「低気圧ボーイ」がワンチャンスで決めた。大シケ・のち・ナイスグレ!静岡県/石廊崎

特大の台風が相次いで日本列島を直撃した2014年10月。台風が過ぎ去ったかと思えば、今度は前線が居座ってなかなかナギに恵まれない。そんな中、阿波のホープ・山元隆史さんが静岡の伊豆半島を訪れた。豪雨、そして西のち北東の強風。竿を出せるだけでも御の字という状況だったのだが……。

 

 

 

 

 

日本列島上に居座り続ける前線。

低気圧よ、お前は鬼か!

 

 

 山下達郎の楽曲に「高気圧ガール」なるものがあるが、釣りの世界には「低気圧ボーイ」が何人も存在するらしい。

 そもそもの段取りはこうだった。この10月、秋磯シーズンの終盤に、某釣り雑誌の取材で山元隆史さんが伊豆を訪れるという情報をキャッチした僕が、ついでに当サイトの撮影を申し込んだのである。つまり、2日間の日程で2つの取材をこなすということ。スケジュール的にタイトといえばそうなのだが、伊豆は半島だから東岸と西岸があるわけで、どの方向から風が吹いてもとりあえず風裏が存在する。台風さえ避ければ竿は出せる、こう僕はタカをくくっていたのである。

 しかしどうしたことか、2つの台風が通過したあとも東西に伸びる前線が列島状に居座り、なかなか抜けてくれないのだ。太平洋の高気圧が頑張ると前線が北へ上がり、北陸や東北が大雨。大陸の高気圧が盛り返すと前線が南下し、太平洋岸に雨雲がなだれ込み豪雨となる。隆史さんが伊豆へ乗り込んだのは、まさに後者のタイミングであった。それも前乗りした当日は西の強風で、翌日には大ナライ(北東の強風)に変わるとのこと。予定していた取材の初日は西のウネリが残っているうえに逆方向からの強風で、どこも渡船が出ない。待機を決め込むしかない状況だ。

 しかし問題はその後である。くだんの雑誌社と協議して、2日目は午前と午後で釣り場を変え、それぞれが撮影を行うことになったのだが、北東風が西のウネリを抑えきれなかった場合、2日目も竿を出せないことになる。こうなると万事休すだ。

 「僕はね、仲間内で『シケ男』と言われているんですよ」

 どうやら隆史さんは「低気圧ボーイ」であるらしい。聞けば石廊崎には何度も訪れているけれど、竿を出したのはシケに強い磯ばかりとのこと。言ってみれば、京都へ観光に出掛け、駅前で買い物だけをして帰るようなもの。清水寺にも金閣寺にも行ったことのない、実に気の毒なことなのである。

 「ばっかやろう、オレだって『シケ大魔王』だぞ」

 こう口を挟むのは、東伊豆の河津でエサ店「FMサバル」を経営し、メジナ(グレ)釣りの名手として名高い丹羽正さんだ。氏はその後の雑誌取材で隆史さんと一緒に竿を出すとのことで、我々の釣行でもサポートをお願いしていたのである。シケ男にシケ大魔王。まさにWの悲劇となるとは……。

 

山元隆史さんはテスター仲間の間でも「ハリケーン隆史」と呼ばれるほどの低気圧ボーイ。今度こそはと乗り込んだ伊豆だったのだが……。

撮影初日は暴風&豪雨で待機を余儀なくされた。明けた翌日も北東風が吹き荒れ、雨が残るといった悪天候。しかし、竿を出せるだけでも御の字なのだ。

 

 

 

一か八かで出向いた石廊崎の磯。

しかし、勝負は一撃で決まった!

