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2.船釣りの超人気ターゲット

イサキといえば、関東では春から初夏のサカナ。ちょうど夏前に産卵期を迎え、積極的にエサを喰い、身も脂が乗ってうまいからだ。

しかし、日本全国的に見れば、一年中が旬のような感じ。

特に九州などでは、冬場の方が脂が乗って旨いといわれるぐらいで、しかもこの時期にも市場に出回る。

普段、エサとして何を喰っていたかで味が大きく変わり、どこで捕れたイサキなのかで市場での値段も違うようである。

このサカナ、本当の旬の時期があいまいになりつつもあるサカナである。

磯や船から狙い、特に船釣りでは、船釣りの入門には最適なターゲット。初心者向けといえばそうともいえるが、ベテランといえどもてこずらされる難しい日もあり、奥深いターゲットでもある。

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関東では、春先から初夏にかけてが、最も盛んに狙われる時期。夏前の産卵期に向け、喰いが活発となり、脂も乗るからである。しかし九州辺りでは周年狙い、冬場のほうが旨いという話もある。
イサキは、船釣りはもちろんのこと、磯釣りや夜釣りのターゲットとして人気の高いサカナ。すらりとしたサカナらしい体型で、味もよく、釣趣もいいと三拍子揃っているのがその理由だ。

1)大きな群れと暗がりを好む習性

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3年ほど前に、南紀白浜の沖でイサキの大群と根の穴の中で遭遇した。潮の止まった時間帯で、どうやらそのイサキたちはそこで昼寝をしていたようだった。昼寝を邪魔されたイサキたちは、あわててその場から去っていった。

イサキは大きな群れを作る。幼魚時代は根を覆うようにつくのだが、大きくなるにつれ移動するようである。

特に春先のイサキ釣りでは、パタパタッと入れ食い状態になったかと思うと、パッタリ釣れなくなったりする。もちろん船が潮に流されて移動するから、根の上に船がいるときはイサキが釣れていて、船が根から離れると釣れなくなることはある。だが、釣り船の船頭の話では、イサキの群れはときによって回遊し、回遊し始めるとじっとしていないから釣れたり釣れなかったりするという話だった。

また面白いのが、群れがいるのに食い気がない場合もある。オキアミの付けエサで喰っていたのがパタリと喰わなくなる。そんなときにウィリーでシャクったり、付けエサを青イソメに変えると突然喰い始めたりする。おそらくコマセボケがおきて、ボケてしまったときに何か違う要素があると、それが活性の火付け役になるようである。

また、潜って観察すると、イサキの意外な一面を見ることがある。群れで回遊するサカナは、潮の流れが根に当たる場所では、根の潮上側に群れることがほとんどのケース。

潮が緩むと、どこか違う場所に移動することが多い。

だが、3年ほど前に南紀・白浜で見たイサキの群れは、潮が止まったら根の割れ目に群れごと入っていた。かなり影になって薄暗い場所だったのだが、まったく何気なく入り込んだその根の大きな窪みに良型イサキがたくさん潜んでいた。それこそ100や200ではきかない数である。イサキは浮くでもなく、海底に着地するわけでもなく、ボーッと休んでいるような感じだった。もしかしたら集団で昼寝をしていたのかもしれない。イサキは夜間もエサを喰う夜行性の生態も見られるサカナ。もちろん夜間ずっと起きていて徹夜でエサを摂るとは思えないが、それなりに活動する時間帯を夜間に持っているようである。その分、昼間に眠くなる時間もあって、そういった影となるような場所で休むこともあるのかもしれない。

イサキとのこのまったく予期せぬ遭遇にこちらも驚かされたが、向こうも突然のボクの出現に驚いたようで、しばらく群れが混乱していたが、あわててその場からイサキの群れは去っていってしまった。

2)ジャンボイサキの謎

イサキというと、普通は全長30cmぐらい。大きくても35cmというのが一般的だ。ところが、伊豆七島の新島や神津島周辺で釣れるイサキは40cmを超え、ときには50cmに達するものまでいるから驚きである。釣り師たちからはジャンボイサキと呼ばれ、専門に狙っている人もいるぐらいである。

なぜここまで大きくなるのだろうか? 老成魚だからということだけではなく、さほど老成していなくても40cmを超えるものも多く見られるようで、なんらかの成長促進要素が関係していると考えられる。

日本各地の海に潜ってみると、実は面白いことに気がつく。同じ種類なのに、小さなエビやカニの大きさが、場所によってかなり違うのである。例えばソフトコーラルと呼ばれるやわらかいタイプのサンゴの仲間に隠れて棲んでいるイソコンペイトウガニという名のカニがいる。関東周辺の三浦半島や伊豆半島を潜ると、普通はカラダの胴部分が1〜1.5cmが普通。ところが、三浦の城ヶ島、東伊豆の八幡野、西伊豆の田子といった場所では、2〜3cmと見るからにサイズが大きい。このカニばかりではなく、他の種類のエビやカニでも同じことが見られる。この3つの場所に共通しているのは、すぐ沖がどん深の地形。どうも海洋深層水が湧き上がり、その栄養豊富な海水があたるためではないかという見解がなされている。

この考え方でいくと、新島や神津島でイサキがジャンボ化するということも当てはまるのではないかと考えられる。この付近の海域の東側には伊豆・小笠原海溝が、西側には2000〜3000m級の駿河トラフがある。特に駿河トラフの駿河湾深層水は、その研究で黒潮系水、亜寒帯中層水、太平洋深層水という3つの起源を異にする深層水から成り立っていると考えられている。その海水に含まれるミネラル分も関係するのかもしれないが、その3つの系水に含まれるプランクトンがまったく別のものであり、そのプランクトンに成長を促進させるなにかが隠されているのもかもしれない。

イサキは地着き的要素の強いサカナである。そのように考えると、成長の過程でそのプランクトンに含まれるなぞの成長促進成分を口にすることで、新島や神津島のイサキがジャンボに成長するという仮説も信憑性がでてくるはずだ。とにかく海とサカナはまだまだ謎ばかりの世界である。もしかして、このジヤンボイサキが、その謎を解くカギを持っているのかもしれない。

※釣魚考撮より移設