春とは名のみの風の寒さや。まさにそんな朝だった。しかし、海の仲は確実に春に近づいている。いよいよ大型狙いの絶好期、乗っ込みシーズンを迎える。今回は3月に入って俄然釣果が上向いてきた、静岡県清水港のカカリ釣りをお届けしよう。

 

 

カカリ釣りのメッカ・清水港に

乗っ込みシーズン到来す!

 

 ヘッドランプに頼っていたのも束の間、東の空が見る間に明るくなってきた。船長は幾本ものロープを鮮やかにさばき、我々を乗せたボートを曳航する。巴川の河口を出てふと目を上げると、早春の朝日を受けてオレンジ色に染まった富士山が視界に飛び込んできた。

 ここは静岡県の清水港。東日本における数少ないカカリ釣り場のひとつであり、黒鯛(チヌ)釣りのメッカとして古くから知られる場所。今回は名古屋の若き精鋭、稲垣昌巳さんの釣行に同行した。

 狙いは乗っ込みの大型黒鯛(チヌ)。清水港では2月の中旬より黒鯛(チヌ)の釣果が上向き、2月の下旬より乗っ込みに入ったとのこと。取材日は3月上旬。いやがおうにも期待が高まる。お世話になった「ふじや釣舟店(☎054・352・1704)」の船長は、我々を乗せたボートを「貯木場の西」というポイントに係留してくれた。

 貯木場とは、湾奥に位置する折戸貯木場跡のこと。「プリン」と呼ばれる木材をつなぎ止めるためのコンクリート柱が無数に並ぶ、清水の代表的なカカリ釣りポイントである。

 ボート直下の水深は4m前後と浅い。干潮時には3mほどにまで潮が下げてしまうだろう。しかし、黒鯛(チヌ)の実績は非常に高い。船長の話によると、貯木場内にはもっと深い場所もあるが、なぜか黒鯛(チヌ)の着きが悪いという。

 稲垣さんは手早くダンゴの準備に取りかかった。

 「季節柄、エサ取りはさほど多くないと予想していたのですが、船長に聞くとフグが多いらしいんですよ。エサ取りの状況を見ながら、ダンゴ釣りと落とし込み釣りで狙ってみたいと思います」

 落とし込み釣りとは、付けエサをダンゴに包まず単独で落とす釣り方のこと。通常のダンゴ釣りはエサ取りに強い反面、ダンゴの周囲しか狙えないというウィークポイントがある。しかし落とし込み釣りは、ダンゴから離れたポイントへ付けエサを落とせるため、ダンゴにアタックせず潮下でエサを待っている個体や、プリンの際などに着いている個体をダイレクトに狙える利点がある。この双方を組み合わせることで、高活性の個体と低活性の個体の双方にアプローチする皮算用だ。

 

巴川河口から親船に曳航されてポイントへ向かう。朝日に照らされてオレンジ色に染まった富士山が出迎えてくれた。

朝一番は丹念にダンゴを入れる。わざと音を出して黒鯛(チヌ)の条件反射を誘う。

富士山をバックにのんびりと仕掛けを作る。集中力を少しずつ高める大切な時間だ。

 

 

ダンゴに群がるのは大量のフグ

若き精鋭、どう攻める?

 

 ソフトボール大に丸めたダンゴを10数個投入する。トポン、トポンと意図的に音を立ててダンゴを入れるのは、音で黒鯛(チヌ)を寄せるため。清水港のように黒鯛(チヌ)がダンゴに慣れている釣り場では、この音に対する条件反射で魚が寄ってくることが少なくない。

 ここでゆっくりタックルの準備に入る。この日、稲垣さんが手にしたのは「BJイカダ145」と「バイキング極50パワーバージョン」のセット。黒鯛(チヌ)の活性が低いことも想定し、しなやかで目感度に優れたグラスソリッド穂先を備えたロッドをチョイス。145cmとやや長めのレングスを選んだのは、落とし込み釣りで沖のポイントを狙いやすいからだ。

 ラインはフロロカーボンの「タフロンZα」の1.75号70m通し。ハリは今春発売になったばかりの「D-MAX銀狼チヌSS」のマルチ3号を結んだ。

 付けエサは生オキアミ、シラサエビ、サナギ、コーンを用意した。

 釣りを始めて付けエサが残ったのは最初の2〜3投だけだった。エサが取られ始めるとまったく残らない。どうやらフグらしい。

 ダンゴ釣りで攻めるも、どのタイミングでダンゴを割ってもフグにエサを取られてしまう。ならばと落とし込み釣りでダンゴの潮下へ付けエサを落としても結果は同じだ。エサ取りに強いサナギやコーンに切り換えても本命の反応はいまひとつ。

