高級魚として名高いサカナ「シマアジ」。アジというと30〜40cmほどのサカナをイメージしてしまうが、このサカナの場合は老成魚となると1m50cmぐらいにまでなる大型アジ科のサカナ。超ド級サイズを俗称「オオカミ」と呼ぶ。引きは強く、まさにブレーキの壊れたダンプカーを連想させられるような重量感のある突っ込みが釣り師たちを魅了する。だが、引きの強い反面、唇が柔らかく切れやすい。だから最後の最後まで冷や冷やさせられるのも、この釣りの醍醐味である。
シマアジは回遊魚。どこかを住処として定住するのではなく、好ましい水温、好ましい環境を求めて回遊する。水温は18〜24度ぐらいを最も好むようである。 環境的には、潮通しのよい砂地と岩礁域の混在するところ。それは、基本的に捕食行動の場が砂地がメインだからである。彼らの口は、口を伸ばすと、ちょうど薄い膜でできた蛇腹状になっていて、砂を海水と一緒に吸い込み、砂の中に潜んでいるイソメ類やエビカニといった甲殻類をエラで濾しとって捕食するのだ。この薄い膜でできた蛇腹部分が、シマアジの口切れ(ハリの刺さった箇所が大きく裂けてしまい、ハリがはずれてしまうこと)でバラしてしまう原因となるのだ。 また、大型になればなるほど、サカナ類まで捕食するようになる。口に歯があるわけではないので、どちらかというと小魚の群れに突入し、海水ごと小魚を吸い込むような食べ方をするようである。 |
伊豆七島でメジナを狙っていると、ときどきシマアジが運よく回ってくることがある。効果的なのはカゴ釣りなのだが、ウキフカセ釣りでも釣れることが多い。
メジナの場合は、ウキがスーッと入る、サッと波間から消える、ジワジワとゆっくり沈んでいくといったアタリ方が多い。シマアジの場合は、ビビビッとした微振動のようなアタリがウキに現われる。そしてスーッと30cmほどウキが沈んで2〜3秒止まる。そしてスルスルスルッとスピードのある沈み方をする。
なぜ、このようにウキに現われるアタリに違いがあるのか。それはエサの喰い方を比較すると明確になる。
まずメジナの場合は、下の層から泳ぎあがってエサをくわえ、反転して戻ろうとするような行動が多い。このような場合だと、ウキがサッと消えたり、スーッと突然入るようなアタリとなる。また居食いの場合は、ある層をゆっくりと泳ぎながら続けざまにエサを捕食。こんなときはジワジワとウキは沈む。
一方、シマアジの場合は、コマセの多い層で立ち止まるようにしてエサを吸い込む。まさに砂地の海底でやるように吸い込むときはロート状の口を伸ばし、口を閉じて吸い込んだ海水をエラから吐く。ちょうどツケエサの周辺でパクパクと口を動かしながらコマセを吸い込むようなアクションとなるので、その動きが微振動としてウキに伝わる。
そしてツケエサそのものを吸い込むと、ウキは30cmほど沈む。シマアジはまだ周囲に漂うほかのエサを吸い込んでいるから、ウキは沈まずにわずかな間水面下で止まる。そして、おもむろに泳ぎ始めるとウキはスルスルっと沈むのだ。これが前触れアタリのメカニズムなのだ。
シマアジの場合、もしも一尾釣れたら他にもまだまだ多くの同じサイズのシマアジがいると考えるべきだろう。
特に手のひらサイズの幼魚から2kgぐらいまでの若魚といった魚体では、当たり前のように100〜200尾レベルの群れを構成して行動する。大きな群れとなると、1000尾を超える場合もそう珍しくはない。このくらいのサイズのシマアジが一尾でも釣れたら、コマセを多めに撒いて群れの動きを止め、積極的に狙うと、型も揃い、数も釣れるはずだ。大きくなるにつれて群れの構成は小規模になり、老成するとほぼ単独行動となるようである。
余談になるが、シマアジは北側で獲れたものの方が美味しい。特に、神津島から北側の外房や伊豆半島付近で釣れたものは最高に美味しい。だが、八丈島よりも南側で釣れたものは、刺身にしても確かに旨いことは旨いのだが、きちんと〆てもなんか生臭さがあっていまひとつ本来のシマアジの美味しさではない。場所によってエサが違うためなのかもしれないし、単なるボクの思い込みなのかもしれないのだが…。ちなみに、このシマアジの学名は、最高に美味しいと言う意味のラテン語でつけられているのだそうだ。
|
|