潮が引き、海面下に沈んでいた岩が徐々に露出してきた。「銀狼 冴」のショートロッドを駆使し、背後に崖が迫る狭い足場で黒鯛(チヌ)を連発した鶴原修さんは、岩だらけになった九十九島の磯をどのように攻略するのか。前回に引き続き、鶴原さんのクレバーな釣りをお届けする。

 

 

潮が徐々に引き

海底の岩が露出してきた。

 

 複雑に入り組んだ無数のワンド。「竜宮」はその奥に位置する波静かな磯である。朝イチはちょうど満潮であった。満ちきった海水が足場を覆い、ガケ下に少しだけ残された四畳半ほどの釣り座で、鶴原修さんは「銀狼 冴1号4.5m」を用いてキビレと黒鯛(チヌ)を釣り上げた。

 バックスペースが限られる狭い釣り座において、ショートロッドの効果は絶大であった。コンパクトなスイングで仕掛けを遠投し、軽快なロッドワークで黒鯛(チヌ)を取り込む。一般的な5.3mではここまで思い切って振り込めないであろうし、回収した仕掛けを手に取ろうと竿を立てようものなら、頭上に張り出した木の枝に道糸を引っ掛けてしまったかもしれない。

 正面の山から顔を出した太陽は、いつしか高くなっていた。潮が見る間に引いていく。ダラダラとカケ下がった海底が露出してくる。先ほどまでは沈み根だった大岩も釣り座が取れるまでになった。その先にはカキ殻がたくさん付着した岩が見える。

「釣り座がだいぶん広くなってきましたね。ここまで潮が引くと、ショートロッドにこだわる必要はないでしょう」

 鶴原さんはこう言うと「銀狼 冴1号4.5m」を仕舞い、ロッドケースから「銀狼 冴1号5.7m」を取り出した。銀狼シリーズでは「銀狼王牙AGS・藻切りスペシャル」と並ぶ最長尺アイテムである。

「ロングロッドの利点は多々ありますが、やはり長さを生かして足下の障害物をかわせることが大きいです。特にここのような釣り座の前に大岩がゴロゴロしている場所では心強いですね。あと、ハリスを長く取れるので自然なアプローチが可能になります。節が長いぶん、タメが効くのもいいですね」

 仕掛けはショートロッドのときと同じ。自立棒ウキと中通しの「銀狼 遠投Ⅱ」をローテーションで底付近を丹念に狙う。その結果はすぐに出た。

 

潮が引いて釣り座が広くなったのを機に「銀狼 冴1号5.7m」に竿を持ち替えた。

釣り座の前は大小の岩が点在している。長竿が最も活躍するシチュエーションだ。

自立棒ウキと中通しウキを使い分け、底付近を設定的に狙う。場合によってはハリスを底に這わせたりする。

 

 

5.7mの長尺を活かし

足下の障害物をかわす!

 

 湾奥特有の散漫な潮がわずかに振れた途端、棒ウキのトップが静かに海面下へ吸い込まれた。視線を鶴原さんに向けると、「銀狼 冴1号5.7m」が“つの字”に絞り込まれていた。

 そのやり取りは、文字どおりの「余裕」であった。ハリスは「タフロングレイトZカスタムEX」の1.25号。大型黒鯛(チヌ)狙いとしては決して太くはないが、5.7mの大きなストロークが生み出す弾力が魚の動きを見事なまでに封じ込める。釣り座の前に点在する沈み根も、少し竿の角度を変えるだけで楽に回避。鶴原さんが差し出す玉網に滑り込んだのは、40cmを軽くオーバーする良型の黒鯛(チヌ)だった。

「豊かな粘りと弾力はさすがにロングロッドですね。厄介な沈み根も楽にかわせました。取り回しのよさはショートロッドに敵いませんが、魚を取り込むことを考えると、竿は長いほうが有利ですね」

 この1尾でそこそこの達成感を得た。鶴原さんが次に狙うのは、やはり型のようだ。

「竜宮にチヌが入っているという読みは当たりました。ただ、これ以上の型が出ないようなんです。数はそこそこ出たので、午後からは違う磯に渡ってみましょうか」

 異論はない。一発大型狙いはこちらも望むところである。船長が見回りに来るのを待ち、湾から出た独立磯の「ウゲ島」へ磯替わりした。

 

大きなストロークと豊かな粘りがロングロッドの真骨頂。沖の深みから黒鯛(チヌ)を引きずり出す。

足下の根をかわせばフィニッシュまでもう少し。「銀狼 冴1号5.7m」の弾力が黒鯛(チヌ)の反撃を封じ込めた。

「銀狼 冴1号5.7m」の前に為す術もなく玉網へ導かれる。白銀の魚体が美しい。

 

 

上滑りする表層の潮をかわし

当日一番の大型をゲット!