 「まだ黒鯛(チヌ)が寄ってきていないようですね。とにかくフグが多いので、たくさんダンゴを打ってまずはボラを寄せましょう」

 ボラが寄るとフグを蹴散らしてくれるのだ。朝一番から我慢の釣りを強いられることになった。稲垣さんは「昼食を届ける船が来る前に1尾は釣りたいですね」と、とりあえずの目標を立てた。

 

竿は目感度に優れたグラスソリッド穂先を備えた「BJイカダ145」。落とし込み釣りで沖を攻めることを想定して長めのレングスを選んだ。

リールはパワフルなサミングが可能な「バイキング極50パワーバージョン」。「タフロンZα」の1.75号を70m巻いてある。

ハリは発売になったばかりの「D-MAX銀狼チヌSS」。SaqSas加工と丈夫なハリ先で黒鯛(チヌ)の硬い口周りにもしっかり立ち込む。

フグの猛攻にまずはボラを寄せることを心掛けた。落とし込み釣りでもこまめにダンゴを打つ。

落とし込み釣りはフライフィッシングの要領でリールからラインを引き出し、手で狙いのポイントへ付けエサを投げる。

 

 

配合には目的を持つべし

ダンゴのブレンドを考える

 

 この日のダンゴ配合は、ふじや釣舟店が用意してくれたオカラベースのオリジナルコマセを桶に2杯と、「クイックダンゴアミノX」と「銀狼アミノXチヌ激旨」を各1袋。これに完全解凍したアミエビを2kg混ぜ込み、アミエビの水分だけでまとめたもの。パサついたオカラがベースなので、配合エサでやや粘り気の強いタッチに仕上げた。

 「オカラは黒鯛(チヌ)が好む濁りを生むので、ベースエサに最適です。『クイックダンゴアミノX』は粒子が細かく、パサついたオカラを締める目的で入れています。アミノXが配合されており集魚効果も期待できます。『銀狼アミノXチヌ激旨』を入れたのは集魚効果と粘りが狙い。これはアミノXに加えてグリシンという旨味成分が含まれているので、集魚効果は絶大ですね」

 「銀狼アミノXチヌ激旨」は、もともとウキフカセ釣り用として開発されたものだ。

 「ダンゴ釣りのコマセで一番大切な要素は比重です。これを満たして目的に合ったものなら、何でも使っていいと思うんですよ。『銀狼アミノXチヌ激旨』は比重があるので、ウキフカセでもダンゴ釣りでもオールラウンドに使える配合エサだと思っています。今後も積極的に使ってみたいですね」

 自由な発想で釣りに取り組む稲垣さんである。エサ使いも独創的だ。

 そうこうしているうちに竿が曲がった。軽く浮かせたのは本命だったが、20cm前後の小型。関東で言うところのチンチンサイズだ。

 やがて昼食を届ける船がやってきた。

 「どうですか?」

 「小さいのがひとつだけですねぇ」

 「ここのような浅い場所は、日が照り混んで水温が上がる午後がいいですよ。頑張ってください」

 船長はこう言い残して帰って行った。海の上で温かいカツ丼を食べられるのは嬉しい。これも清水のカカリ釣りが多くの人に愛されている理由のひとつだろう。

 

 

オカラベースのオリジナルコマセを桶に2杯と、「クイックダンゴアミノX」「銀狼アミノXチヌ激旨」、アミエビ2kgがこの日のダンゴメニュー。砂利も予備として用意した。

パサついたオカラをまとめるため、やや粘り気の強いタッチに仕上げた。ダンゴ1個の大きさはこの程度。

シラサエビのハリ付けはこんな感じ。黒く見える急所を避けるようにハリ先を抜く。尾の動きを妨げないので黒鯛(チヌ)へのアピール力が高い。

ダンゴから溶け出す煙幕の外側を狙って小型ながら本命をキャッチ。乗っ込みシーズンだけにさらなる大型を狙いたいところ。

 

 

海底に広がる煙幕の切れ目を狙い

値千金の大型黒鯛(チヌ)をゲット!

