信仰の島での瀬泊まり2Days、新感覚の底物釣りを堪能!福岡県/宗像沖ノ島

いかなる釣りにも様式美なるものがある。一日に幾度もないアタリを待ち続け、夢の大物を追い続ける底物釣り。かつては磯釣りの最終到達点とも呼ばれた孤高の釣りであるが、ストイックなイメージを持たれがちなせいか、ビギナーにとってはいささか敷居の高い釣りと思われている節もある。もっと気楽に、もっと自由に底物釣りを楽しみたい。九州を代表する底物師・柳孝治さんが、2本の武器を携えて「神の島」に下り立った。 

 

 

 

 

 

2015年の春イシダイは

不安定な天候との戦いで幕を開けた。

 

 5月の連休を過ぎると、渡船に乗り込む釣り人にちらほらと底物師が目立ち始める。上物師の姿が周年途切れることのない近年であるが、晩春から初夏にかけては石物がアツイ季節。ここからクエ(モロコ、アラ)などの大物狙いが活況を呈し、やがて秋の石物最盛期へと続く。

 底物シーズンが開幕した5月の半ば、九州は福岡県在住の柳孝治さんと連絡を取り、瀬泊まりで2日間にわたって大物を狙おうという計画を立てた。しかし、まだ梅雨入り前だというのに前線が日本列島の南に居座り、我々のオイシイ釣行を邪魔し続けたのである。とっておきの週末を二度、三度と見送り、ようやく宗像沖ノ島へ向かう渡船に乗り込めたのは6月の半ばに差し掛かろうという時期であった。

 「2日目にパラッと降るかもしれんけど海が荒れることはないけん、目一杯遊べるやろうね」

 2日ぶんのエサにマキエ、我々の食料と野営道具、そして柳さん自慢の自炊道具一式で、荷物は単身者の引越並みのボリュームである。大漁屋(☎0940・62・0248)の「ハピネスⅢ」号は、沖ノ島の属島である小屋島の「西のハナレ」で我々を下ろしてくれた。ここは上物、底物とも実績のある一級磯とのことである。

 宗像沖ノ島は、玄界灘に浮かぶ絶海の孤島である。島全体が御神体であり、宗像大社沖津宮が祀られた信仰の島として名高い所だ。今もなお女人禁制で、男性であっても一般には5月27日に開かれる現地大祭の日にしか上陸できない。ただ、釣りに限っては本島周りとその周辺のハナレ磯に渡って竿を出すことができるのである。こんな話を聞くと、何となく厳かな気持ちになってくるから不思議だ。

 

 九州を代表する底物師である柳孝治さん。今回は瀬泊まり釣行をパーフェクトにコーディネートしてくださった。

 玄界灘に浮かぶ信仰の地・宗像沖ノ島。その姿は実に神々しい。

  沖ノ島の属島である小屋島の「西のハナレ」全景。先端は上物の実績場で、底物はやや手前がポイントとなる。

 

 

 

釣行初日の日中は

ライトタックルでの石鯛狙い。

 

  柳さんはウニガラとカラス貝を砕いたマキエをたっぷり撒き込み、のんびりと仕掛けをセットし始めた。まず手にした竿は「幻覇王石鯛S-524」。イシダイ竿の中心的な硬さであるMH(ミディアムヘビー)に比べると、S-524はかなり軟らかい竿だ。

 「小型イシガキダイでもしっかり走らせてハリ掛かりさせることをコンセプトに開発した竿なんです。大バリで大型の石鯛に照準を絞るのもいいのですが、実際それで大型を仕留めるには根気が必要でしょう。太い石鯛だけが石物じゃなかですけんね。ハリを小さくして1kg前後のイシガキダイを狙うのもアリですし、魚が小さくてもアタリを出してハリに掛ける面白さは同じです。手持ち、置き竿の双方に対応して、普通のイシダイ釣りで使っても穂先がしなやかでアタリが大きく出るし、食い込みもいい。ハリ掛かりした後も竿全体が軟らかいから魚が暴れず、大型がすんなり獲れてしまう。日中はこれでイシダイを狙ったろうと思いよんです。夕方からはこれのHH-524というヘビーな竿でアラを狙ってみようと思います。まぁ底物五目ですね(笑)」

 ハリスは37番、ハリも16号。ライトな竿とはいえ、仕掛けは本気のイシダイ仕様である。

 上げ潮が効いている朝一番は右流れの潮。本命は左へ流れる潮とのことで、道糸が右に傾く間はアタリも散発で穂先を持ち込まない。

 「こんなときでもマキエは絶やさんことですね。エサ取りでも何でもとにかく寄せる。他魚がエサを食いよる音が石鯛を刺激して、突然活性のスイッチが入ることもありますからね」

 満潮を迎え、潮が左へ向きを変えると少しずつアタリが増えてきた。サザエや赤貝など軟らかいエサを使っている場合は、アタリがあるとやや穂先を送り込んで食わせる。ウニやカニなどの硬いエサを使っているときはイシダイが一生懸命噛み砕こうとするためか、道糸を張り込んでいくほうが走らせやすい。

 このときのエサはガンガゼ。穂先が押さえ込まれたところで少しずつ道糸を張っていくと海面まで穂先が持ち込まれた。道糸が走ったところで大きく合わせる。豪快に抜き上げたのは50㎝にわずかに欠ける本命。

