丹羽正のシーズン前哨戦 南伊豆の磯でニュータックルを検証 静岡県/南伊豆妻良

ときは晩秋。いよいよ寒シーズンへ向けてのカウントダウンが始まった。今年はどこを攻めようか。惜しくも逃がしたアイツをどのように仕留めようか。釣り人はそれぞれの思いを胸に、来る決戦のときを待つ。そんな11月の南伊豆に、こだわりの新タックルを携えた名手の姿があった。氏の分身ともいえるロッド、そしてスプール。今回はその使用感とポテンシャルを検証する。 

 

 

 

 

なぜ口太専用設計か。

丹羽正が“俺我”にこだわる理由。

 

 「使うハリスの号数によって多少調整はするけどよ、俺はあんまりドラグにはこだわらないんだよな。でも、ないよりは付いていたほうが安心だよ。昔はドラグ付きスプールを改造してLBに付けていたくらいだもの。それでよ……」

 静岡県、東伊豆河津町の国道135号線沿いにある「FMサバル」。草木も眠る深夜にそこだけは煌々と灯りがともり、活気に溢れていた。

 自身のタックル論を熱く語る主は、ここの店主であり、古くからダイワのフィールドテスターを務める丹羽正さん。今回はこの秋に発売となった「オレガ口太57」、そしてオプショナルの「RCS ISOスプール口太」を携えての釣行。上物以外にも多くの釣りに精通する丹羽さんである。これが秋に入って初めての上物釣りとのことだ。

 ボクの勝手な希望としては、口太スペシャルの5.7mというコンセプトが打ち出されるキッカケとなった入間に向かいたかったのだが、今年はまだメジナ(グレ)の釣況が芳しくないとのこと。「何か起こるとしたらココしかないかなぁ」と丹羽さんが選んだのが隣の妻良地区であった。

 釣り場へ向かう車中では、オレガ口太スペシャルの誕生秘話を聞く。

 「とにかく、タメているだけで50cmの口太を獲れる竿が欲しかったんだよ。入間に赤島っていう磯があるんだけど、そこのテラスという釣り座は足下が大きく掘れているんだよ。ここに突っ込まれるとなかなか獲れない。そこで5.7mという少し長めのレングスにしたんだよ」

 RCSの口太スプールも、今回で4代目となる。

 「2号よりもちょっと細く、1.75号よりもちょっと丈夫。1.85号という道糸の号数設定はオレが考えたんだけど、当時は奇抜な号数も今では普通に使われるようになったよね。この1.85号を150mピッタリ巻けるスプールが欲しかった。これが口太スペシャルスプールだよ。2号だと140m巻きで、150mの製品でも10m余る程度、1.65号もダイワではスプールに合わせた170m巻きの製品が出ているので、口太狙いに使いやすいスプールだと思うんだよね」

 同時に発売された尾長スペシャルスプールは3.25号200m巻きだが、離島でよく使われる4号も160mと、少し下巻きをするだけで使える。まさに痒いところに手が届いたスプールであるといえる。

 4代目となる口太&尾長スプール。従来との大きな変更点は、ATDというドラグにある。

 「ATDがどんなドラグかは聞いているんだけど、実のところ、オレはあまりドラグは使わないんだよ。ハリスの号数によって多少はいじるけど、やり取り中にドラグで糸を出すことは考えていないんだよ」

 丹羽さんがこだわったのは1.85号を150m巻けるというサイズであり、ドラグに関してはどちらかといえば消極派であるのかもしれない。そんな丹羽さんが今日の釣りで何を思うのか。ちょっと楽しみではある。

 

 

 稀代の大物師である丹羽正さん。竿、道糸、スプールの3点でコーディネートする「OKシステム」は、氏の提案から始まった。

 「オレガ口太57」、とオプショナルの「RCS ISOスプール口太」は最新の口太用OKシステム。細部に手を入れてさらに進化した。

 

 

 

ベタナギの南伊豆。

妻良の超一級磯に渡礁す!

