主にこのサカナの幼魚「メッキ」という名でソルトルアーの好ターゲット。日本国内ではこのサカナの成魚とはなかなか出会えないが、南の海に行くと、いるとこにはそれこそわんさかといる。
以前、パラオに行った際には、世界でも有数のダイビングスポット・ブルーコーナーでは、ギンガメアジの壁ができていたほどだ。とにかく大きな群れを作って行動し、潮の動きにはものすごく敏感なサカナである。
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ボクはこのサカナの名の由来は、てっきり「銀河目アジ」だと思っていた。それは海の中で見た群れがあまりにも大きく、しかも満点の星をイメージさせられるものだったからだ。サカナの和名には、誰がその昔に海の中をのぞいたのかは知らないが、例えばロウニンアジなどのように海の中を見てつけたとしか思えない名がついているものがいくつもいるもの。ギンガメアジも、宇宙を流れる銀河をイメージさせられるようなアジ。しかも眼が大きいので、目アジ(メアジ)という名。ちなみに英名はビッグアイトレバリー(大きな眼のヒラアジ)。これらが合わさった形の名だと思っていたのだ。
ところが、さまざまなサカナ関係書籍を読みあさってみると、どうも九州・長崎周辺で「銀紙アジ」という地方名があり、これが和名の由来となったらしいのである。
もちろん銀紙というのは、体表に銀紙を貼り付けたようにきらきらと輝くボディのことから来ている。そう考えると、「メッキ」と呼ばれるのも金属にさらに光沢を与えるあのメッキであり、うなずける。しかも日本国内では幼魚・若魚がメインで釣れる。このサカナの幼魚・若魚がメッキと呼ばれるなら、すべてにつじつまがあってくるのである。
パラオで見たギンガメアジの大群。いつもいつも同じ場所にいるわけではない。
潮の流れというのは、流れているときはいつも一定のように思われがちだが、ちょうど陸上で吹く風のように吹くときどきで強弱があったり、向きが微妙に振れるものである。ちょっと突風のように吹いたかと思うと、次は風が止まったかのように思えたり、こっちから吹いていたのに、次の瞬間にはかなり右手側から吹いてきたかのように思えたり。激流と呼ばれる海の中で、潮の流れに身を置くと、海の中でも同じように風が吹いているような感じなのだ。
とにかく激流がさすことで有名な前出のパラオ・ブルーコーナー。あまりにも流れが強かったので、海底からそそりたつ大きな根の頂上付近に手をかけて、つかまりながら群れの行動を観察してみた。彼らが群れを形成するのは、やはり根の潮上側。ちょうど相撲の技「つっぱり」のように、潮によってぐいぐいとボクのカラダは押される。なのに彼らは、どのヒレを動かすというわけでもなく、のんびりと同じ場所にとどまっていられる。サカナだからといってしまえばそれまでなのだが、なにも苦労せずにこの場にいられる彼らの行動はすばらしいものがある。1尾がそうだから、群れ全体もそこにとどまり、ときおりその中の何尾かが、居場所が気に食わなくなってススッと泳いで自分の位置を定めるだけ。激流なのに彼らはのんびり。実に不思議な光景だ。 さて、よく観察すると、ほとんど群れの位置が変わらないように見えるものの、微妙にシフトしている。潮の流れの向きが振れると、その上流向きに向きを変えるし、根の潮上側といっても、その頂点的な位置よりもわずかに内側に入った場所にいる。おそらく、潮の流れの中で、潮が根に当たる頂点的な位置よりも、エサ(プランクトンや小魚)が多いことを本能的に知っているのだろう。彼らは常に潮の流れを意識し、自分がどういう位置にいようという意思が感じられるのだ。 またパラオには、ジャーマンチャネルというこれまた世界有数のダイビングスポットがあり、ここにもギンガメアジの群れは現れる。ここはブルーコーナーがいきなり深い海溝から立ち上がる大きな岩礁域であったのと異なり、白い砂地が広がり、点々と根があるような場所だ。しかしチャネル(海峡)の名の通り、潮の流れの速い場所である。ここでかなり流れの速い潮流時に潜ったのだが、ギンガメアジが大きな群れを作ってそこにいた。おそらく数としては数十万尾、いや百万尾という桁だったかもしれない。しかし、しばらくして潮の流れが反転しようと潮どまりになったとき、その数いたはずのギンガメアジは忽然と姿を消していた。潮を読んで、まったく別の場所に移動したに違いない。 |