 

 正午を回り、海の様子が少し変わってきた。まずボラが寄ってきた。中層でダンゴを突っつきながら底まで沈み、時々ハリに掛かってくる。2〜3尾食わせると疲れてしまうが、アタリもなくエサを取られてしまうよりはマシだ。フグはすっかりいなくなった。付けエサが残るか、ボラが食うか……。

 稲垣さんはダンゴ釣りと落とし込み釣りを絡めながら、海中の様子を探る。

 「押さえ込まれた穂先がすぐに戻るのは、ボラがエサを吸って吐き出したアタリです。黒鯛(チヌ)はクッと穂先を押さえ込んで戻らないんですよね。今のところ、沈下中からダンゴを触っているのはボラのようです。まだ潮が速いので、潮が緩む13時過ぎの干潮前後がチャンスかもしれませんね」

 こんな稲垣さんの予想が見事に的中するのである。

 微かな穂先の変化に身体が反応したのは、稲垣さんの集中力が切れていなかった証拠だ。干潮近くになって水深は3mほどにまで浅くなっていた。左右へ横っ走りする引きはボラとそっくりであるが、稲垣さんはすでに黒鯛(チヌ)と確信しているようだ。

 「頭を振っていますからね。これは本命ですよ」

 魚はボートを係留しているプリンに向かって突っ込む。海中に入った脚の部分にはカキ殻がびっしり着いている。これを回られたらアウトだ。

 ときとして腕を伸ばして引きをいなし、ときとして穂先を海中に突っ込んで引きに耐える。慎重にやり取りを繰り返して海面に浮かせたのは紛れもなく本命だ。電光石火の玉網入れが決まった。稲垣さんが拳を突き上げる。

 揚がりの時間まで30分。まさに起死回生の1尾である。陸に戻ってメジャーを当ててみると44cm。腹がぷっくりと膨らんだ乗っ込みの魚であった。

 清水港の乗っ込み黒鯛(チヌ)はこれからが本番。大型を釣り上げるチャンスは誰にでもあるのだ。

 

浅場の黒鯛(チヌ)は左右に走り回り、ボートを係留するプリンに向かって突っ込んでいく。稲垣さんは耐える、なおも耐える……。

慎重にやり取りを繰り返し、玉網へ滑り込ませたのは良型の黒鯛(チヌ)。苦労して食わせた1尾。稲垣さんも思わずガッツポーズ!

清水港の港内はエサが豊富なのか、黒鯛(チヌ)は丸々と肥えている。陸へ上がってメジャーを当てると44cmあった。

ボート上で出たゴミは袋などにまとめて持ち帰る。空になった配合エサの袋は風に飛ばされやすいので注意したい。

潮が引き、海面下に沈んでいた岩が徐々に露出してきた。「銀狼 冴」のショートロッドを駆使し、背後に崖が迫る狭い足場で黒鯛(チヌ)を連発した鶴原修さんは、岩だらけになった九十九島の磯をどのように攻略するのか。前回に引き続き、鶴原さんのクレバーな釣りをお届けする。

 

 

潮が徐々に引き

海底の岩が露出してきた。

 

 複雑に入り組んだ無数のワンド。「竜宮」はその奥に位置する波静かな磯である。朝イチはちょうど満潮であった。満ちきった海水が足場を覆い、ガケ下に少しだけ残された四畳半ほどの釣り座で、鶴原修さんは「銀狼 冴1号4.5m」を用いてキビレと黒鯛(チヌ)を釣り上げた。

 バックスペースが限られる狭い釣り座において、ショートロッドの効果は絶大であった。コンパクトなスイングで仕掛けを遠投し、軽快なロッドワークで黒鯛(チヌ)を取り込む。一般的な5.3mではここまで思い切って振り込めないであろうし、回収した仕掛けを手に取ろうと竿を立てようものなら、頭上に張り出した木の枝に道糸を引っ掛けてしまったかもしれない。

 正面の山から顔を出した太陽は、いつしか高くなっていた。潮が見る間に引いていく。ダラダラとカケ下がった海底が露出してくる。先ほどまでは沈み根だった大岩も釣り座が取れるまでになった。その先にはカキ殻がたくさん付着した岩が見える。

「釣り座がだいぶん広くなってきましたね。ここまで潮が引くと、ショートロッドにこだわる必要はないでしょう」

 鶴原さんはこう言うと「銀狼 冴1号4.5m」を仕舞い、ロッドケースから「銀狼 冴1号5.7m」を取り出した。銀狼シリーズでは「銀狼王牙AGS・藻切りスペシャル」と並ぶ最長尺アイテムである。

「ロングロッドの利点は多々ありますが、やはり長さを生かして足下の障害物をかわせることが大きいです。特にここのような釣り座の前に大岩がゴロゴロしている場所では心強いですね。あと、ハリスを長く取れるので自然なアプローチが可能になります。節が長いぶん、タメが効くのもいいですね」

 仕掛けはショートロッドのときと同じ。自立棒ウキと中通しの「銀狼 遠投Ⅱ」をローテーションで底付近を丹念に狙う。その結果はすぐに出た。

 

潮が引いて釣り座が広くなったのを機に「銀狼 冴1号5.7m」に竿を持ち替えた。

釣り座の前は大小の岩が点在している。長竿が最も活躍するシチュエーションだ。

自立棒ウキと中通しウキを使い分け、底付近を設定的に狙う。場合によってはハリスを底に這わせたりする。

 

 

5.7mの長尺を活かし

足下の障害物をかわす!