 関東で釣りを覚えた僕にとって、石鯛とはそう簡単には釣れてくれない魚だ。竿出しから2〜3時間での釣果はまさに「あっけない」のひと言なのである。沖ノ島という釣り場がスゴイのか、柳さんのウデがいいからなのか、それとも「幻覇王石鯛S─524」のしなやかな調子がアタリを弾かずに食い込ませてしまったのか……。とにかく、順調以上の滑り出しであることは確かである。

 

 竿を出す前にウニガラとカラス貝のマキエをたっぷりと入れる。エサ取りの捕食音が石物の活性にスイッチを入れるのだ。

 日中の石物狙いでは「幻覇王石鯛S-524」を使った。小型のイシガキダイでも穂先を舞い込ませる柔軟性を持たせた新感覚の石物竿だ。

 エサはガンガゼをメインにサザエとバフンウニをローテーション。食いのよいガンガゼだが使い続けると魚が学習して口を使わなくなるので注意したい。

 ウニやカニなどの硬いエサを使っているときは、アタリがあると道糸を張って走らせる。柔軟な「幻覇王石鯛S-524」の真価が発揮される場面だ。

 「幻覇王石鯛S-524」が美しい弧を描く。竿全体がしなやかに曲がるため、大型を食わせても不要に暴れない。

 この日1尾目の本イシを豪快に抜き上げる。竿出しから3時間あまり。順調な滑り出しだ。

 

 

 

日中の釣りはまずまずの釣果。

夕マヅメからは大きな夢を追う!

 

  20mほど沖の水深は30mほど。ここから磯際にかけて急にカケアガっており、アタリはそこから少し巻き上げたところ、ちょうど水深23〜24m付近の棚でよく出る。マキエに上ずった個体は食い気があり、また浅いタナでエサを口にした魚は早く底へ戻りたがる。つまりこれは走らせやすいということで、おのずとフッキング率も高くなる。

 食い込みが今ひとつと感じた柳さんが、ガンガゼの芯だけをハリ付けした。これに2回目のアタリがきたのである。竿は大きく曲がるものの力負けする気配は一切ない。竿尻を腰に当ててグイッと矯めると魚はあっけなく頭を海面に向けられ、あとは浮かされるほかない。ズッポリと玄界灘の空に舞ったのは50㎝をクリアするなかなかのサイズである。この後は1・5㎏ほどのイシガキダイを追加し、日中の釣りではまずまずの釣果を得ることができた。

 夕方からは「幻覇王HH-524」に持ち替え、サンマをエサにクエ(モロコ、アラ)狙いに切り換える。

 「幻覇王石鯛HH─524」を簡単に言うと、クチジロ竿をパワーアップさせた大物竿です。記録級のクチジロはもちろんのこと、中型のアラまでいける。個人的には30kgクラスまで獲れると思いますけどね。あと最近の九州ではハタなど南方系の大型根魚が釣れるようになったんで、これを狙うのも面白いでしょうね。大物五目ロッドとでもいいましょうか、とにかく夢のある竿ですよ」

 ダイワでも「キャスティズム」や「デアイアル」といったオールラウンドコンセプトを打ち出してきたが、「幻覇王石鯛HH─524」は、これらのモンスターバージョンとでも言うべきだろうか。

 この後は柳さんが前夜から仕込んでいた焼肉を頬張りつつ夜半まで粘ったもののアラからの魚信はなく、テントで休むことにした。

 

 

 ガンガゼの芯に食ってきた2尾目は50cmを超えるナイスサイズ。23〜24mの棚の上で食わせた。

 夕方からは「幻覇王HH-524」にチェンジして夢を追う。道糸はPE30号、ハリスは42〜44番の49本撚りワイヤー。狙いは30kgクラスのクエ(モロコ、アラ)だ。

 

 サンマをエサに置き竿でじっくりとアタリを待つ。夜半まで粘ったがアラのアタリはなかった。

 

 

 

2日目も石物は好調。

イシガキダイと軽妙に遊ぶ!

 

  明けて2日目は再び「幻覇王石鯛S─524」に持ち替え、ライトな石物狙いに興じることにした。たっぷりとマキエを打ち込んで仕掛けを投入し、磯際へ巻き上げてアタリを待つ。朝一番は釣り座の右側先端から沖へハケていく上物向きの潮だったが、これが手前へ押し込まれて左へ抜けるようになると、前日同様にアタリが出始めた。

 まずは前日よりもやや控え目なサイズながらイシダイを御用。足下の海中に切れた仕掛けが絡んでいるらしく、ズルズルと抜けてくる根掛かりには難儀したが、微妙なアタリを見事な舞い込みにつなげ、小型のイシガキダイも追釣した。

 昼過ぎの納竿時間を迎える頃には、スカリの中はかなりの賑やかさである。コツンコツンという小さいアタリも大きく増幅し、弾かずに本アタリへとつなげてしまう。食わせた後も魚を暴れさせず、良型をもすんなり浮かせてしまう。そして何よりも、アタリが出てから取り込むまでが楽しい。まさに新感覚の底物釣りを堪能した2日間であった。

 

 

 翌朝は再び「幻覇王石鯛S─524」で石物狙い。柔軟な穂先は1kgクラスのイシガキダイでもスムーズに食い込ませてしまう。

 都合3尾目の石鯛はやや控え目なサイズ。ライトタックルはこのクラスでも十分に引きを堪能できるのだ。

 ガンガゼを入れてきた発泡箱やマキエの一斗缶は、帰りには手頃なゴミ箱となる。柳さんはゴミをきちんと分別して持ち帰った。見習いたいものである。 

 

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