初夏の五島列島・福江島に7人の名手が集結した。この日は秋にリリースされる「TOURNAMENT ISO AGS」の最終テストと、カタログ撮影を兼ねての釣行である。ゼロから開発に携わった男たちは、完成間近の新「TOURNAMENT」に何を思うのか……。

 

 

初夏の五島列島で

新トーナメントの最終テストを敢行。

 

 まだ明け切らぬ離島の朝。薄暗い景色の中、港だけは活気に満ちていた。ここは長崎県・五島列島福江島。この日、釣りの楽園とも飛ばれるこの島に、7人の名手が集結していた。鵜澤政則、山元八郎、藤園賢一郎、山元隆史、田中貴、岡田建治、武田一平……。ダイワのフカセタックルを現場でテストする精鋭たちである。

 この日、彼らが五島へ訪れた目的は2つ。1つはカタログやWEBコンテンツなどのプロモーション撮影、もう1つは今秋デビューする「TOURNAMENT ISO AGS」の最終テストだ。ほぼ出荷レベルにある新「TOURNAMENT」の最終プロトを使い、調子その他を総合的にチェックするというわけだ。

 日が長い初夏とはいえ、撮影を絡めた過密なスケジュールをこなすには時間があるようでない。出港前には綿密な打ち合わせを行い、大量のタックルを渡船に積み込んだ。山上湖を思わせる波静かな玉之浦湾を都丸(☎090・9888・1143)は滑るように進み、外海へ出てから左へと舵を切る。福江島の東端にあたる大瀬崎周辺がこの日の釣り場だ。7人のテスターは2チームに分かれて渡礁する。僕は藤園賢一郎、山元隆史、岡田建治の三氏とともに、五島でも指折りの名礁である「立神」に下りた。

 ダイワの担当者からテスターそれぞれに新「TOURNAMENT」が手渡される。「黒竿」と呼ばれるプロトモデルとは違い、製品と同じ塗装が施された最終テストモデルである。アイテムはすべて1.5号5.3mだ。

 新「TOURNAMENT」で最もこだわったのは“現場での答え合わせ”である。ダイワが独自に編み出してきた数々のテクノロジーにより、設計段階でも釣り人の感覚をかなりのレベルで製品に反映できるようになった。しかしそれは、どんなに緻密な計算式で弾き出した調子であっても、あくまで机上での数字にすぎない。竿の調子とは、あくまで釣り人の感覚に則したものであるべき。何がベストであるかは釣り人の感性によって導き出さなければならないのである。

 新「TOURNAMENT」は、様々なブランクスを磯へ持ち込み、節を入れ替えて実際に魚を釣り、設計者とテスターの二人三脚で最良を追求した。藤園、山元、岡田の三氏はゼロから開発に携わってきたこともあり、最終プロトを手にしたのときの表情は感慨深いものがある。

「やっとここまできた、という感じですね」(藤園)

 現場で育て上げた新「TOURNAMENT」。どのような曲がりを見せてくれるのか楽しみだ。

 

日の長い初夏といえども撮影スケジュールはタイト。出港前には念入りな打ち合わせが行われた。

名礁・立神に上がったのは藤園賢一郎、山元隆史、岡田建治の三氏。綺麗な塗装が施された最終プロトが手渡された。

五島福江島の東端にあたる大瀬崎。岬の周辺には一級磯が軒を連ねる。

 

 

激流の中から

良型メジナ(グレ)をブチ抜く!

 

 沖に向いて左後方から激流が通している。流れに面した左角には山元隆史さん、藤園さんはその右隣に釣り座を構え、岡田さんは右奥からゆったりと本流に引かれていく潮を狙った。立神は本来、60cmオーバーの尾長が狙える大物場だ。願わくば褐色の大型尾長をという目論見もあったのだが、竿の調子を確かめるという意味では、そこそこの型が数釣れてくれるほうがありがたい。

 さすがは名礁・立神である。竿出し直後から30cm台半ばの口太が立て続けに食ってくる。やがて40cmに絡む型が混じり始め、岡田さんが47〜48cmの良型を玉網に収めた。一連のやり取りを見ていて思ったのは、「新『TOURNAMENT』」はよく曲がる竿だな」ということだ。

 これまでの「TOURNAMENT」の調子をひと言で表すと「細・軽・ピン」であった。細身&軽量で、シャープかつ抜けの良い先調子が「TOURNAMENT」の代名詞ともいえるものであり、軽く繊細な仕掛けが全盛の時代にあって、その操作性とパワーは好評を得た。