 

 ウゲ島も潮が完全に引ききっていた。水際には大小の岩が露出し、そのうちのひとつに釣り座を構えた。足場が高いこともあって、鶴原さんは迷わず「銀狼 冴1号5.7m」を手にした。

「強い北西風が道糸を引っ張ってしまうんです。こんなときは長めの竿を使い、極力穂先を海面に近づけるといいですね」

 仕掛けを投入した鶴原さんの表情が曇った。

「潮が動いているように見えますが、強い風に押された表層の潮が滑っているだけです。下の潮は遅いですね」

 ここで鶴原さんはウキを「銀狼 遠投Ⅱ」の3Bにチェンジした。重めの中通しウキ仕掛けを用い、仕掛けがなじんだところで道糸を張って仕掛けの流れをセーブして、ウキの先行を抑えるという寸法だ。流しては止め、また流しては止める。付けエサを先行させて、底の流れに漂わせるわけだ。

 そしてこの日のクライマックスがやってきたのである。「銀狼 冴1号5.7m」が大きな弧を描いた。長いストロークでゆったりと寄せるやり取りは、どことなく優雅に見える。引かれたらタメる。突っ込まれてもタメる。この余裕のある粘りがロングロッドの真骨頂である。

 白銀の魚体が海面を割る。為す術もなく玉網へ導かれた黒鯛(チヌ)は、大きな飛沫を上げて最後の抵抗を見せた。50cm近い大型。ここで鶴原さんがようやく安堵の笑みを浮かべてくれた。

「2本の竿を使い分け、仕掛けも底へ這わせたり流れに漂わせたり、やれることはすべてやれた気がします。この1尾で満足です」

 この後、40cmクラスを1尾追加したところで納竿の時間を迎えた。これで落ちから続く寒の黒鯛(チヌ)シーズンも終焉を迎える。来る乗っ込みが楽しみだ。

 

 

午後からは独立磯の「ウゲ島」で竿を出す。荒い根をかわすため、鶴原さんは迷わず「銀狼 冴1号5.7m」を手にした。

潮が引き切ったウゲ島も釣り座の前は沈み根がゴロゴロ。やり取りはおのずとシビアになる。

穂先を海面に近づけて風の影響を抑える。足場が高い磯では長竿が圧倒的に有利だ。

重めの仕掛けを強く張り込んで本命を食わせた。足下の根を慎重にかわす。

50cm近い大型を仕留めてしてやったりの鶴原さん。表層の流れをかわして食わせた技ありの1尾だ。

根だらけのポイントで真価を発揮した「銀狼 冴1号5.7m」。藻が生い茂る春シーズンも活躍してくれることだろう。

落ちの黒鯛(チヌ)も、年が明けていよいよシーズン最終となった。今期の締めくくりとして、また来シーズンに向けての景気づけとして選んだ釣り場が長崎県の九十九島。今回は多彩な仕掛けワークで黒鯛(チヌ)を手玉に取る、鶴原修さんの釣行に密着した。

 

 

大小の島々と無数の入り江は

黒鯛(チヌ)の楽園。

 

 どこかで見たことのある風景だった。あたかも山上湖を思わせる穏やかな景色は、五島列島福江島の玉之浦湾、対馬の浅芽湾とも似ている。深い入り江、波ひとつない海、白い岩、水際まで覆い被さる木々の緑……。これらが織りなす荘厳な佇まいは、いかにも黒鯛(チヌ)場という雰囲気を醸し出していた。

 ここは長崎県佐世保市と平戸市にまたがる九十九島(くじゅうくしま)。島の総数は208とのことで、ちょっと船で見て回ったくらいでは地形が把握できず、自分が今どこにいるのかさえもわからない。複雑な地形は黒鯛(チヌ)にとって良質の棲処であり、カキなどの貝類をはじめとするエサも豊富。ここが周辺でも指折りの黒鯛(チヌ)場であることは、初めてここを訪れた僕にも容易に想像することができた。

