「ガツ〜ンッ!」とフッキングした瞬間からまるでターボチャージャー、いやスーパーチャージャーまでもオン状態になったかのようにリールのスプールは逆転。それこそ煙を吐かんばかりの勢いでラインが引き出されていく。高速回遊魚特有の超スピード感と最後までトルクフルなねばりを見せる。このイソマグロのスピード&トルクが、アングラーたちを熱くさせるのだ。
主にジギングのターゲットとなるが、ほとんどのケースではゲームフィッシュとして釣り上げてもリリースしてしまうことが多い。
それは釣趣は豪快で面白いのだが、食べてはあまり美味しくないということから来ている。確かに大型のモノは、かなり水っぽい感じで、塩焼きにしてレモン汁をかけて、まぁ〜、なんとかいただける感じ。
だが、あまり知られていない事実として、1〜2kgぐらいの小型は刺身でびっくりするほど美味しいのだ。
5月に沖縄で「スルスルスルルー」(=TV番組「ザ・フィッシング」でも既にオンエアされた)という独特な磯のフカセ釣りに挑戦し、ちょうど2kgぐらいのイソマグロを釣った。ボクとしてはサイズ不足だし、美味しくないというイメージから逃がしてやろうと思ったところ、地元の与那嶺氏が美味しいから食べようという。その言葉につられ持ち帰って、那覇の街中の料理屋で刺身にしてもらったところ、抜群に旨かったのだ。
味は、ちょうどハガツオに似ている。ハガツオとは、あまり知られていないサカナだが、身は下手なマグロの中トロよりもはるかに美味しい。ただ身が割れやすく、割れると見てくれが悪くなるため市場にはほとんど出てこないのである。
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ボクは潮の流れがきついところを好んで潜る傾向が強い。特に南の海に行くと、激流地帯があり、危険が及ばない限りは最善の注意を図りながら潜るのだが、そういった場所にイソマグロは回遊してくる。
イソマグロの場合、大型になればなるほど、単体か多くても2〜3尾の群れ構成であることが多い。だが、激流地帯は激流地帯なりにサカナの通り道があるようで(ちょうど山の中に獣道があるのと同じで、むやみやたらに通っているのではない)、そのラインを次々に単体もしくは少数構成の群れが通り過ぎる。
今まで見た中で感動的だったのは、沖縄の与那国島の南西部沖を潜ったとき。
このときは1〜1.2mクラス(推定30〜40kg)が次から次へと現れては去っていく。もちろん、それよりも小型の15〜20kgクラスはごく当たり前のように回遊している。ここは常に、推定2〜3ノット(人が歩くぐらいから小走りぐらいのスピード)の潮が流れている。ボクは、水深5mぐらいにある平たい岩盤にしがみついて耐えているだけ。この流れも激流には違いないが、もちろん、これ以上のスーパー激流となることもあり、さすがにそんなときは潜れない。だが、イソマグロは激流であろうとおかまいなしにスイスイと泳ぐ。サカナだから当たり前と言えばそうなのだが、彼らは特に泳ぎに関しては卓越しているのだ。
また、今までで一番デカイのを見たのは、沖縄の南大東島でのことだ。この島は、平たい岩盤が隆起してできたような島。ちょうど岩盤の側面を大きくえぐれたような、オーバーハングしたドーム状の場所を潜ったときのこと。薄暗い中から巨大な影が2つ近づいてきた。サメかと思い身構えたが、イソマグロだった。
2尾ともボクの身長(ちなみに172cm)よりも大きかったので、おそらく2mぐらいの魚体。体重も50〜60kgはあるに違いない。おそらく、ボクともうひとりのダイバーの存在を嫌がって逃げたのだろうが、威風堂々としていたのが印象的だった(正直な話、こちらに向かってきたときは少し怖かった!)。
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この南大東島での超大型イソマグロとの遭遇が意味するように、イソマグロは日中は薄暗いところに隠れていることが多い。そのことを如実にわからせてくれるのが、小笠原のケータにあるマグロ穴という場所。
ここは丁度海面にかかるアーチのような地形で、このアーチの中にイソマグロが群れている。イソマグロがいる穴だからマグロ穴というストレートなネーミング。
潜ってみると、薄暗い50m四方ほどのスペースの中で、10kg前後のイソマグロが渦を巻くように泳いでいた。警戒心が強いためなのか、ボクを含めた10名ほどのダイバーがこの穴に入っていくと、次第に穴から出て行ってしまい、100尾ほどいたイソマグロが最後にはほとんどいなくなってしまったのだ。
次々に他のダイバーも浮上してしまい、ボクだけでしばらく待っていると何尾かが戻ってきた。
ということは、イソマグロは日中も活動するが、どちらかというと薄暗いところで休んでいて、暗くなってから活動するのかもしれない。
そう言えば、何年か前にサイパン沖でジギングしたときに、夜にイソマグロがガンガンとヒットしたことを思い出した。
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