桜の開花とともに春磯シーズンも本番へ突入。春は黒鯛(チヌ)もメジナ(グレ)も狙える嬉しい季節であるが、それだけに狙いを絞りきれない悩ましい時期でもある。ならば、いっそのこと両方狙ってみようではないかと、熊本の名手・田中貴さんと春まだ浅い天草へと出かけてみた。うららかな春の一日を楽しもうとしたのであるが……。

 

 

夜半から降り続く雨のなか

天草の魚貫崎に向かう。

 

 すべてがうまくいくはずだったのである。釣行3日前に予報を見たときは、確かにお日様のマークがズラリと並んでいた。しかしどうだろう。そんな予報は日ごとに変わり、前日にスマホから天気を確認したら、終日にわたり雨になっていた。

 忙しい田中貴さんにスケジュールを空けてもらっている。飛行機のチケットも特割で押さえたし、ホテルの予約も取った。近場の取材であれば確実に延期しているところだが、今回はそうもいかない。

「風は北東なので海は静かだと思うんですよ。パパッと釣ったところで雨が強ければ無理せず上がることにして、まずは行ってみましょうか」

 電話口で頭を抱える僕を、田中貴さんは優しく励ましてくれたのである。ならばと僕も覚悟を決めた。持参した折りたたみ傘では心許ないので、熊本に入るなりコンビニで大判のビニール傘を買い足した。

 夜半に降り出した雨は、夜が明ける頃には本降りになっていた。目指したのは天草の魚貫崎(おにきざき)。田中さんによると、メジナ(グレ)の実績場として名高い牛深より奥まった場所にある魚貫崎は、さほど速い潮が通す場所が少ないことに加え、エサ取りが多いためかなりテクニカルな攻めを要求される地域とのこと。天草エリアでは“ウキフカセ釣り道場”とも称されるのだとか。

 そしてもうひとつ、メジナ(グレ)と黒鯛(チヌ)が混在する釣り場であることも魚貫崎の特徴とのことだ。牛深に比べてメジナ(グレ)の平均サイズは小さいものの、同じポイントで大型の黒鯛(チヌ)が釣れ、条件によっては尾長や真鯛も出るという。直近の情報では黒鯛(チヌ)が好調とのことで、天候を除けばベストなタイミングで釣行できたといえるだろう。

 この天候なので夜が明けてからのんびり磯へ渡るつもりだった。港に着いたのは午前7時。お客さんは我々のみである。この豪雨である。致し方あるまい。

 しかし海は静かだ。大一丸(☎090-2719-7739)の船長は笑顔で我々を迎えてくれ、岬の先端にあたる「初崎の一番」に舳先を付けた。広く足場のよい磯である。背後の崖がオーバーハングしており、この下に荷物を置けば雨で濡れずに済む。これは実にありがたかった。

 

魚貫崎でも指折りの一級磯である「初崎の1番」。夜半から降り出した雨は依然として止まない。

降りしきる雨の中、田中貴さんはゆっくりと仕掛けの準備に取りかかった。頭の中には数々の戦略が渦巻いている。

 

 

黒鯛(チヌ)とメジナ(グレ)が

混在する釣り場でのタックル選び

 

 良型の黒鯛(チヌ)が釣れており、これに口太メジナ(グレ)が混じる。釣れてくるメジナ(グレ)のサイズは40cmまでの中小型が中心。こんな状況を考慮して田中さんが選んだ竿は、この春に追加発売になった「トーナメント ISO AGS 1号-53」である。

「チヌとグレが混在していて、釣れてくるグレのサイズもさほど大きくないので、竿は軟らかめの1号を選びました。大型のグレが釣れる牛深ならば1.25号、1.5号といった強めの竿を使うのですが、魚貫崎では乗っ込みの大型チヌ、そして最大40cmの口太が中心なので、1号竿がピッタリのフィールドだと思います。魚を確実に取り込めて、引きも楽しめます」

 その他、リールは「トーナメントISO競技LBD」、道糸は「アストロン磯ガンマ1500」の1.35号、ハリスは「タフロングレイトZカスタムEX」の1.5号、ハリは「D-MAXグレSSスピード」の5号を結んだ。

「朝イチは様子を探るために、まずはグレ狙いの軽い仕掛けで始めてみます。マキエと仕掛けを表層から合わせていって、どのタナでどの魚が食うか。一応の本命はチヌとしますが、グレと同じ浅いタナで食うかもしれませんからね」

