロ。

やはり型に勝る浜田選手が重量で肉薄したものの、天笠選手が最後の最後で地合をものにし、誰あろう浜田選手以来の連覇という偉業を達成したのである。

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決勝戦風景

「表彰式」

三和新池駐車場に設置された特設ステージにて、全選手、スタッフ、報道、関係者が集まり、荘厳なBGMが流れる中、第18回ダイワへらマスターズ表彰式が始まる。

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競技委員長 ダイワフィールドテスター 岡崎一誠
三和新池オーナー 松岡 弘氏

シード権争奪戦の結果発表に続き、上位4名が表彰台に上る。

惜しくも準決勝で浜田選手に敗れた鈴木千秋選手は、印象的な笑顔で「憧れの浜田さんとマスターズの大舞台で対戦出来たことは本当に幸せでした」と振り返った。また、同じく準決勝、天笠選手に同重量を記録した田邊忠史選手は、やはり清々しい笑顔で「岡崎さんに指摘されていたアワセの強さが、最後の最後で仇となりました(笑)。反省です。でも、精一杯やりました」と笑顔で激戦を振り返った。

そして、まさかの段底で今大会を大いに沸かせた浜田 優選手にマイクが向けられる。

「思った以上に段底が良くて、手応えはありました。決勝戦では、風にやられましたね。あそこで流れが左に変わって、どうしても深いところに落ちていってしまうようになりました。いろいろ手を尽くしてみたのですが、ラスト30分はどうしても食いアタリを出すことが出来ませんでした。これも釣りですね。でも、あそこで地合をものにし、釣り込んでくる天笠選手は、たいしたものですよ」

今大会を通して、浜田選手のリラックスした表情で釣りをしている姿が印象的だった。地区大会決定戦をギリギリで通過してきたこともあるのか、「全国大会を楽しもう」という姿勢が随所で見て取れたのである。もちろん、勝負なので釣り自体は真剣そのものなのだが、対戦相手との交流を楽しんだり、時折笑顔を見せ、力のある若手の台頭を歓迎し、誰よりも喜んでいるふうにも見えた。しかしやはり、あの予選でのメーターから段底へのスイッチは、誰でも出来るものではない。また、最後の最後に風が変わらなければ、マスターズ6回目の優勝を奪取していたかと思うと、相変わらず衰えることを知らない釣技と戦略、冷静かつ大胆な試合運びに、驚嘆せずにはいられない。そして我々の最大の喜びとして、来年再び、マスターズ全国の舞台でカリスマの釣りを堪能することが出来るのである。

そして、昨年に続き、表彰台の頂点に登った、天笠 充選手――――――。

「今回は…本当に厳しかったです。予選から予想外にメーターの状態が悪くて、正直、いろいろ試行錯誤しながら何とか勝ち上がっていった…という感じでした。特に準決勝では、田邊さんの道糸が切れなければ私が負けていました。浜田さんと決勝戦で当たるのは初めてで、しかも、今までの対戦では全て私の負け。今大会では、浜田さんの段底が決まっているのは分かっていたので、試合中はとにかく右を見ないように、気にしないようにしていました。結果的に自分の釣りを貫くことが出来て、そして、大会を通じて最後の最後で初めてパターンをつかむことができた感じでした。今回の優勝は、本当に嬉しいというか、少しだけ自分の成長を感じられたかなと思います」

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優勝者インタビュー
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表彰台
歓喜の胴上げ

「最後の最後に地合をつかんだ、天笠 充のメーターウドンセット戦略」

表彰式、そして恒例の胴上げの後、興奮冷めやらぬ天笠選手に詳しい話を聞いた。激戦の連続で疲れているにも関わらず、天笠選手はいつもどおりの穏やかな口調と丁寧な言葉で、自身の戦略を分かりやすく解説してくれた。

