闘う男達へ。 新トーナメント・誕生前夜② 長崎県/五島列島

秋磯カタログがリリースされ、いよいよ新「TOURNAMENT」の全容が明らかになってきた。今回は前回に引き続き、五島列島の福江島で行った新「TOURNAMENT」の最終テストの模様をお届けする。ダイワ磯ロッドの歴史を知る名手は、新たなる最高峰に何を思うのか……。

 

 

トーナメントの歴史を創った

東西の雄に密着。

 

この日も穏やかな日和に恵まれた。長崎県・五島列島福江島。「トーナメント ISO AGS」の最終テストは2日目もスムーズに執り行えそうである。都丸(☎090・9888・1143)が舳先を着けたのは平瀬。嵯峨ノ島周りでは屈指の名礁であり、60cm級の尾長が出た実績もあるそうだ。いやがおうにも期待が高まる。

 平瀬に下りたテスターは、前日のハードな撮影から解放された鵜澤政則、山元八郎の二氏に岡田建治さんを合わせた3名。関東メジナ界のスーパースター・鵜澤さんと阿波の天才・山元さんは、30年以上もロッド開発に携わってきた東西の重鎮であり、いわば「TOURNAMENT」の歴史を創ってきた人物ともいえる。愛娘にも等しい新トーナメントをどう評価するのか、興味があるところだ。

 前日はカタログ撮影でまともに竿を出せなかったが、この日は撮り残しが数カットあるだけで、その後は自由に釣りをしていただくことになっている。みんな気心知れた仲であり、磯での雰囲気はまさに和気藹々だ。

 3人が手にしていたのは「トーナメントISO AGS1.5号-53」。ほぼ製品レベルの塗装が施された最終プロトである。

「ここは尾長のデカイのが出る場所だからね。新しい『TOURNAMENT』をこれでもかってくらい曲げてみたいね」(鵜澤)

「潮もええ感じに流れてますし、大きいグレが出そうですね。『TOURNAMENT』の実力を試すには最高の条件やないですか」(山元)

「今日は大先輩と一緒ですから邪魔にならんように頑張りますよ(笑)」(岡田)

 みなさんのモチベーションは高いようである。

 さて、前回レポートから1ヶ月が経ったいま、秋磯カタログのリリースを受けて新たに公開された新「TOURNAMENT」の情報がある。詳しくはカタログのほか弊社ホームページの「磯NAVI」でも紹介しているが、そのなかで最も特筆すべき新テクノロジーが「粘靱ブランクス」と「新型AGS」の2つだ。今回のレポートでは、「TOURNAMENT」を創生期から育ててきた鵜澤さんと山元さんの釣りを通して、二氏が感じた新「TOURNAMENT」の使用感をお伝えしたい。

 

この日は歴代「TOURNAMENT」の開発に携わってきた山元八郎さん(左)、鵜澤政則さん(右)と同磯した。手塩に掛けて育てた新「TOURNAMENT」の仕上がりをどう感じるのだろうか。

渡礁したのは嵯峨ノ島周りの「平瀬」。ご覧のように足場が非常によいうえ、60cmオーバーの尾長が釣れた実績のある一級磯である。

 

 

関東メジナ界の重鎮

鵜澤政則が新トーナメントを斬る!

 

 潮は沖に向かって右へ流れる上げ潮。上物の好潮である。鵜澤さんは磯の先端に釣り座を構え、潮スジをダイレクトに攻める。仕掛けはウキ止めを付けない全層スタイル。いわゆる全遊動であるが、タナを探るためにウキ止めを付けないのではなく、潮なりに仕掛けを流し込むための全遊動だ。

 50m、70mと仕掛けを流していくとガツンと穂先が持ち込まれる。はじめは30cmにも満たない小型だったが、コマセが効き始めると徐々にサイズアップ。その後はほぼ入れ食いのペースだ。

 こうなると、どのスジを流し、どこでコマセと仕掛けを合わせるかだ。仕掛けとコマセの投入点をずらしながらメジナ(グレ)の出方をうかがい、昼前には40cm強の口太を食わせた。

「まぁこのくらいの口太が出ればOKだね」

 こう言って鵜澤さんが竿を置いたところで、新トーナメントの開発コンセプトについて聞いてみた。

 「『TOURNAMENT』ってもともと、その名のとおり競技会で勝つために作られた竿だったんだよ。掛けた魚を早く取り込むため、細身で軽く、張りを強くすることで、魚をスピーディーに誘導して浮かせること。大まかであるけど、これが進化の歴史だった。しかし新『TOURNAMENT』は、強い張りで魚を誘導するのではなく、竿を曲げることで魚を怒らせず、結果として早く取り込める竿を目指したんだ。スーッと気づかないうちに魚が浮かされて、玉網に入った途端に暴れるような竿だね」