 

 風は北東の微風。寒の時期にはめったに出会えないベタナギであった。今回お世話になったのは五兵衛丸(☎0558・67・0625)。数人の釣り人を磯へ渡した後、船長から「一ッ根(ひとつね)に行ってみますか」との薦めがあった。断る理由はない。なぜなら、一ッ根は年に何度も乗れない一級磯であるからだ。渡礁してみると、石廊崎方向への惚れ惚れとするような下り潮が通していた。

 「潮が速ぇなぁ。ひょっとしたら尾長が出るかもしれないぞ」

 丹羽さんがロッドケースから取り出したのは、もちろん「オレガ口太57」。これに「トーナメントISO3000SH-LBD」をセットし、この釣行のメインアイテムである「RCS ISOスプール口太」を装着した。道糸は「アストロン磯ガンマ トリプルテン1.85号」、ハリスは「タフロングレイトZカスタム1.5号」、ハリはグレ7号を結んだ。仕掛けは「プロバイザーOK-スペックM-0号」を用いた全遊動。これは丹羽さんが本流狙いで多用する仕掛けだが、これは深く仕掛けを入れ込むための全遊動ではない。目的は「流れなりに流し込むこと」にあり、潜り潮で遊動が入ることはあっても、メジナ(グレ)の食い筋を自然にトレースするための全遊動仕掛けである。

 手早く準備を済ませた後の第1投、なんとこれに最初のアタリがきた。しかしこれは明らかに体勢が不備であった。ボクと無駄話をしていたこともあり、完全に後手へ回ってしまった。何とか体勢を立て直そうとする丹羽さんであったが、獲物の正体を確かめるまでもなくラインブレイク。足下にちらほらと50cmを楽に超えるイスズミが見えており、これではないかと言ったものの、稀代の大物師である丹羽さんは納得しない。外道であっても取り込まなければ許せない。自分に対して厳しいのである。

 そんな意表を突く幕開けではあったものの、その後はイサキやソウダガツオがポツポツ釣れ、本命のメジナ(グレ)も数尾足の裏サイズを食わせた後に、この時期にしてはまずまずといえる30cm台半ばの口太を取り込んだ。

 

 妻良の一級磯「一ッ根」。無理をしても2名が限界の小さな磯である。妻良地区で最も沖に位置しており、潮通しは群を抜く。

 竿出し直後からアタリは多かった。「オレガ口太57」が美しい曲がりを見せるが、30cm台の口太やソウダガツオではまだまだ役不足。

 まずまずのイサキが食ってきた。こればかりでも困るが、1尾も釣れないと寂しくなる伊豆半島の名脇役である。

シーズン初期としては良型といってもよい30cm台半ばの口太。朝イチのバラシは悔やまれるが、この時期はこのサイズでよしとせねばなるまい。

 

 

 

基本的にドラグには頼らない。

でも優秀なドラグは頼もしい。

 

 「オレガ口太57」がいい曲がりを見せている。ちょっと持たせてもらったが、5.3mより40cmも長い5.7mでありながら、持ち重りはほとんど気にならない。

 「リールシートの位置はかなり気を遣ったんだよ。あまり竿尻側へ寄せてしまうと持ち重るし、かといって前に寄せたら長さを活かせないからさ。前作から最も変わっているのは3番節から4番節だね。ここを前作からやや軟らかくしてるんだよ。全体的なパワーは変わらないんだけど、バットが軟らかくなっているぶん、掛け調子がマイルドに感じられるかもしれない。でもパワーはあるよ。ハエ根の際でデカイのを掛けても、自信を持ってタメきれるね」

 そして「RCS ISOスプール口太」についてである。

 「確かに以前のUTD(アルティメットトーナメントドラグ)からの変化は感じるな。ちょっと大きめのソウダガツオが食ったときはチーッとスムーズに道糸が出ていったもんな」