「まず、試釣で分かっていたことは、長ハリスはないなと。普通、この時期だと私は40センチくらいの長さの下ハリスから入るのですが、三和新池の場合、クワセをアオるへらが食ってこないというか、ひたすらアオりっぱなりなんですよ。食ってくるへらというのは、意外とバラケとの距離感が近いな、と。なので、下ハリスは終始短めの35センチを基準に、決勝戦では32センチに詰めました。短くした方がアオリが減り、結果的にサワリは減ってしまうのですが。肝心の乗るアタリが出て、アタるタイミングも早かったんですよ。これは予想以上に渋った本番でもそうだったんですが、渋いからといって、あまり待っちゃいけないなと。サワリの出方で待つか待たないかを判断しつつ、基本的にはあまり待たずに打ち返していきました。本番では、へらが横移動といいますか、寄りの状態が一定しない感じで、早めの理想的なアタリでパンパンと連チャンしたかと思うと、いきなりしばらくシーン…というように、その差がすごく激しかったんです。かといって、そこで下ハリスを伸ばしても、何も起こらない。短めのまま『来た時に釣る』という我慢の釣りでした。釣り込む時も、一本調子ではなく、バラケの抜き差し等、いろいろやってないとアタらない感じで、とても苦労しましたね。正直、準決勝…いや、決勝戦の最後以外は全て、ヒヤヒヤな感じでした(笑)。

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天笠 充選手、二連覇達成

その決勝戦ですが、今回で4年連続決勝戦ということで、自分の中で決勝戦の場数を踏んできたことで落ち着きもあったし、コツも分かっていました。それだけは成長した部分かな、と(笑)。昔の私ならば、準決勝までのタックルやエサ、そのままで決勝戦に臨んでいたと思います。しかし、桟橋に二人だけになるという状況の決勝戦では、魚の密度が準決勝までとは大きく異なるのです。そこで今回は、竿を1尺短く9尺に、そしてウキのサイズも大きくしました。準決勝までのあの渋い状況で、昔の私だったらない発想です。結果的には、これが最後の最後での釣り込みを助けてくれたと思います。

決勝戦でも焦らずにいろいろチェックしていく中で、ラスト30分で、へらがタナに入ってきたような感触があったんですよ。そこで、沈没気味の深ナジミにしてみました。でも、ただバラケを持たせているだけではアタってくれない。そこで、パンッと強制的に弾くようなサソイでバラケを促進してあげると、その動作にへらが強く反応を示すことが分かったんです。これだ、と思いました。沈没気味に入れて、サソイで弾いてスパッ! …今大会を通して、初めて『パターン』と呼べる釣りでした。ここに辿り着けたのが、最大の勝因だと思います。実際、最後の釣り込みがなければ、重量では圧倒的に浜田さんに負けていましたから」

トーナメントシーンでは珍しい、スローな段底で圧倒的な釣りを見せた浜田選手も浜田選手ならば、苦戦を続けながらも最後の最後までモチベーションを切らさず、決勝戦ラスト30分という「ここぞ」というところでついに舞い込んできた地合を見事につかんだ天笠選手も天笠選手。世代は違えど、まさに「怪物」同士が存分に渡り合った、後世に残る名勝負であったと言えるだろう。(完)

(天笠 充選手のタックル&エサ)

竿 龍聖・N】10尺(予選~準決勝)9尺(決勝)
道糸 0.8号 ハリス:上0.5号 下0.4号 8-35cm(予選~準決勝)8-32cm(決勝)
ハリ 上7号 下2号
ウキ 【極心 マスターズ清遊湖バージョンプロト】パイプトップ6.5cm 羽根二枚合わせボディ5.5cm カーボン足8.5cm(予選~準決勝)
パイプトップ7cm 羽根二枚合わせボディ6cm カーボン足7.5cm(決勝)
エサ バラケ【ペレ匠デカ粒】120cc+水240cc+【鬼武者】240cc+【若武者】120cc+【華々】120cc+【ペレ匠ダンゴ】120cc
クワセ インスタントウドン

さる10月28日(日)「ダイワへらマスターズ2012」も大詰めの時期を迎え、全国決勝大会への出場権をかけた最後の選手を決定する「Bブロック西日本大会」が滋賀県甲南の池で開催された。
当初予定では同じく滋賀県のトムソーヤで開催予定だったが、急な会場変更により西日本予選と同会場でのイレギュラーな開催となった。