 しかし、時代は少しずつ変化してきた。魚が少なくなり、大物と出会うチャンスも減るなかで、いかにして1尾を楽しんで獲るか、あるいは千載一遇ともいえる大物とのやり取りにおいて、いかにして確実に取り込むことができるかに重きを置く釣り人が増えてきたのである。となると、ただパワーがあるだけの竿ではやり取りが楽しめない。逆に曲がるだけ曲がってしまう竿だと中小型を釣るには楽しいが、大物には振り回されて“撮れる竿”にはなり得ないだろう。

 そんな時代の流れを受け、新「TOURNAMENT」の調子は「細・軽・靱」の方向へシフトした。“靱”とは、なめした皮のようにしなやかで丈夫な様を表した言葉だ。しなやかに曲がり込みながらも強い粘りを発揮し、弾力を失わず曲がったぶんだけしっかりと起き上がる腰の強さを備えたもの。これこそが新「TOURNAMENT」が目指した調子なのである。

 テスター陣も「曲がるけれども粘る」「曲がるほどに粘る」新「TOURNAMENT」の調子を再確認しているようである。

「4番節がよう曲がるんやけど。魚が大きいほどここの粘りが効いてきますね。曲がっても曲がっても弾力が失われないんです。黒金ベースのデザインもカッコイイですね」(山元)

 「パワーに任せて魚を浮かせる竿は今までもあったんですよ。でも新「TOURNAMENT」はこれといって力を入れなくても魚がスーッとついて上がってくるんです。3番節から4番節にかけてのしなやかさと粘りの加減が絶妙ですね」(岡田)

 

立神は良型の尾長が出る場所。仕掛けを作る山元隆史さんの表情も真剣だ。

釣り座の左からは激流が沖へ抜けていた。山元隆史さんは流芯から次々にメジナ(グレ)を引き出した。

岡田建治さんはゆったりとした引かれ潮を狙い、47〜48cmの良型口太を食わせた。

 「TOURNAMENT ISO AGS1.5号-5.3」と五島の口太メジナ(グレ)。胴までグッと曲がり込みながらもこのクラスなら余裕で浮いてくる。

 

 

新「TOURNAMENT

闘う男達は何を求めたのか。

 

 午後からは「オゴ瀬」へ移動。ここから武田一平さんが合流した。ここは横潮が速い釣り場であるが、ちょうど干潮の潮止まりなのか、さほど速い潮は入ってこなかった。しかしそれでも五島である。竿出し直後から40cm近い口太が次々に食ってきた。藤園さんはいきなりの5連発。入れ食いである。

「新『TOURNAMENT』を使ってまず思うのは、魚が怒らない、暴れないことなんです。曲がり込んで粘りを発揮するのは新『TOURNAMENT』の特徴でもあるのですが、あまりにも自然に魚が浮いてくるので、この粘りに気づかない人もいるんじゃないかな。グッと曲げ込んだとき腕に感じる負担も小さいので、楽にやり取りできますよ」(藤園)

 武田さんはやや奥まった場所でじっくりと竿を出していた。エサ取りの少ない地方のポイントで緩流を巧みに攻め、次々に中型の口太を仕留めた。

「僕が竿に求める要素っていろいろあるのですが、まず釣っていて楽しい竿というのが第一なんです。反発力の強い竿は確かに魚を早く浮かせられる一方、曲がりの抜けが早くて楽しめないんですね。ところが新トーナメントはグッと曲がってから負荷を押し戻すまでに心地よい間があって楽しいです。曲がりのミートポイントが広いというんですかね、『やり取りしてる!』と実感できる竿ですよ」(武田)

 この日、僕が行動を共にした4人のテスターは、みな最前線で活躍するエキスパートである。競技会であったり、狙いを大物1本に絞った釣行であったり、そのスタイルはそれぞれ。竿に求める要素も多岐にわたる。

 新「TOURNAMENT」について、4人のテスターからは「大物が撮れる竿」「楽にやり取りできる竿」「魚が怒らない竿」「釣っていて楽しい竿」といった評価を得ることができた。次回はもう1チームの釣行を追いつつ、なぜ新「TOURNAMENT」が多様な釣り人の要望を具現化できたのかについて考察してみることにしよう。

 

 

午後からは武田一平さんも加わって「オゴ瀬」へ磯替わりした。

藤園さんは竿出し直後から5連発でメジナ(グレ)を食わせた。竿の曲がりを確かめながらじっくりとやり取りした。

40cm前後を仕留めてご満悦の藤園さん。このサイズがコンスタントに食ってくるのが五島の魅力。

岡田さんも快調にメジナ(グレ)を食わせる。新「TOURNAMENT」は腕に掛かる負担が極めて小さいのが特徴だ。

やや奥まった釣り座で緩い潮を攻める武田一平さん。ポイントを細かく区切ったシビアな釣りを展開した。

これでもかと新「TOURNAMENT」を曲げまくる武田さん。大きな曲がりの中で魚との駆け引きを楽しんだ。

 