 

 湾奥特有の散漫な潮がわずかに振れた途端、棒ウキのトップが静かに海面下へ吸い込まれた。視線を鶴原さんに向けると、「銀狼 冴1号5.7m」が“つの字”に絞り込まれていた。

 そのやり取りは、文字どおりの「余裕」であった。ハリスは「タフロングレイトZカスタムEX」の1.25号。大型黒鯛(チヌ)狙いとしては決して太くはないが、5.7mの大きなストロークが生み出す弾力が魚の動きを見事なまでに封じ込める。釣り座の前に点在する沈み根も、少し竿の角度を変えるだけで楽に回避。鶴原さんが差し出す玉網に滑り込んだのは、40cmを軽くオーバーする良型の黒鯛(チヌ)だった。

「豊かな粘りと弾力はさすがにロングロッドですね。厄介な沈み根も楽にかわせました。取り回しのよさはショートロッドに敵いませんが、魚を取り込むことを考えると、竿は長いほうが有利ですね」

 この1尾でそこそこの達成感を得た。鶴原さんが次に狙うのは、やはり型のようだ。

「竜宮にチヌが入っているという読みは当たりました。ただ、これ以上の型が出ないようなんです。数はそこそこ出たので、午後からは違う磯に渡ってみましょうか」

 異論はない。一発大型狙いはこちらも望むところである。船長が見回りに来るのを待ち、湾から出た独立磯の「ウゲ島」へ磯替わりした。

 

大きなストロークと豊かな粘りがロングロッドの真骨頂。沖の深みから黒鯛(チヌ)を引きずり出す。

足下の根をかわせばフィニッシュまでもう少し。「銀狼 冴1号5.7m」の弾力が黒鯛(チヌ)の反撃を封じ込めた。

「銀狼 冴1号5.7m」の前に為す術もなく玉網へ導かれる。白銀の魚体が美しい。

 

 

上滑りする表層の潮をかわし

当日一番の大型をゲット!

 

 ウゲ島も潮が完全に引ききっていた。水際には大小の岩が露出し、そのうちのひとつに釣り座を構えた。足場が高いこともあって、鶴原さんは迷わず「銀狼 冴1号5.7m」を手にした。

「強い北西風が道糸を引っ張ってしまうんです。こんなときは長めの竿を使い、極力穂先を海面に近づけるといいですね」

 仕掛けを投入した鶴原さんの表情が曇った。

「潮が動いているように見えますが、強い風に押された表層の潮が滑っているだけです。下の潮は遅いですね」

 ここで鶴原さんはウキを「銀狼 遠投Ⅱ」の3Bにチェンジした。重めの中通しウキ仕掛けを用い、仕掛けがなじんだところで道糸を張って仕掛けの流れをセーブして、ウキの先行を抑えるという寸法だ。流しては止め、また流しては止める。付けエサを先行させて、底の流れに漂わせるわけだ。

 そしてこの日のクライマックスがやってきたのである。「銀狼 冴1号5.7m」が大きな弧を描いた。長いストロークでゆったりと寄せるやり取りは、どことなく優雅に見える。引かれたらタメる。突っ込まれてもタメる。この余裕のある粘りがロングロッドの真骨頂である。

 白銀の魚体が海面を割る。為す術もなく玉網へ導かれた黒鯛(チヌ)は、大きな飛沫を上げて最後の抵抗を見せた。50cm近い大型。ここで鶴原さんがようやく安堵の笑みを浮かべてくれた。

「2本の竿を使い分け、仕掛けも底へ這わせたり流れに漂わせたり、やれることはすべてやれた気がします。この1尾で満足です」

 この後、40cmクラスを1尾追加したところで納竿の時間を迎えた。これで落ちから続く寒の黒鯛(チヌ)シーズンも終焉を迎える。来る乗っ込みが楽しみだ。

 

 

午後からは独立磯の「ウゲ島」で竿を出す。荒い根をかわすため、鶴原さんは迷わず「銀狼 冴1号5.7m」を手にした。

潮が引き切ったウゲ島も釣り座の前は沈み根がゴロゴロ。やり取りはおのずとシビアになる。

穂先を海面に近づけて風の影響を抑える。足場が高い磯では長竿が圧倒的に有利だ。

重めの仕掛けを強く張り込んで本命を食わせた。足下の根を慎重にかわす。

50cm近い大型を仕留めてしてやったりの鶴原さん。表層の流れをかわして食わせた技ありの1尾だ。

根だらけのポイントで真価を発揮した「銀狼 冴1号5.7m」。藻が生い茂る春シーズンも活躍してくれることだろう。

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