 ウキは田中さんのトレードマークであるゼロ浮力ウキ。約6m取ったハリスの中ほどにウキを遊動でセットし、仕掛けがなじむとウキから上のフロロカーボンハリスの重さと抵抗で、ウキがジワリと沈んでいく。いわゆる沈め探り釣りのひとつであるが、オモリで強制的に沈めるのではなく、ハリスをはじめとする仕掛けの重さと抵抗でウキを入れ込むのがミソ。こうすることで、メジナ(グレ)のポイントである“潜り潮”を選ぶことができるのだ。文章にするとイメージしにくいかもしれないが、この理論と実践法は『ダイワ・釣れる! DVD collection/田中貴の「ゼロ釣法」全部見せます!』にて、田中さん本人が詳しく説明しているので参考にしていただきたい。

 雨は依然として降り続けている。田中さんは左沖へゆったりと流れる潮スジにコマセを打ち、仕掛けを振り込んだ。

 

田中貴さんが手にしたのは「トーナメント ISO AGS 1号-53」。黒鯛(チヌ)とメジナ(グレ)が混在する釣り場などで活躍する1本だ。

3〜4番節に施したICガードは、道糸のベタ付きを軽減してくれる。雨中の釣りでは実にありがたい。

リールは愛用のハイギアモデル「トーナメントISO競技LBD」。マグシールドにより雨がボディ内部に浸入してこないので安心だ。道糸は「アストロン磯ガンマ1500」の1.35号を巻いてある。

ハリスは「タフロングレイトZカスタムEX」。強さと食いのよさを併せ持つソフトな糸質のフロロカーボンハリスだ。

ハリは「D-MAXグレSSスピード」の5号を中心にローテーションした。掛かりの悪いときはハリ先が開き気味のスピードが有効だ。

 

 

降りしきる雨も何のその

幸先良く本命がヒット!

 

 ハリスがなじむとウキのヘッドが押さえられ、ジワリと海中へ入っていく。海面から1ヒロほど入り、オレンジ色のヘッドが見えるか見えないかくらいのところで、トーナメントの穂先が重厚なアタリをとらえた。

 ゴクンゴクンと首を振り、根に突っ込まないところをみると、おそらく黒鯛(チヌ)である。引きを楽しむようにゆっくりやり取りを繰り返す。海面に浮いたのは35cmほどの黒鯛(チヌ)。関東ではカイズ、現地ではメイタと呼ばれるクラスだろうか。しかし1投目から本命が食ってくるとは幸先がよい。魚貫崎の好調ぶりがうかがえるというものだ。

 しかし、モーニングサービスはこれで終わりではなかった。なんとここから3連発。2尾目の黒鯛(チヌ)は45cmの良型であった。回遊性の個体を思わせる白銀の魚体。ヒレが切れていない綺麗な魚であった。

 まだ水温が低いとあってエサ取りは少なかった。アタリがあればすべて黒鯛(チヌ)という嬉しい状況だ。

「本来はエサ取りがメチャクチャ多い釣り場なんですけどね。雨が降っている以外は釣りやすくてよかった」

 この後さらに雨足が強まったところで、重量のある2段ウキ仕掛けにチェンジ。仕掛けの全重量を重くして投入性をアップさせるのが狙いだ。小さなアタリを取りたいときは自立棒ウキも使った。ゼロウキを駆使した仕掛け1本で、グレマスターズを5回征した田中さんであるが、プライベートの釣りでは様々な仕掛けを試しているのである。

 

仕掛けを振り込む。ICガードのおかげで雨中でもストレスなく投入することができた。

1投目で35cmの黒鯛(チヌ)をキャッチ。魚貫崎の好調を裏付ける1尾だ。

曲がってから粘るのが「トーナメント ISO AGS」の真骨頂。多少の型であれば矯めているだけで浮いてくる。

45cmの立派な黒鯛(チヌ)。このサイズが出てくれれば満足だ。

白銀色でヒレの綺麗なこの個体は回遊性かと思われる。居着きは体色が黒っぽくヒレが切れている個体が多い。

 

 

良型黒鯛(チヌ)に続き

口太&尾長もゲット!