焼け付くような日差し。全身から汗が噴き出し、ペットボトルが瞬く間に空になる。いよいよ夏磯シーズンの到来である。高水温期はエサ取りとの戦いであるが、本命の活性もまた高い。コマセワークで積極的に魚を動かして食わせる釣りは、寒の時期とはまた違った楽しみがあるのだ。

 

 

いよいよ夏磯が開幕。

灼熱の南伊豆に挑む!

 

 荷物を高い場所へ上げ終わった頃には、鼻の頭から汗が滴っていた。季節はもう夏なのである。ここは静岡県伊豆半島の南端に近い入間。ダイワのフィールドテスターである桜井裕さんグループの釣行に同行した次第である。

 桜井さんはテスターとして新製品の開発に携わるかたわら、月に1回、熱海港海釣り施設で行われているウキフカセ釣り入門講習会で講師を務める人だ。伊豆半島の磯に通い詰めて得た、膨大なデータを元に組み立てる頭脳派釣り師であるとともに、面倒見のよさも天下一品。この日も数人の講習会卒業生を引き連れての釣行だ。

 この日、渡礁したのは「高島」という地方の磯。その名のとおり足場の高い磯である。桜井さんはメンバー全員が竿を出すのを確かめた後、ウネリで釣りにくい先端寄りに釣り座を構えた。

 

頭脳派釣り師として評価の高い桜井裕さん。この日は講師を務めるウキフカセ釣り入門講習会の卒業生を引き連れての釣行だ。

 ウキフカセ釣り入門講習会の卒業生であり、釣行回数もまだ少ない沼田善之さんにポイントの説明をする桜井さん。釣りの楽しさ、出会いの喜びを共有することが何よりの楽しみなのである。

 

 

朝イチの大ザラシ狙いで

予期せぬ大物がヒット!

 

 「状況的にはちょっと厳しいかもね」

 事前の情報では小サバが非常に多いとのことだった。苦戦を覚悟していた桜井さんであるが、「事件」は思いのほか早い時間にやってきたのである。

 吉田大根に向いた北側の釣り座で大ザラシを狙っていたウキフカセ釣り入門講習会の卒業生、堀川貴之さんにいきなりアタリがきた。ウネリに翻弄されながら海面に浮かせ、仲間が差し出す玉網に収めたのは45.5cmの立派な口太であった。時期を考えれば殊勲の1尾だ。

 これには桜井さんも大喜びである。朝一番のコマセが効き始める前であったこと、大ザラシというエサ取りが入りにくい場所を狙ったことなど要因はいろいろ考えられるが、ワンチャンスを確実にモノにした堀川さんの大手柄といってもよいだろう。

 

北側の釣り座で良型メジナ(グレ)の魚信をとらえた堀川貴之さん。ウネリに翻弄されながら慎重なやり取りが続く。

堀川さんの長寸記録となる45.5cmの口太。桜井さんも大喜びである。勝因を尋ねると「メジナは起きたばっかりだったんじゃないですかね」とのこと。

 

 

コッパに小サバ

瞬速のエサ取りに苦戦。

 

 桜井さんは釣り座に戻って自分の釣りに集中する。竿は「DXR1.5号-52SMT」。感度に加え、しっかり合わせが利く胴乗りの早さが気に入っているというSMT(スーパーメタルトップ)搭載モデルである。エサ取りも本命も活性が高い状況を考慮し、コマセは軽比重&増量を重視した配合エサでまとめた。

 コッパがポツポツ釣れ続くなか、時折イサキが食ってくる。イサキは夏磯の顔ともいえるターゲット。専門に狙う人はさほど多くないが、この時期にイサキが釣れないと寂しい気持ちになってくる。もちろん、丁重にクーラーボックスへお通しした。

 伊豆の夏らしさを堪能したのも束の間、コマセが効くにつれて小サバがハリ掛かりするようになり、やがて一帯が大群に包囲されてしまった。

 コマセの投入点と仕掛けを離してもダメ、沖へコマセを入れて磯際を狙ってもダメ。こまめに仕掛けに手を入れて攻める桜井さんだったが、沖向きの釣り座はまったく勝負にならない。これではマズイと堀川さんの隣で大ザラシを狙ってみるも、白泡の中まで小サバが入ってくるようになってしまった。