大会前日
池の状況は丁度秋の新べらが放流され、その動きにあわせて池全体のへらの活性が上がっているとはいえ、予選時の両ダンゴ時合いから、セットの時合いに移り変わる端境期にあたり一日の中でもへらの活性が不安定な難しい季節。
前日の試釣組の状況からは「変化にどう細かく対応できるか」が勝負の分かれ目、時合いを継続できれば爆発的な釣果も期待できる状況であった。
しかし気になるのは天気図、予報では丁度大会当日前線が通過し一日雨の予報…。
丁度仲間の試釣を兼ねて来場し、得意のインスタントウドンを使ってのカッツケセットで爆釣していた全国シードの斎藤選手選手によると「大会当日は天候に加え例会組も入り、ある程度は喰い渋ることは予想できるが、どの程度まで渋るかが分からない…」と不安の声があがっていた。

大会当日朝
まだ暗い午前4時、目ざましで起きた筆者が一番にしたのは宿泊のホテルの窓から外の天候を確認することだった。
街灯に照らされた道路が光っている、しかも道路際に立てられたノボリがパタパタとはためいている。迷わず雨具に身を包みホテルを出ると、予想していたよりもだいぶ雨足が強い。波乱の予感…。

選手も天候が気になって受付開始時にはほぼ全員集合。
早速受付と共に組み合わせ、釣り座を決める抽選が行われる。当日は事務所側からの強い風が予想されることから3号桟橋の表裏のどちらの釣り座に座るかによって戦略自体の組み立てが大きく変わることから組み合わせもさることながらその向きに一喜一憂する姿が印象的であった。

予選前半
桟橋にパラソルの花が咲いた桟橋。
予選は前半2時間終了時点で10分間の席替えを挟んでの4時間の総重量で争われ、4名もしくは3名の5ブロック各上位2名が決勝へ駒を進められる。
競技開始時の選手の戦略は大きく3種。
短竿のカッツケウドンセットが10名、短竿チョウチンウドンセットが5名、両ウドンの底釣りが2名、浅ダナ両ダンゴが1名。向かい風の事務所向きの選手7名中両ダンゴの光安選手を含む4名が浅ダナを選択したことからも試釣で浅ダナに手ごたえを感じた選手が多かったのが分かる。
急な天候変化に加え、例会による人的プレッシャーが加わり予想以上の喰い渋りのスタート。開始30分は比較的静かな時間が流れたが1時間を過ぎる辺りから状況変化に対応してきた選手がコンスタントに竿を絞りだした。
風を背中に受けたA~C組では両サイドのAブロック矢野選手、Cブロック鳥居選手のカッツケウドンセット組が一気に枚数を稼ぐ。
一方、向かい風の事務所向きでは短竿チョウチンウドンセットの石川選手と南選手がテンポ良いエサ打ちでコンスタントに絞り出す。
前半1時間半で矢野、南2選手が2フラシ目突入。
前半終了10分前にはAブロックの鈴木選手がフラシを交換したところで予選前半2時間が過ぎ、10分間の席替えタイム。

この10分間を使って各選手は席だけでなく戦略も変更してくる。
目立ったところでは向かい風の事務所向き選手7名は光安選手を除き全員チョウチンにスイッチ、Cブロックの浜田選手は両ウドンの底釣りから浅ダナへチェンジして巻き返しを図る。

予選後半
風と雨が強くなったり、弱くなったりの不安定な状況のまま予選後半がスタート。
この時間帯になって喰いはいっそう渋くなる中、新べらを交えて確実に竿を絞っていた全国常連、両ウドンの名手、源選手が後半30分2フラシ目に変えるとフラシ交換を審判に申し入れる選手が続々と出てきていよいよ1枚を競う接戦となってきた。
ラスト1時間となると守りで確実なアタリに絞る選手、逆転を狙って積極的に攻めの釣りで勝負を挑む選手など周りをみながらの駆引きの釣りが展開され予選が終了した。
予選結果は
Aブロック:前半飛ばした矢野選手が全体トップの19.0kg、チョウチンの鈴木選手がコンスタントに釣り込み2位
Bブロック:3人カッツケ勝負となったBブロックは石田、内田選手が抜ける。
Cブロック:カッツケでコンスタントに攻めた鳥居選手が1位、後半浅ダナに変えた浜田選手が逆転で2位抜け
Dブロック:後半チョウチンにスイッチした藤井選手がブロックで1人2フラシでトップ。
      2位には終始浅ダナ両ダンゴで貫き通した光安選手が滑りこむ。
Eブロック:終始チョウチンで勝負した南、石川選手が予選通過。嶋田選手は必死に追いすがるも一歩及ばず。