 

 午前9時を回ると黒鯛(チヌ)のアタリが遠のき、徐々にエサ取りが増えてきた。ハリに掛かってこないところを見ると、どうやら小さなイワシの類が寄ってきたようだ。生オキアミのほか、ボイルや加工オキアミをローテーションし、コマセと仕掛けの合わせ方を微妙に変えていく。

 ここで食ってきたのがメジナ(グレ)である。黒鯛(チヌ)の気配はまったくなくなってしまった。

「船長の話では、グレはほとんど釣れていなかったらしいんですよ。この釣果は意外でした(笑)」

 単発かと思いきや、この後もポツポツとメジナ(グレ)が食ってくる。やがて「トーナメント ISO AGS 1号-53」が、それまでとは違う強い引きをとらえた。

 強引に竿を絞り上げるのではなく、曲がりを一定に保って魚を怒らさずに浮かせるのが田中さんのやり取り。突っ込まれたら膝の屈伸を使ってついていく。「細・軽・靱」の新たなトーナメントの調子も手伝って、魚は知らず知らずのうちに浮かされてしまうようにも見える。

 玉網に滑り込ませたのは40cmクラスの口太。魚貫崎では十分に良型といえるサイズだ。

「45cmのチヌに40cmのグレ。1号ロッドにピッタリの釣果でしたね。魚貫崎のようにチヌとグレが混在しているような釣り場で、魚の引きを楽しみたいなら1号ロッドは最高です。「トーナメント ISO AGS 1号-53」は魚を掛けると大きく曲がり込むのですが、そこからしっかりと粘ってくれるんです。楽しさとパワーが両立していて、そのパワーも体感的に出しゃばらないから、楽しさがより増幅されるんですよ」

 止まぬ雨など何のその。上々ともいえる釣果に、お昼の便で磯を後にした。

 

エサ取りが増えてきてからは黒鯛(チヌ)のアタリが遠のいた。コマセと仕掛けの合わせ方に工夫していたところにアタリ。合わせが決まった。

無闇に竿を絞り上げず、膝の屈伸を使ってどこまでも魚の動きに付いていくのが田中さんのやり取り。細糸で大型を獲れる理由はここにある。

良型黒鯛(チヌ)に続いて40cmクラスの口太も御用。二兎を負う欲張りな釣りは、この1尾で結実した。

普段はシューズタイプを愛用する田中さんだが、この日はハーフブーツを着用。シューズの軽さとブーツの防水性が両立するスグレモノだ。

田中さんは常にビニール袋を携行し、釣り場で出たゴミをまとめて持ち帰る。名手は釣技だけでなく、マナーも模範的なのである。

春とは名のみの風の寒さや。まさにそんな朝だった。しかし、海の仲は確実に春に近づいている。いよいよ大型狙いの絶好期、乗っ込みシーズンを迎える。今回は3月に入って俄然釣果が上向いてきた、静岡県清水港のカカリ釣りをお届けしよう。

 

 

カカリ釣りのメッカ・清水港に

乗っ込みシーズン到来す!

 

 ヘッドランプに頼っていたのも束の間、東の空が見る間に明るくなってきた。船長は幾本ものロープを鮮やかにさばき、我々を乗せたボートを曳航する。巴川の河口を出てふと目を上げると、早春の朝日を受けてオレンジ色に染まった富士山が視界に飛び込んできた。

 ここは静岡県の清水港。東日本における数少ないカカリ釣り場のひとつであり、黒鯛(チヌ)釣りのメッカとして古くから知られる場所。今回は名古屋の若き精鋭、稲垣昌巳さんの釣行に同行した。

 狙いは乗っ込みの大型黒鯛(チヌ)。清水港では2月の中旬より黒鯛(チヌ)の釣果が上向き、2月の下旬より乗っ込みに入ったとのこと。取材日は3月上旬。いやがおうにも期待が高まる。お世話になった「ふじや釣舟店(☎054・352・1704)」の船長は、我々を乗せたボートを「貯木場の西」というポイントに係留してくれた。

 貯木場とは、湾奥に位置する折戸貯木場跡のこと。「プリン」と呼ばれる木材をつなぎ止めるためのコンクリート柱が無数に並ぶ、清水の代表的なカカリ釣りポイントである。

 ボート直下の水深は4m前後と浅い。干潮時には3mほどにまで潮が下げてしまうだろう。しかし、黒鯛(チヌ)の実績は非常に高い。船長の話によると、貯木場内にはもっと深い場所もあるが、なぜか黒鯛(チヌ)の着きが悪いという。

 稲垣さんは手早くダンゴの準備に取りかかった。

 「季節柄、エサ取りはさほど多くないと予想していたのですが、船長に聞くとフグが多いらしいんですよ。エサ取りの状況を見ながら、ダンゴ釣りと落とし込み釣りで狙ってみたいと思います」