 

 

 ともあれ、少しでも可能性があるなら竿を出せるほうへ懸けたい。多少のすったもんだがありながらも、最終的には北東風が西のウネリを抑え込むことを祈り、一か八か半島最南端の石廊崎へ行くことにした。うまくウネリが収まってくれれば、有望磯が連なる岬西側の磯へ渡れるはずである。

 明けて撮影当日。風は相変わらずの大ナライ。宮島丸(☎0558-65-0108)に乗り込み、岬の東側にあたる本瀬港を出たあたりはかなりのシケである。しかしこれが北東風による波であることはすぐに見て取れた。ということは、岬を回り込んだ西磯は凪いでいるかもしれない。

 僕の予想は当たった。石廊崎を代表する大場所のひとつ、「大根」の小島向かいに難なく乗れてしまったのである。豪雨が窓を叩き、サッシを揺らすほどの暴風が吹き荒れていた昨夜を思うと、これは奇跡レベルの嬉しい誤算だ。あとは魚の機嫌がどうか、だけである。

 隆史さんは手早くタックルをセットした。この日の道具立ては、竿が発売されたばかりの「DXR 1.5号-53」と「インパルト3000SH-LBD」のコンビ。道糸は「アストロン磯グレイトチューン」のピンクマーキング1.85号、ハリスはソフト仕様のフロロカーボン「タフロングレイトSチューン」の1.75号。ハリは「D-MAXグレSSマルチ」の6号を結んだ。

 魚の活性は悪くないようである。釣り始めて間もなく足の裏サイズの口太が食ってきた。エサ取りはいるものの手を焼くほどでもない。時折30cm前後のイサキも食ってくる。午後の出番を待ちながら竿を出す丹羽さんにもイサキが連発。

 「イサキが釣れるのはいいけどよ、これがコマセに着いちゃうとメジナ(グレ)が釣りにくいんだよな」

 一方の隆史さんは釣り座の正面にある大根小島との間に生じるヨレを丹念に狙う。そのなかでもポイントを数カ所見立てておいて、イサキの寄りを見ながら仕掛けの投入点を変えているように見受けられた。

 そうこうしているうちに隆史さんの竿が絞め込まれた。先ほどの足の裏サイズとは明らかに異なる強い引きである。

 「石廊崎は底が荒いけん、無理できんのよ」

 こんなことを言っていた隆史さんは、焦らずじっくりと間合いを詰めていく。玉網に滑り込ませたのは、目測で42〜43cmはある立派な口太である。時計を見ると竿出しから1時間も経っていない。

 「何回目かの釣りで、ようやく伊豆らしいグレが釣れましたわ」

 磯に渡れればメジナ(グレ)は釣れるだろうと思っていたが、まだ水温の高い10月下旬という時期を考えると、このサイズは見事というほかない。イサキの間隙を縫って食わせた殊勲の1尾である。

 

 

午後の雑誌取材からが出番の丹羽さんだが、朝一番から加勢に駆けつけてくれた。丹羽さんの頭には釣り場の地形が隅々までインプットされている。ここまでしてくれるのは、自身のホームグラウンドでぜひとも隆史さんに良い釣りをしてもらいたいためだ。

 

 口太と尾長が混在する晩秋の伊豆。寒とは違う意味でハリの選択が難しい。隆史さんは「D-MAXグレSS」のマルチ、パワーマルチ、キープの3つを基軸にハリをローテーションしていく。

 

ハリスは新製品の「タフロングレイトSチューン」。食わせを重視したソフトタイプのフロロカーボンラインだ。

 

大根小島との水道を狙っていた隆史さんの竿が絞り込まれた。本命にせよ外道にせよ、なかなかの良型であることは間違いない。

 

取り込んでみれば40cmを楽に超える良型口太。これまでの苦悩と不安が一気に吹き飛んだ。

 

 

 

山元隆史が作り出す多彩なフォールパターン。

そのカギは「ハリ」にあり!

