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1.ビギナー入門魚!?されどベテランも熱くなる!

さて、今回から新たな企画として始まります「釣魚水中生態学入門」。

釣りというのは、とかくベテランの釣り人の経験から基づいた理論が多いのですが、その理論も重んじながら、水中カメラマンとして釣魚の行動を直に見た話もふまえ、加えて40年近くも釣りを嗜んできた一人の釣り人として、皆さんの釣りに役立つ話を展開させたいと考えています。

その第一回目は、マハゼです。

まったく釣りをしたことのない人に、海の釣りを初めて体感させるとして、どの釣りがオススメでしょうか?

おそらくいろいろな案は出てくるはずなのですが、手軽さや使うタックルの簡便さも考えると、キス釣りやハゼ釣りというところに落ち着くのではないでしょうか。特にハゼ釣りでは、夏から始まり11月ぐらいまで、ウキ釣りやチョイ投げ釣りで釣れる。おまけに女房・子供連れでもOKとなれば、まさにうってつけの入門釣りと言えるでしょう。

マハゼ、驚異的な成長という生態。

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マハゼは夏から晩秋にかけての好ターゲット。ビギナー向きではありますが、ベテランを思わずうならせてしまうほどの難易度も持ち合わせています。「たかがハゼ、されどハゼです」。

マハゼは、東京湾では冬から初春に産卵。孵ったものがしばらくはプランクトンを食べながら海中を漂います。4月ころには1〜2cmとなって、海底で生活。それが6〜7月になると6〜7cmほどにまで成長し、9月には10数cmにまでなります。驚異的とも思える成長の早さです。また、15cmぐらいまでに成長したマハゼは深場へ落ち、冬を越しつつ産卵し、翌春には一生を終えます。ただ、中には夏から秋にかけての成長が遅れて成熟しなかった個体もいます。それらは越冬して、翌年さらに成長します。20cmを超え、最大で25cm近くになると考えられています。それを関東ではヒネハゼと呼びます。このヒネハゼも、このころには成熟し、翌年の産卵を終えるとその一生を終えます。考えてみると、ハゼの一生ははかないようですが、その成長の早さには驚かされるばかりです。

ウキ釣りに見たハゼ釣りならではの難しさ

今までにさまざまな種類の釣魚(魚体)の写真をボクは撮影し保有しています。

その関係もあって、この秋に出版予定の釣魚図鑑の制作を請け負っていました。ところが、意外な盲点のひとつがマハゼ。ボクは、本格的な磯釣りや船釣りばかりしていたので、なかなかハゼを専門で狙う機会にも恵まれず、カレイ釣りやキス釣りでの外道として釣れたマハゼを写した写真しか持っていませんでした。

そこで、つい先日、千葉の木更津に行って、ハゼのウキ釣りをやってきたのです。魚体を撮影するだけなので、とりあえず一尾釣れればいい、という条件でした・・・。ところが、この日は南西の強風の吹いた日で、まともにサオが出せる場所が想像以上に少ない状況。ようやく風裏になる場所を見つけて、さっそくウキ釣りを始めました。ハゼなんて・・・、という侮りが気持ちの中には間違いなくありました。しかも一尾釣ればいいという楽観視もしていました。

ところが、一時間経ってもハゼが釣れない。途方にくれながら、辺りをブラついてみたのです。すると、地元の人がお2人、ハゼ釣りをしているではないですか。見ていると、ポツリポツリながら釣れていました。早速、その人たちと話をして、その脇で一緒に釣りをさせてもらえることになりました。

少し離れたところに釣り座を構えさせてもらって、釣り始めます。ウキ下は1mほど。アタリも出るようになり、ポツリポツリながらハゼが釣れるようになりました。

サカナのいる場所をよく考えて釣ること

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9月につかまえたマハゼ。すぐに海に持って入ってみました。水深10mのところで放すと、どんどん浅場へと上がって行きました。この時期はハゼ自身が浅場にこだわっているようです。

この日のボクの失敗は、「ハゼならどこにでもいるだろう!?」と、足元から深いところを釣り始めたこと。9月中旬は、徐々に深場へとハゼは向かい始めますが、木更津ではまだまだ浅場に集まっていたことでした。

また、この日を境にハゼを潜って観察してみたのですが、捕まえたハゼを水深10mぐらいのところで放すと、不思議と浅い方浅い方へとどんどん移動するのです。ふつう、サカナは逃がすと深い方へと行きます。とても不思議な現象です。

つまり、夏から9月頃の時期には浅場でエサを喰って大きくなり、深場へ落ちる準備と翌年の産卵に備えているのでしょう。

実際に、この木更津で釣りをしていると、例えば船揚げ場のスロープの本当に波打ち際寸前のところまでハゼが上がって来ていて、それを見釣りで釣った方が、はるかに釣果が上がったりします。

それともうひとつ、「ハゼなんてがっついていて、アタリがあれば向こうアワセで釣れるもの」と思っていたのですが、ウキ釣りでは、(1)きちんとウキ下を水深に合わせること、(2)ウキに出たアタリに対してのアワセのタイミングが微妙に必要なことです。特に、この9月ころは超浅場の釣りだけに時間経過に伴う潮の干満で水深が微妙に変化します。その変化に対応して、ベストなウキ下をセンチ単位でかなりの頻度で調整する必要があります。

また、どうやらハゼはエサをいきなりガバッと飲み込むのではなく、くわえてから少しして飲み込んだり、移動を開始したりします。だから、くわえただけの段階でアワセてしまうと、ハリがかりせずに悔しい思いをさせられるのです。

ボクがこの日悟ったのは、ウキがポコポコしたり、緩い流れの中でウキの動きが止まったり、とにかく怪しいと思ったら、軽くサオ先で聞き、ググンッという感触があったら、手首のスナップを効かせてアワセるというタイミングでした。

これからのシーズン後半の釣りは???

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この写真のハゼはマハゼではなくサビハゼというハゼの仲間。群れを作るというのではないですが、このようにどこかに集まっていることが多いのです。

さて、まだまだボクもハゼについては未知数の部分も多く、観察を行なわなければなりません。今月から11月にかけては、徐々に深場へとハゼも移動していきます。

特に、陸っぱりからの釣りでは、やや沖目の船の通り道などが狙い目となります。そうなると、ちょい投げよりもやや本格的な投げ釣りのタックルが欲しいところです。

また、ハゼは群れを作るわけではないのですが、ある場所に集まる傾向が強いようです。

これは意識的にみんなで集まるというよりも、捕食や居心地の良さみたいなものを追い求めた結果、そこに集まってしまうということのようです。

ということは、その集まった場所を探す必要があります。投げ釣りなら2〜3本サオを用意して、攻める場所を2〜3ヶ所に分ける。アタリの出る回数の多いところに集結しているはずなので、そこを重点的に狙うという釣り方となるでしょう。

またボート釣りなら、アンカーの上げ下ろしを億劫がらずに、こまめに場所を移動して、絶好のポイントを捜し求めることです。

※釣魚水中生態学入門より移設