 落とし込み釣りとは、付けエサをダンゴに包まず単独で落とす釣り方のこと。通常のダンゴ釣りはエサ取りに強い反面、ダンゴの周囲しか狙えないというウィークポイントがある。しかし落とし込み釣りは、ダンゴから離れたポイントへ付けエサを落とせるため、ダンゴにアタックせず潮下でエサを待っている個体や、プリンの際などに着いている個体をダイレクトに狙える利点がある。この双方を組み合わせることで、高活性の個体と低活性の個体の双方にアプローチする皮算用だ。

 

巴川河口から親船に曳航されてポイントへ向かう。朝日に照らされてオレンジ色に染まった富士山が出迎えてくれた。

朝一番は丹念にダンゴを入れる。わざと音を出して黒鯛(チヌ)の条件反射を誘う。

富士山をバックにのんびりと仕掛けを作る。集中力を少しずつ高める大切な時間だ。

 

 

ダンゴに群がるのは大量のフグ

若き精鋭、どう攻める?

 

 ソフトボール大に丸めたダンゴを10数個投入する。トポン、トポンと意図的に音を立ててダンゴを入れるのは、音で黒鯛(チヌ)を寄せるため。清水港のように黒鯛(チヌ)がダンゴに慣れている釣り場では、この音に対する条件反射で魚が寄ってくることが少なくない。

 ここでゆっくりタックルの準備に入る。この日、稲垣さんが手にしたのは「BJイカダ145」と「バイキング極50パワーバージョン」のセット。黒鯛(チヌ)の活性が低いことも想定し、しなやかで目感度に優れたグラスソリッド穂先を備えたロッドをチョイス。145cmとやや長めのレングスを選んだのは、落とし込み釣りで沖のポイントを狙いやすいからだ。

 ラインはフロロカーボンの「タフロンZα」の1.75号70m通し。ハリは今春発売になったばかりの「D-MAX銀狼チヌSS」のマルチ3号を結んだ。

 付けエサは生オキアミ、シラサエビ、サナギ、コーンを用意した。

 釣りを始めて付けエサが残ったのは最初の2〜3投だけだった。エサが取られ始めるとまったく残らない。どうやらフグらしい。

 ダンゴ釣りで攻めるも、どのタイミングでダンゴを割ってもフグにエサを取られてしまう。ならばと落とし込み釣りでダンゴの潮下へ付けエサを落としても結果は同じだ。エサ取りに強いサナギやコーンに切り換えても本命の反応はいまひとつ。

 「まだ黒鯛(チヌ)が寄ってきていないようですね。とにかくフグが多いので、たくさんダンゴを打ってまずはボラを寄せましょう」

 ボラが寄るとフグを蹴散らしてくれるのだ。朝一番から我慢の釣りを強いられることになった。稲垣さんは「昼食を届ける船が来る前に1尾は釣りたいですね」と、とりあえずの目標を立てた。

 

竿は目感度に優れたグラスソリッド穂先を備えた「BJイカダ145」。落とし込み釣りで沖を攻めることを想定して長めのレングスを選んだ。

リールはパワフルなサミングが可能な「バイキング極50パワーバージョン」。「タフロンZα」の1.75号を70m巻いてある。

ハリは発売になったばかりの「D-MAX銀狼チヌSS」。SaqSas加工と丈夫なハリ先で黒鯛(チヌ)の硬い口周りにもしっかり立ち込む。

フグの猛攻にまずはボラを寄せることを心掛けた。落とし込み釣りでもこまめにダンゴを打つ。

落とし込み釣りはフライフィッシングの要領でリールからラインを引き出し、手で狙いのポイントへ付けエサを投げる。

 

 

配合には目的を持つべし

ダンゴのブレンドを考える

 

 この日のダンゴ配合は、ふじや釣舟店が用意してくれたオカラベースのオリジナルコマセを桶に2杯と、「クイックダンゴアミノX」と「銀狼アミノXチヌ激旨」を各1袋。これに完全解凍したアミエビを2kg混ぜ込み、アミエビの水分だけでまとめたもの。パサついたオカラがベースなので、配合エサでやや粘り気の強いタッチに仕上げた。

 「オカラは黒鯛(チヌ)が好む濁りを生むので、ベースエサに最適です。『クイックダンゴアミノX』は粒子が細かく、パサついたオカラを締める目的で入れています。アミノXが配合されており集魚効果も期待できます。『銀狼アミノXチヌ激旨』を入れたのは集魚効果と粘りが狙い。これはアミノXに加えてグリシンという旨味成分が含まれているので、集魚効果は絶大ですね」