 小サバの猛攻に手を焼いたまま昼を迎える。桜井さんは高い場所から磯全体を見渡し、頭の中に詰め込まれた過去のデータを引っ張り出して考える。さらに考える。なおも考える……。

 何かをひらめいた桜井さんはおもむろにバッカンを手にし、海底がうっすら見える地方向きに釣り座を移したのである。

 

 桜井さんはウネリで釣りにくい沖向きの釣り座で竿を出す。エサ取りが少ない時期のナギ日ならば最高の場所なのだが……。

配合エサは軽比重の「アミノX浮かせグレ遠投」をベースに、エサ取りの量を考慮して増量タイプの「アミノX爆増グレ5倍遠投」や「アミノX4倍こませグレ」をブレンドした。

朝一番はコッパグレの連釣。コッパは最も手を焼くエサ取りのひとつ。

桜井さんが所属するFTサバルのメンバーである中里俊二さんがイサキを食わせた。可憐な魚体と抜群の食味。夏磯を彩る人気魚だ。

桜井さんにもイサキが食ってきた。この後は丁重にクーラーボックスへお通しした。

「シークールキャリーGU2500Ⅱ」はキャリーハンドルとキャスターが付いた便利アイテム。

堀川さんが釣った45.5cmのメジナ(グレ)も余裕で入るスペースを有している。

小サバである。足が速いうえに大群で押し寄せてくる。沖向きのポイントでは手も足も出なかった。

 

 

 

地方向きの当て潮で

奇跡の大逆転!

 

 釣り座の左から入ってきた流れは、正面の磯に当たって手前へ押し込んでくる。いわゆる当て潮である。コマセを撒くと、小サバの量は沖向きほどではないが、スズメダイが大挙して集まってくる。その様は海中に黒いじゅうたんが敷かれているかのようだ。

 ここで桜井さんは磯際にコマセを入れてスズメダイを集め、仕掛けは正面の磯ギリギリに投入した。当て潮に乗った仕掛けは手前に向かって流れてくる。そしてウキが磯際に差し掛かったところでスパッと海中へ消えていった。浮かせてみれば30cm少々の口太。

「これは嬉しい! 考えて釣ったという満足感があるよ」

 数を釣る。型を狙う。メジナ(グレ)釣りの楽しみはいろいろあるが、「筋書きどおりに食わせる」というおもしろさも忘れてはならない。当て潮はメジナ(グレ)釣りにおいて決してよい条件ではないが、エサ取りが極端に多い場面では「コマセを沖に出さない」という強力な味方となる。磯際のみに効かせたコマセの中に、沖から仕掛けを合わせるという桜井さんの攻めが、功を奏したというわけだ。

 続けざまにもう1尾。これはやや沖で食わせた。手順はこうだ。撒いたコマセに対してウキはコマセの中に入れるが、付けエサをコマセの外に外すように投入する。付けエサはカーブフォールでなじんでいくが、ハリスがなじむ前にコマセを追い打ちするのである。

 最初のコマセには、当然のごとくスズメダイが群がってくる。これに付けエサを同調させると、いくらコマセのエリアから外したといってもスズメダイに取られてしまうだろう。ここで追いコマセが効いてくるのである。

 ハリスがなじむ前、つまり付けエサがコマセのエリア外にあり、エサ取りの目に付きにくい状態のときに追いコマセを入れると、エサ取りの目が上へ向く。エサ取りが追いコマセにつられているうちに付けエサを最初のコマセに同調させるという寸法である。

 玉網に滑り込ませたのは37〜38cmの口太。まさに技ありの1尾である。

「この1尾で納得しました。高水温期はエサ取りが多いぶん、メジナ(グレ)の活性にもある程度は期待できます。コマセでエサ取りの動きをコントロールして、活性の高い本命を食わせる。夏磯はこれが楽しいですね」

 1尾がもたらす喜びの大きさは釣り人の心が決める。桜井さんは、厳しい条件の中でもメジナ(グレ)釣りを心から楽しんでいるのだ。

 

取材協力=常進丸☎0558・65・0854

 

考える桜井さん。頭の中には膨大なデータがストックされている。さぁ、どう攻める?

最終手段は地方向きの浅場。正面に見えるサバ根に当たった潮が手前へ押し込んでくる。しかし、当て潮は桜井さんが最も得意とする流れなのである。

大挙して群がるスズメダイの動きをコマセワークでコントロールし、見事に食わせた本命。サイズ以上の満足感をもたらしてくれた。

ゴミはまとめて持ち帰るのが釣り人のマナー。オキアミが入っていた袋はサッと海水で洗っておくと臭わなくなる。

 

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