 「シーズン最終の難しい時期なんですよ。周辺の釣況をひととおりチェックしてみたところ、九十九島が一番よさそうでした。狙いとする場所にチヌが入っていればいいんですけどね」

 こう話すのは福岡県在住の鶴原修さん。グレマスターズで2度準優勝したメジナ(グレ)釣りの名手であるが、黒鯛(チヌ)も得意としている。普段は地元で竿を出すことが多いが、時折長崎まで足を伸ばして黒鯛(チヌ)釣りを楽しんでいるとのことだ。九十九島は「THEフィッシング」のロケでも結果を出した釣り場だ。当日は北西風が強くなる予報。渡船をお願いした竹内商店(☎0956-28-2697)の船長と相談して、朝イチは風裏となる「竜宮」という磯で竿を出すことにした。

 ここは足場がダラダラと落ち込んでおり、30〜40m先にカキの養殖棚が設置されている内湾特有の地形。養殖棚あたりの水深は7m前後とのことだ。

 朝一番はちょうど満潮で、釣り座が取れそうな場所がほんの少し残されている程度。背後の崖からは木々が覆い被さっており、竿を振るバックスペースはほとんどない。仕掛けを投入する際は身体の真横からサイドスロー気味に振り込むしかないだろう。

 

九州北部の釣り場を中心としてアグレッシブに釣行を繰り返す鶴原修さん。誘いを多用した攻撃的な釣りを得意とする。

当日のコマセメニュー。集魚力や遠投性を備えたうえで、ムギやカキ殻など視覚にアピールする粒子が配合されているものが好み。

竿を出す前にポイントとおぼしき場所へ団子状にまとめたコマセを投入しておく。

広角レンズで撮ると広く見えるが、実際は背後に崖が迫っており足場は非常に狭い。長竿では仕掛けを手に取るだけでも難儀する場所だ。

 

 

バックスペースが狭い釣り座で

ショートロッドが威力を発揮。

 

 ここで鶴原さんが取り出したのは、今年追加ラインナップされたばかりの「銀狼 冴1号-45」。4.5mのショートロッドである。

 「短竿は取り回しのよさが魅力ですが、ここのように背後や頭上に障害物があって動きが制限される場所でも使いやすいです。5.3mだと竿を立てられず、回収した仕掛けを手に取るだけでも大変ですよ」

 普段は5.3mをメインとする鶴原さんであるが、この日は満を持しての短竿実戦投入である。リールは使い慣れた「銀狼LBD」。道糸は2月に発売予定の新製品、「銀狼ガンマ 1500(ワンフィフティ)」の1.65号、ハリスは「タフロングレイトZカスタムEX」の1.25号、ハリはチヌ2号を結んだ。ウキは試作品の自立棒ウキと「銀狼遠投Ⅱ」を使い分ける。

 手早く仕掛けをセットし、釣り座と養殖棚の中間点あたりにコマセを撒いて第一投を振り込んだ。エサは生オキアミ。潮は時折左右に振れる程度で、さほど動いてはいない。寒の時期らしくエサ取りも少なく、時々フグらしき魚がエサを取っていく程度だ。

 秋ほど忙しい釣りではないが、後方へ竿を振れない釣り座ではショートロッドの取り回しのよさが際立って感じられる。潮が引き、ダラダラ落ち込む足場が露出するまでは「銀狼 冴1号-45」の独壇場だろう。

 どうも魚の気配が感じられず、ワンド奥の釣り座に移動してすぐだった。ウキを一気に消し込むアタリでチャリコ(真鯛の幼魚)が釣れ、次のアタリでは「銀狼 冴」が重厚な引きをとらえた。

 「これはチヌですね。気持ちいい引きですよ」

 長竿のようなゆったりしたストロークはないものの、左右へクイックに切り返せるレスポンスはショートロッドならではの使用感だ。鶴原さんが差し出す玉網に滑り込んだのは、37〜38cmのキビレであった。

 「付けエサに怪しい反応があったので、コマセと仕掛けを合わせるタイミングを変えたんですよ。一発で食ってきましたね」

 黒鯛(チヌ)ではないものの、とりあえずキビレの顔を見られてホッとした様子である。

 

