技では獲れない魚を獲りにいく! 銀狼インプレッション【後編】 山口県/下松

地方の磯で食いの渋い黒鯛(チヌ)を仕留めた後、さらなる大物を求めて磯替わりをした。ここでロッドケースから取り出したのは、数ある黒鯛(チヌ)竿の中でも最も指向性を際立たせた1本だ。前回の『銀狼冴』に引き続き、新たなるアイテムのインプレッションをお届けしよう。

 

 

 

 

日が高くなった午後からは

磯を替わってさらなる大型を狙う!

 

 つい数日前まで北西風が強く吹き付けていたらしいが海はすっかりナギとなり、渡船は笠戸湾を抜けてやや開けた磯に我々を下ろした。「竜宮岬の西」という場所である。

 前回は笠戸島の地磯「夕陽岬の下」での釣りをお伝えした。日本列島をすっぽり覆った寒波のせいか海は一気に冷え込み、黒鯛(チヌ)の活性は低かった。感度のよい棒ウキを使い、下を向いてエサを食ってハリに掛けにくい魚をどうにか食わせたものの、その後に好転する気配も感じなかったため、昼前に磯替わりをした次第である。

 とはいいながも、新製品である『銀狼 冴』の持ち味は十分に感じ取ることができた。余分な反発を抑えた調子は弾力の調整幅が広く、多様な仕掛けに対応してくれる。価格帯はミドルクラス、あるいはエントリークラスに位置する製品ではあるが、『銀狼』にも『銀狼王牙AGS』にもない独自の調子は、純粋に黒鯛(チヌ)竿として素晴らしい。テスターである木村公治さんは、こう絶賛した。

 そして午後の部である。ここで木村さんがロッドケースから取り出したのは、ダイワ黒鯛(チヌ)ロッドの最高峰である『銀狼王牙AGS』の追加アイテム1.25号-57。ペットネームを「藻切りスペシャル」という。この竿は、同時に追加発売となった『銀狼王牙AGSビッグワン53』とともに、大型を獲るために開発した剛のアイテムである。詳しくは「磯NAVI」の2016年3月アップ分をご覧いただきたい。

 さて、これまでの黒鯛(チヌ)竿といえば、魚を取り込めるパワーを備えながらも、やり取りを楽しむための趣を重視したものがほとんどであった。取り回しを重視した競技仕様、大物を意識したパワートルクといったアイテムも過去にはあったが、「藻切りスペシャル」や「ビッグワン」ほど巨チヌ狙いに特化した仕様は、ダイワの長い歴史の中でも初めてではないだろうか。

 「ビッグワン」は、文字どおり五島列島や宿毛といった大場所で60cmオーバーを獲るための竿であり、瀬戸内ではかなりのオーバースペックといえる。その点「藻切りスペシャル」は、全国の各所で活躍するであろう竿だ。木村さんはこの竿に、どんな印象を持っているのだろうか。

 

午後からの釣りで登場したのが『銀狼王牙AGS1.25号-57/藻切りスペシャル』。障害物周りで威力を発揮するパワーアイテムだ。

 「竜宮岬の西」から東方面を見る。オープンなポイントでどこからでも黒鯛(チヌ)が入ってきそうである。

 

 

黒鯛(チヌ)の気配が濃厚。

俄然、集中力が高まる!

 

 「藻切りスペシャルという名前のとおり、海藻の奥で食わせた魚を強引に引きずり出すパワーを備えていますが、僕が気に入っているのはコントローラブルな点ですね。魚を誘導しやすいんです」

 「藻切りスペシャル」はグイッと大きく曲げて魚を誘導できるだけでなく、竿の長さを生かし、竿先をちょこんと曲げながら藻場やハエ根をかわせるのだという。木村さんはこの釣り方を“ラジコン釣法”と呼んでいるそうだ。季節柄、まだ藻が生い茂っているというほどではないが、足下の根が少々張り出している。うまいこと魚が食ってくれれば、木村さんのラジコン操作が見られるはずである。

 潮はゆったりと左方向へ流れているようだ。最初に投じた仕掛けを回収するなり木村さんがこう呟いた。

 「何か気配を感じますよ」

 木村さんの海の感じ方は、僕のような凡人には理解できないものがある。「海が道糸を欲しがっている」という得意フレーズはその典型。ようは底潮が動いていて、深く入れた仕掛けがグイグイ引っ張られていることをそう形容しているわけだが、これはまだわかりやすいほう。木村さんは何を感じて「気配」とするのか。これは端で見ていてもまったくわからないものが大半である。