 「銀狼アミノXチヌ激旨」は、もともとウキフカセ釣り用として開発されたものだ。

 「ダンゴ釣りのコマセで一番大切な要素は比重です。これを満たして目的に合ったものなら、何でも使っていいと思うんですよ。『銀狼アミノXチヌ激旨』は比重があるので、ウキフカセでもダンゴ釣りでもオールラウンドに使える配合エサだと思っています。今後も積極的に使ってみたいですね」

 自由な発想で釣りに取り組む稲垣さんである。エサ使いも独創的だ。

 そうこうしているうちに竿が曲がった。軽く浮かせたのは本命だったが、20cm前後の小型。関東で言うところのチンチンサイズだ。

 やがて昼食を届ける船がやってきた。

 「どうですか?」

 「小さいのがひとつだけですねぇ」

 「ここのような浅い場所は、日が照り混んで水温が上がる午後がいいですよ。頑張ってください」

 船長はこう言い残して帰って行った。海の上で温かいカツ丼を食べられるのは嬉しい。これも清水のカカリ釣りが多くの人に愛されている理由のひとつだろう。

 

 

オカラベースのオリジナルコマセを桶に2杯と、「クイックダンゴアミノX」「銀狼アミノXチヌ激旨」、アミエビ2kgがこの日のダンゴメニュー。砂利も予備として用意した。

パサついたオカラをまとめるため、やや粘り気の強いタッチに仕上げた。ダンゴ1個の大きさはこの程度。

シラサエビのハリ付けはこんな感じ。黒く見える急所を避けるようにハリ先を抜く。尾の動きを妨げないので黒鯛(チヌ)へのアピール力が高い。

ダンゴから溶け出す煙幕の外側を狙って小型ながら本命をキャッチ。乗っ込みシーズンだけにさらなる大型を狙いたいところ。

 

 

海底に広がる煙幕の切れ目を狙い

値千金の大型黒鯛(チヌ)をゲット!

 

 正午を回り、海の様子が少し変わってきた。まずボラが寄ってきた。中層でダンゴを突っつきながら底まで沈み、時々ハリに掛かってくる。2〜3尾食わせると疲れてしまうが、アタリもなくエサを取られてしまうよりはマシだ。フグはすっかりいなくなった。付けエサが残るか、ボラが食うか……。

 稲垣さんはダンゴ釣りと落とし込み釣りを絡めながら、海中の様子を探る。

 「押さえ込まれた穂先がすぐに戻るのは、ボラがエサを吸って吐き出したアタリです。黒鯛(チヌ)はクッと穂先を押さえ込んで戻らないんですよね。今のところ、沈下中からダンゴを触っているのはボラのようです。まだ潮が速いので、潮が緩む13時過ぎの干潮前後がチャンスかもしれませんね」

 こんな稲垣さんの予想が見事に的中するのである。

 微かな穂先の変化に身体が反応したのは、稲垣さんの集中力が切れていなかった証拠だ。干潮近くになって水深は3mほどにまで浅くなっていた。左右へ横っ走りする引きはボラとそっくりであるが、稲垣さんはすでに黒鯛(チヌ)と確信しているようだ。

 「頭を振っていますからね。これは本命ですよ」

 魚はボートを係留しているプリンに向かって突っ込む。海中に入った脚の部分にはカキ殻がびっしり着いている。これを回られたらアウトだ。

 ときとして腕を伸ばして引きをいなし、ときとして穂先を海中に突っ込んで引きに耐える。慎重にやり取りを繰り返して海面に浮かせたのは紛れもなく本命だ。電光石火の玉網入れが決まった。稲垣さんが拳を突き上げる。

 揚がりの時間まで30分。まさに起死回生の1尾である。陸に戻ってメジャーを当ててみると44cm。腹がぷっくりと膨らんだ乗っ込みの魚であった。

 清水港の乗っ込み黒鯛(チヌ)はこれからが本番。大型を釣り上げるチャンスは誰にでもあるのだ。

 

浅場の黒鯛(チヌ)は左右に走り回り、ボートを係留するプリンに向かって突っ込んでいく。稲垣さんは耐える、なおも耐える……。

慎重にやり取りを繰り返し、玉網へ滑り込ませたのは良型の黒鯛(チヌ)。苦労して食わせた1尾。稲垣さんも思わずガッツポーズ!

清水港の港内はエサが豊富なのか、黒鯛(チヌ)は丸々と肥えている。陸へ上がってメジャーを当てると44cmあった。

ボート上で出たゴミは袋などにまとめて持ち帰る。空になった配合エサの袋は風に飛ばされやすいので注意したい。

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