 

 

 隆史さんは次なる1尾を狙って釣り座に戻った。四国の見え尾長狙いで培ったコマセとの同調テクニックは、その後も遺憾なく発揮されている。ウキではなくサシエの位置を注視し、シビアにコマセと合わせていく。

 「ウキがサシエを引っ張りよったら食いが悪いねぇ。サシエが先行するように仕掛けを落として、サシエがウキを引っ張るような状態を作らんとね」

 僕も今までにいろんな人の釣りを拝見させてもらったが、隆史さんほど手数の多い人はいない。仕掛けが潮に合っていないと思えば、ハリの大きさやオモリの位置はもちろん、ハリスの長さや号数を変え、ウキを替え、これでもイメージ通りに仕掛けがなじまなければ、スプールを交換して道糸までチェンジしてしまう。この日は磯際へウキを沈めていく攻めに変えるやいなや、竿もSMT(スーパーメタルトップ)穂先の「DXR 1.5号-52 SMT」に交換してしまった。

 「見た目では同じようでも、海は刻々と変化してます。四国の尾長なんか、ちょっと道糸が引っ張られただけでサシエを見切られますからね。道糸の操作はもちろんのこと、海に合うまで仕掛けに手を入れていかんと……」

 その中でも、ハリには特に気を遣っているという。

 「魚が直接口にする部分ですし、ハリの大小、軽重は仕掛けのなじみに影響しますんで、常に気を遣っています。メインはD-MAXグレSSマルチで、とりあえずこれで様子を見るんですよ。そこからハリを重くしたいときはD-MAXグレSSパワーマルチ、尾長がいる所ではD-MAXグレSSキープといった具合にローテーションしていきます。食いの悪いときはD-MAXグレSSスピードパワースピードを使うこともありますけど、マルチ、パワーマルチ、キープの3つが、僕の釣りでは軸になっていますね」

 極力オモリを打たないことを是とする現代のメジナ(グレ)釣りにおいて、ハリとて仕掛けのなじみ方を左右する大切な重量物だ。磯際でイスズミらしき大物にブッツリやられた後は、シワリ形状で飲まれにくいD-MAXグレSSキープを結んだ。

 「仮に相手がキツ(イスズミ)であっても、きちんと釣り上げてから『キツやったぁ』と言いたいですもんね(笑)」

 和気藹々とした中でも隆史さんはコンスタントに中型メジナ(グレ)とイサキを釣り上げていく。その脇で陰の功労者である丹羽さんも40cmクラスを釣り上げた。

 「2人揃って40cmオーバーなんて、時期を考えれば上々やないですか。伊豆はええ所ですね」

 気を揉む時間が長かった今回の釣行だが、午前中の短時間勝負で予想以上の釣果に恵まれた。ラッキーと言えばラッキーであるが、それでもイサキが沸く中でワンチャンスをモノにしたあたりはさすがである。昼前の弁当船で、隆史さんと丹羽さんは次なる決戦の場へ移動。僕はめでたくお役御免となったのである。

 

 

海況にマッチするまで徹底的に仕掛けに手を入れる隆史さん。このマメさが勝機を呼び込むのだ。

 

唇一枚でフッキング。ハリはメジナ(グレ)の食いに合っているのか、狙うタナは適切か、コマセと仕掛けはズレていないか……。コッパといえども多くの情報を我々に送ってくれているのである。

 

磯際のヨレを丹念に攻める。ウキでアタリを見る「視覚の釣り」から「手感の釣り」に切り換えるやいなや、隆史さんは竿を「DXR 1.5号-53」から「DXR 1.5号-52 SMT」にチェンジした。

 

隆史さんの脇で遠慮がちに竿を振っていた丹羽さんにも40cmクラスがヒット。主賓を立てつつも結果を出すあたりはさすがだ。

 

その後はイサキと中型メジナ(グレ)が釣れ盛った。石廊崎の地着きイサキは食味がよいことで定評がある。

 

竿を畳んだ後は自分が出したゴミをまとめる。釣り人として以前に、人間として最低限のマナーである。

 

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