 その後の雑談を要約するとこうなる。LBはあくまでレバーによる逆転でやり取りを行うリールであり、丹羽さんは基本的にドラグは頼らない。ハリスの号数によって締め具合を調整するものの、ボクが確かめた限りでは「目いっぱいタメたときに滑る」というよりも、「目いっぱいタメても滑らないギリギリ」くらいのドラグセッティング。不意の突っ込みに襲われて竿の角度が悪くなったり、ローターを逆転させて竿を起こし、レバーを絞り上げたときにジッとわずかに滑る程度であったように思う。

 ところが、従来の感覚でセッティングしたドラグが、良型のソウダガツオの引きで滑り始めた。締め具合が同じなのに滑ったということは、おそらく今までのドラグは滑り始めるまでにわずかな食いつきがあり、設定値よりも強い負荷が掛からないと道糸が出なかったのではないだろうか。仮に今回のドラグ設定が緩すぎたのであればいつまでもラインの出が止まらず、なかなか魚を取り込めなかったはずである。しかし、ソウダガツオがある程度走ったところでドラグの滑りが止まったということは、ATDが滑るべきところでは滑り、止まるべきところでは止まる理想的なドラグである証明といえないだろうか。

 基本的には頼らない。しかし、人間の感覚では対処できない不測の事態にはしっかり滑ってくれるドラグは頼もしい。「やり取り中にドラグを滑らせることは考えない」としながらも、LBにドラグは付いていたほうがよいというのが丹羽さんの考えである。そういう意味では、今回の「RCS ISOスプール口太&尾長」は、より丹羽さんの理想に近づいたといえるだろう。

 

 AGSを搭載して一新した「オレガ口太57」。全体のパワーを変えずにバット部分をやや軟らかく設計しており、掛け調子はトルクフルながらもマイルド。思い切ってタメることができる。

 ATDが組み込まれた新生「RCS ISOスプール口太」。いざというときに頼りたいからこそドラグは優秀であるべきなのだ。

 ギュッと竿をタメてもギリギリ滑らない程度が丹羽さんのドラグ設定。これでもATDなら急激な負荷に対してはスムーズにラインが出る。

 丹羽さんの代名詞ともいえる「プロバイザーOK-スペック」。仕掛けがなびく方向へ素直に傾く高重心仕様である。

 「ソウダが走るとスムーズにドラグが滑るんだよなぁ」と丹羽さんはATDの出来にご満悦。青物など一本調子の強い引きに対してはドラグを積極的に使ったやり取りもおもしろい。

 

 

 

移動した地方の磯で

イサキの数釣りを堪能。

 

 そうこうしているうちに、海の様子が変わり始めた。アタリ自体はあるのだがハリ掛かりしない。合わせのタイミングを変えてみたり、前アタリの後に仕掛けをやんわり張ったり送り込んでもダメ。フリーのゼロウキが引き込まれるアタリでも乗らない。ちょうど波が上がってくるようになってきたので、このタイミングで磯替わりすることにした。移動したのは「トヨギ」。一ッ根とは打って変わり、地方の奥まった所に位置する磯である。

 ここではイサキが活発にウキを引き込んでくれた。表層ではソウダガツオが小魚を追い回している。寒メジナ(グレ)には程遠い雰囲気だが、秋磯の延長として考えれば楽しい。

 丹羽さんは朝一番のバラシがかなりこたえている様子であるが、寒シーズンはまだまだこれから。新たなるオレガをたわわに曲げた丹羽さんの大勝負を、いずれこの目で見てみたいものである。もちろん、50cmオーバーの口太が足元に横たわった姿も……。

 

 

 地方に位置する「トヨギ」。大きいわりに釣り座は少ないが、寒シーズンにおけるメジナ(グレ)の穴場として知られる所だ。

 トヨギではイサキがコンスタントに釣れた。11月とはいえ、まだまだ海の中は初秋なのである。

 自分が出したゴミは必ず持ち帰る。丹羽さんの場合、コマセは店で作ってしまい磯へは極力ゴミを持ち込まないようにしている。

  

 

カテゴリ

2015年12月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31