九十九島の日の出。まずは正面に見えるカキの養殖棚との間にポイントを定めた。

バックスペースが狭い釣り座で威力を発揮するのがショートロッド。取り回しも非常に軽い。

満ち潮で釣り座が狭かった朝イチに使用した「銀狼 冴1号-45」。動きが制限されるなかでもストレスなく仕掛けを投入できた。

リールは愛用の「銀狼LBD」。ハイギアとコンパクトな50mmマシンカットハンドルのコンビネーションは、手返しの早い秋の釣りから一発大型狙いまで対応する。

ハリスはソフトタッチのフロロカーボン「タフロングレイトZカスタムEX」の1.25号を使用。ハリスを底に這わせるときは、ナイロンの「スペクトロングレイト タイプN」を半ヒロほど結び足すこともある。

仕掛けを斜めに張って落ち込みのアタリを取ったり、無段階に仕掛けを入れ込んでハリスを底に這わせたいときに使うのが「銀狼遠投Ⅱ」。00号を全遊動にして使用した。

コマセと仕掛けを合わせるタイミングを変えたところでアタリがきた。レスポンスのよいショートロッドの曲げ心地を味わいながら魚を浮かせる。

「銀狼 冴1号-45」を気持ちよく曲げてくれたのは37〜38cmのキビレであった。幸先のよいスタートである。

 

 

ハリスを底に這わせた誘い釣りで

良型黒鯛(チヌ)を連発!

 

 黒鯛(チヌ)釣りは地域により、また釣り人によって多様な理論が存在する。コマセと仕掛けを同調させなくても食うとする人がいれば、常に同調させることを是とする人もいる。頻繁に誘いを入れる人がいれば、付けエサを一切動かさない人もいる。

 「僕は常に仕掛けとコマセを同調させることを心掛けています。そして誘いはかなり入れるほうですね。コマセの中でいかにしてチヌに付けエサを見つけてもらえるかを考えています」

 秋は浅ダナに見える個体を狙うこともあるし、厳寒期は海底にハリスを這わせて底に落ちたエサをついばむ個体も食わせる。点で打ったコマセに縦の落ち込みで仕掛けを合わせることがあれば、帯状に巻いたコマセの中で仕掛けを引っ張ってくることもある。特にこの日はハリスを這わせる釣りが目立った。

 鶴原さんが棒ウキを好んで使う理由もここにある。海中の情報がトップの動きに表れる棒ウキは、ハリスに打ったガン玉が着底した様子を把握しやすいのである。ただし、仕掛けを落とし込む途中で出るアタリを取るときや、仕掛けを張って止めたいとき、無段階に仕掛けを流し込みたいときなどは中通しウキのほうが有利。したがってこの日も、棒ウキの遊動仕掛けと中通しウキの全遊動仕掛けを頻繁に取り替えていた。

 食いが今ひとつと判断した鶴原さんは、フロロカーボンハリスの先に半ヒロほどナイロンの「スペクトロングレイト タイプN」を結び足した。ハリス自体は底に這っているものの、付けエサはフワフワと漂わせる寸法である。これならば黒鯛(チヌ)もエサを吸い込みやすいはずだ。

 結果はすぐに出た。40cm級のキビレを追加した後、本命の黒鯛(チヌ)を連発したのである。

 「時々、極小のシモリウキをナイロンハリスの結び目付近にセットして、付けエサを浮かせたんです。うまくいきましたね」

 釣れた魚のすべてが誘って食わせた技ありの釣果だ。まさに攻めの釣りなのである。

※次回に続く

 

 

誘いによって付けエサを動かす鶴原さんは、とにかくマメにガン玉を打ち替える。

鶴原さんがパターンをつかんだ。入れ食いとまではいかないまでも、口を使い始めるとパタパタッと食ってくる。

40cm級のキビレを追加。あとは本命の黒鯛(チヌ)を食わせたいところ。

やがて食ってきた黒々とした本命。痩せた魚体ながら42〜43cmはある。途中経過としては十分すぎる1尾だ。

釣り場の美化と保全は釣り人の意識にかかっている。鶴原さんはゴミをまとめてきちんと持ち帰っていた。

 

 

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