 結果的には底釣り両ウドンの選手は短竿の回転の釣りに追いつけず、短竿の選手が優位な予選結果となった。

ブロック大会決勝
決勝は各ブロック上位2名の10選手に、シード権を持つ工藤選手を加えた11名で行われた。
くじ引きでA,B,Cの3ブロックへ分けられ、トップ1選手と各ブロック2位の中での最高釣果1選手が全国決勝大会への切符を手に入れる。
決勝は2時間。
当日の天候を考慮し、全員追い風になる4号桟橋むき1列に並ぶ。
予選後半の喰い渋りの流れが続くのか?それとも18名から11名に減った桟橋でへらの活性はリセットされるのか?
 12:30決勝スタート
Aグループ
全体トップの矢野選手は予選と変わらずカッツケウドンセット、シードの工藤選手は少しタナを取った浅ダナウドンセット、そして石川選手はチョウチンウドンセット、浜田選手は再度両ウドンの底釣りで挑む。
開始早々スタートダッシュを決めたのは矢野選手。開始30分はぶっちぎりの釣果に周囲が湧く。工藤選手はカラツン、糸ズレに悩まされて首をかしげるしぐさが頻繁にでて悩んでいる様子。
そんな中、地合いが変わり浅ダナのへらの反応が減った30分すぎからタナが構築されてきた石川選手のチョウチンがさく裂。
13:50には2フラシ目を入れてトップ釣果。
石川選手は予選よりウキのサイズをあげてバラケをしっかりと棚に入れて上手く地合いをだしての全国大会進出。


Bグループ
3選手中石田、鈴木選手がチョウチンウドンセット、光安選手は両ダンゴという戦い。
スタート時は鈴木選手、石田選手が交互に釣る接戦に見えたが、30分すぎから鈴木選手がクワセを落とすまで相当待って確実にアタリを取っていく戦法でポツポツながらコンスタントに竿を曲げるのが目立つようになり、56分には2フラシ目にし、終ってみれば圧勝のトップ釣果。
鈴木選手は予選はパイプで入るも、決勝はトップをムクに変えてストローク重視に変えてじっくり誘って喰わせるスタイルに変更して喰い渋りを克服した。

 

Cグループ
鳥居、内田、藤井3選手がカッツケウドンセット、一番奥の南選手がチョウチンウドンセットという戦い。
全体トップで藤井選手が竿を曲げる。風裏側にまわり得意の浅ダナで一気にスパートするかと思われたが、以外のもそれ以降は上手くエサが合わず苦戦。
内田選手がポツポツと拾い、鳥居選手は予選と違って盛んに誘いをいれながらの待ち気味のスタイルに変更。途中で麩エサを加える手直しを盛んに行い、内田選手との一騎打ちかに思われた。
しかし、1時間過ぎからチョウチンの南選手が苦しむカッツケ組をしり目に盛んに竿を曲げ出す。業を煮やした藤井選手が最後のカケに出てチョウチンにスイッチしたが時既に遅し…。
13:40には全体第一号で南選手がフラシ交換。45分には鳥居選手も2フラシ目、そして終了間際の14:15には内田選手もフラシ交換し、検量まで結果が分からない大接戦。
結果的には枚数は勿論、型を揃えた南選手が2回目となる全国決勝大会の切符を手にした。

また、横取りの4位にはカッツケウドンセットを貫いた鳥居選手が唯一浅ダナでの全国決勝進出。

 

前日までの釣況ではカッツケ優位かと思われた今大会だったが、結果的に上位3選手はいずれも7尺チョウチンウドンセット。その中でも予選、決勝と変化するへらの活性に合わせて微妙に調整をしていった選手に軍配があがった。

終了間際にはあれほど荒れていた天候も回復。代表4選手には惜しみない称賛の拍手が送られた。

 

全国決勝大会進出4選手
1位:鈴木 千秋(NHC)
2位:石川 竜也(則六会)
3位:南 冶孝 (無名会)
4位:鳥居 裕輔


 

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