 ここまで言っておいて釣れなければただの人であるが、木村さんの凄いところは、気配を感じた後にほぼ黒鯛(チヌ)を釣ってしまうことだ。月並みな言葉でいえば「動物的な勘」となるのだろうが、この日もジンクスは破られなかったのである。

 鋭い風切り音が聞こえたかと思うと、「藻切りスペシャル」が大きな弧を描いていた。隣でビデオカメラが回っていたため、1尾目はまず慎重に取り込んでいただく。40cmクラスの立派な黒鯛(チヌ)である。しかし「藻切りスペシャル」にはまだまだ役不足。サイズ的にはもうひと声欲しいところである。

 

「藻切りスペシャル」を伸ばす木村公治さん。巨チヌ狙いに特化したロッドだけに、これでしか成し得ない技があるのだという。

ウキは全幅の信頼を寄せる『銀狼遠投Ⅱ』。全遊動で深く入れ込んだり、半遊動の沈め釣りで潮の中を泳がせたりと多彩な攻めが可能だ。

黒鯛(チヌ)の気配を感じるやいなや『藻切りスペシャル』が大きな弧を描く。木村さんの動物的な勘が冴え渡る。

1尾目は40cmクラスの良型。ここから怒濤の連発劇が始まった。

 

 

足下のハエ根など何のその。

長尺と粘り腰で強引をねじ伏せる!

 

 それからはもう木村さんのパターンだった。やや間隔を空けながらも37、38cmの中型から40cm台前半をコンスタントに釣り上げていく。5.7mの長竿は食わせてからのやり取りを優位に展開できる。胴の粘りも見事だ。多少突っ込まれてもグイッとひと矯めするだけで走りが止まり、曲がった後の起き上がりだけで魚の向きを容易に変えられる。

 「掛けた後だけでなく、食わせるまでも銀狼王牙AGSはいいですよ、穂先の止まりが早いので、シュッとフリップして道糸を送り出した後も即座に“静の状態”を作れるんです。静の状態、つまり小さな変化も感じ取れる状態です。あ、潮の押しが強くなったなとか、アタリ以外の情報もつぶさに感じ取れるので、次の手を早く打てるんですよ」

 この次に食わせた1尾では、木村さんが提唱するラジコン釣法をデモンストレーションしてくれた。竿先を少しだけ曲げた状態で、ちょうど棒の先にチョウチンをぶら下げるような格好で魚を誘導してくるのである。

 さほど竿を曲げておらず魚に掛かるテンションは小さいので、食わせた黒鯛(チヌ)もおとなしくついてくる。これがただ軟らかいだけの竿だとその場に魚が浮いてくるだけで誘導まではしにくいが、「藻切りスペシャル」は少し曲げるだけでも微かな弾力が効いている。また尺が長いぶん曲がりの支点を沖に設定できるので、魚を上方へ吊りやすい。この釣り場はハエ根が出ているといってもさほど手を焼くレベルではないが、これが竿一本以上張り出している場所であったり、春先など磯際に海藻が生い茂っているような状況下では、「藻切りスペシャル」のコントロール性がグッと生きてくるはずである。

 それからも木村さんの独壇場は続く。釣れた黒鯛(チヌ)の数も、5尾目以降は数えるのが面倒になって忘れてしまうほどであった。特大スカリの編み目が破れていて3割ほど釣果が目減りするというトラブルはあったものの、午後の釣りは非常に内容の濃いものになった。

 

 パターンにはまった木村さんは、これでもかと竿を曲げまくる。ひと矯めで黒鯛(チヌ)の走りを止めるパワーは見事だ。

 いい黒鯛(チヌ)である。50cmオーバーは出なかったものの、40cm前後の数釣りを楽しんだ。

これがラジコン釣法。竿先を少し曲げ、魚を上方へ吊るような感じで誘導してくる。

「藻切りスペシャル」のパワーに根負けした黒鯛(チヌ)が海面に横たわる。白銀の魚体はいつ見ても美しい。

穂先の止まりが早く、静の状態を作りやすいのは軽量のAGSの恩恵。おのずと集中力も高まる。

スカリの編み目が破れて何尾か逃亡されたものの、釣り頃サイズが数揃った。これだけ釣れれば納得だ。 

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