 そんな調子を作るために開発されたのが「粘靱ブランクス」であり、細身肉厚設計だ。2〜3番節にやや張りを持たせ、4番節を軟らかめに設定した新「TOURNAMENT」。今回のテストでは狙った調子を出せたのか。

 「納得だね。竿の調子はすごくデリケートで、プロトモデルで調子が良くても塗装を1枚被せただけで変わってしまうんだよ。今回は狙ったとおりの調子を出せたんじゃないかな」

 モノ作りにはうるさい鵜澤さんも新「TOURNAMENT」の仕上がりには満足げである。

 

歴代の「TOURNAMENT」やVIPを手掛けてきた鵜澤政則さん。製品をチェックする目は真剣そのもの。

竿を曲げた際に絞り出される粘りで、魚を怒らせずスピーディーに取り込むのが新「TOURNAMENT」の真骨頂だ。

 「玉網に入れてから魚が暴れる竿を作りたかったんだよ」という鵜澤さん。竿から伝わる振動や不要な反発が魚を怒らせるのである。

竿を矯めているだけで魚がスーッとついてくる。パワーがあるだけの竿ではこうはいかない。

40cmクラスの口太を釣り上げご満悦の鵜澤さん。「狙ったとおりの調子だよ。まだ大きいのが食っても大丈夫だね」

 

 

阿波の天才・山元八郎

電光石火の早業が冴える!

 

 山元さんは鵜澤さんよりやや奥まった釣り座から竿を出した。奥まっているとはいえ、本流に引かれる潮はなかなかのトルクがある。山元さんは、なるほどウキ止めを用いた遊動仕掛けと2段ウキ仕掛けを使い分け、次々にメジナ(グレ)を引き出していく。

 海面を細かく区切って華麗なコマセワークでエサ取りと本命を分け、1cmでも長く、1gでも重いメジナ(グレ)を食わせていく釣技はいつ見ても見事だ。取り込みも実に素早い。限られた時間内で釣果を競う競技会で培われた技術は、ここ五島列島でも遺憾なく発揮された。

 「新しいトーナメントは、グッと矯めたときに手元からよう曲がるんですよ。ただ曲がってから弱いんでなしに、そこからグッと粘って魚をスーッと浮かせてくれるんです。曲がるけど強い。これが一番の特徴ですね。魚が暴れずスーッと上がってくるんで、取り込みは早いですよ。あと細身なんで、風が強いときでも振りやすい。きちんと振り切れるんで、小さいウキでもよう飛んでくれますね」

 プライベートの釣行では大型のカツオやアオブダイを掛けたとのことだが、矯めているだけで寄せることができたほか、大きく曲げ込んでも粘りが失われないので、ハリスが切れる気がしなかったとのことだ。

 「競技モデルも従来の『TOURNAMENT』よりも胴に入る調子です。スタンダードモデルに比べるとややバットに張りがある感じですね。これはSMT(スーパーメタルトップ)が搭載されているので、とにかく感度がいいんです。特に口太釣りでは根の近くを狙うことが多いのですが、ハリスが根に当たった感触が鮮明にわかるので、糸を緩めるなどすぐ継の対処に移れるのがいいですね」

 あと、リングの内面積を約30%アップさせた新型AGSの効果も絶大なのだとか。

 「最初はリングの内面積が大きくなったことを知らんと釣りよったんですよ。釣ってるうちに何やら糸がよう出るなと思ったら、このガイドのせいやったんですね。特に僕はヒゲを長く出した“なるほどウキ止め”を使うでしょ。ガイド径が小さいとヒゲが引っ掛かるんで、これはありがたいですね」

 そうこうしているうちに、山元さんは42〜43cm級の口太を仕留めてしまった。口太としてはまずまずの型であるが、「トーナメントISO AGS1.5号-53」のパワーをもってしてはやや物足りないサイズ。曲がりもまだまだ余裕を残していた。

 東西の重鎮も太鼓判を押す新「TOURNAMENT」の仕上がり。もう間もなく手に取って確かめていただけるようになるだろう。

 

阿波が生んだ天才釣り師・山元八郎さん。競技会で数々の金字塔を打ち立てた現役トーナメンターでもある。タックルに対するこだわりも人一倍。

竿出し直後から次々に竿を曲げる山元さん。取り込みは非常に素早い。

「新『TOURNAMENT』はよう曲がるんやけんど、弱いやなしに粘るんよね」。全節が機能して淀みのない弾力を生み出すのが新「TOURNAMENT」である。

目測で42〜43cmの口太。竿の角度を一定に保ち、矯め込んだ曲がりをキープしているだけで素直に浮いてきた。

鵜澤さんが山元さんのやり取りを観察。気心知れた仲。磯の上の雰囲気は終始和やかだった。

岡田建治さんは一番奥まった場所で竿を出した。初夏にもかかわらずカタログ撮影のために防寒ウエアを着ての撮影。テスターとは過酷な仕事なのである。

 

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