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1.寝相の悪い奴もたまにいる?

姿の美しいサカナの名を挙げると、必ずベスト5には入るシロギス。銀白色でスレンダーなその体形は、色白の美しい女性的な姿を連想させられる。

船釣りはもちろん、投げ釣りや堤防からのちょい投げでも釣れる。食味においても、天ぷらやフライの食材としてサカナ屋で売られているなじみの深いサカナだ。釣りの世界でも入門者は必ずと言っていいほどこの釣りを経験することになるだろうし、入門書などにも間違いなく登場する。

砂地を好み、夜は砂の中に潜って寝るという話が入門書や図鑑などに書かれていて、それが常識として知られている。ビギナーでも釣れるサカナではあるのだが、数を釣ろうとすればベテランにはかなわず、想像以上に奥の深い釣りの対象魚でもある。と同時に、生態的な話でも、実はまだまだ知られていない要素が多々あるのだ。

1)20〜30尾の群れで移動する

シロギスは単独行動が多いのかと思いきや意外と群れを作る。数尾の場合もあれば、20〜30尾ほどの群れを作ることも多い。そして、なによりも一箇所にとどまるのではなく、群れはかなり大きく移動し続ける。

シロギスの口は小さいが、下側に向かって漏斗状に伸びる。砂地または砂泥の海底を泳ぎ回って、その伸びる口を海底に向かって突き出して、強く吸い込むようにして砂や砂泥ごとエサを捕食。吸い込んだ砂や砂泥は、エラから吸い込んだ海水と一緒に排出する。エサの基本は海底に潜り込んでいるゴカイ類、そして小さなエビ・カニ類も食べているようである。

群れを構成しているシロギスは、それぞれがそのように捕食行動をときどき繰り返しながら、群れ全体が徐々に移動していく。この群れがいくつも存在する。つまり、群れがどこにいるのかを探ることが、この釣りの釣果を大きく左右することになる。

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シロギスは20〜30尾の群れを形成して行動することが多い。しかも海底から10cmほど上の層を泳ぎ、エサを探してかなり広い範囲を回遊する。
シロギスは細長い顔つきで、さらに伸びる口をしている。この口で海底の砂、砂泥を海水ごと吸い込み、その中に潜むイソメ類やエビカニ類をエラで濾すように食べる。

2)メゴチとキスの生態の違いが釣り分けるコツ

よくシロギス釣りで釣れてくるメゴチ(メゴチという本当のコチの仲間が別にいて、シロギスの外道で釣れる俗称メゴチは、正確にはネズミゴチの仲間)だが、メゴチとシロギスとの間には、行動パターンに大きな違いがある。この違いを把握しておくと、まったくメゴチが掛からなくなると言う訳ではないが、高い確率でシロギスをゲットできることになる。

それは、メゴチは比較的海底でジッとしていて、ときどき僅かに移動する程度。しかも、群れを作らずに単独で点在するようにしてエサを待つような暮らしぶり。だが、シロギスは海底から10cmほど上の層を泳ぎまわって、積極的にエサを探す。つまり、仕掛けを入れても、仕掛けを引かずにエサを動かさないとどうなるのか(?)、 運よくキスがそばにいれば喰ってくるだろうが、そうそうそばにいることも少なく、そうなるとそのほとんどがあちこちに散らばっているメゴチの餌食になってしまう。

そうならないように確率高くキスを喰わせるためには、可能な限り遠投し、仕掛けをゆっくりと引いてくることが重要なポイントになるのだ。かと言って、あまりにも早く引いてしまうのにも問題がある。秒速5〜10cmぐらいのスピードでひくことが目安となるだろう。

活発に活動しているキスがそのエサを見つければ、動きの俊敏なキスの方がメゴチよりも先に捕食しようとする。アタリもキスの方がより鮮明なことが多い。仕掛けを引いていて、そのようなアタリがあったら、仕掛けを引くのを止めて2〜3秒ほど待って喰わせるのがコツとなるはずである。

3)夜は海底すれすれの層で寝ていることもある

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シロギスは海底の砂に潜って寝ると図鑑には書かれているが、必ずしもそうとは限らないようである。海底ギリギリの層で浮きも沈みもしない状態で夜間ウトウトしているシロギスをボクは何度か目撃している。

夜にある海を潜ったときのこと。夜の砂地の海底はカニやエビが徘徊している。イソギンチャクの仲間も夜に活発に触手を伸ばして活動する。また、タコの仲間はカニやエビを捕食しようと海底を這いまわっている。昼の海とはまったく違う世界が夜の海にはある。

水中ライトに照らし出された円形の部分だけが水中の視界。そこにふと不思議な魚影が見えた。なんとシロギスである。

夜は砂の中に潜って寝るといわれているのだが、このときは違った。海底から5cmぐらい浮き上がった状態を保ち、体色も濃いネズミ色をしていた。この状態で寝ているようで、かなりそばに近づいても逃げない。捕まえられるか試してみたのだが、寝ていてもセキュリティ機能だけは働かせているようで、手を近づけるとさすがに逃げる。逃げるといっても、夜では遠くに逃げられず、1〜2mほど逃げるとそこで同じように海底から5cmぐらいのところで浮きも沈みもしない状態で再びボォーッとし始める。

この海底の砂に潜らない睡眠パターンだが、このケースが単なる寝相の悪いシロギスがたまにはいるという特別なパターンでもないようだ。夜のダイビングで、このようなシロギスにときどき出会うので、必ずしも海底の砂に潜って寝るというわけではないようである。

何のために海底の砂にもぐって寝るのか(?)、そして、何で砂に潜らずに寝るパターンがあるのか(?)。これはシロギスに聞いてみなければわからない永遠の謎なのだろうが、少なくとも寝床として砂に潜ることだけが夜の海では彼らにとって安全ではないということなのだろう。

※釣魚考撮より移設