ちょうどゴールデンウィークが明けた頃から、東京湾の風物詩といえる「夜アナゴ釣り」がシーズンイン。だいたい6月の終わりから7月の上旬でこの釣りのシーズンも終わる。
みなさんも、この釣りをしたことがあるだろうか?
ボクは、なんでも自分で釣ってみないと気が済まない性質(たち)なので、何度かやってみたのだが、これが以外や以外、なかなか難しい釣りなのである。体験する(アナゴ釣りをやる)前までは「あんなウツボの子分みたいな奴だから、仕掛け入れればホイホイと釣れるもの」と思っていたのだが、それはとんでもない大間違い。アタリはあるのだがうまくアワセられない。カワハギ釣りともまた違う趣なのだが、たかがサカナごときにキリキリさせられるところはとても似ている。
かといって、船で横にいる一見してベテランアナゴ師は、3本の竿をうまく操って、確実に釣果を伸ばしていく。これまたカリカリさせられ、実に精神的によくない(?)釣りなのだ。なのに通ってしまうのは、釣った直後のアナゴの味が格段に違うから。釣ったアナゴは船宿でさばいてくれるから、あとは家に帰って白焼きにでもして、冷たいビールのおつまみ。これがたまらないのである。
まず、アナゴの棲家は砂泥地。日中はここで頭だけ出していることが多い。普段はこんな態勢なのであるが、実に驚くべきワザを持っている。 どうやって砂泥の海底に潜って頭を出すかというと、尻尾から器用に潜っていくのである。アナゴは、ここに潜ろうと決めると、尾の先端をその位置に定め、カラダをくねらせるように動かすと、その先端部が掘削でもしているのか、あっという間にバックの姿勢で砂泥の海底にカラダがスルスルスルッと潜る。時間にして2〜3秒。 どうやら尾の先端部にその秘密があるらしい。 先端部は硬く、しかも薄いブレード状。カラダ全体をくねらせることで、ちょうどカッターナイフの刃を砂泥地に刺し込んでいくような方法なのである。 さて、このようにして砂泥の海底に潜ったアナゴであるが、なんのために潜るのだろうか? もちろん、こうやっていてエサが目の前を通過すれば捕食するのであろうが、これは捕食姿勢ではない。おそらく外敵から身を守る手段として、カラダの大半を海底に隠しているのではないだろうか。砂泥地ではないところでは、岩の隙間やちょっとした海底に沈んでいるものの影に隠れているという報告例もある。 |
このように日中は、頭だけを出して海底に潜っていたり、海底の根の影に隠れていたりするアナゴであるが、夜になると一変して積極的な行動に出る。海底ぎりぎりのラインを、それこそカラダをヘビのようにくねらせながら徘徊する。もちろん捕食のためである。 アナゴは、イソメ類、小さなエビカニ類などが主食。また死んだサカナなども食べているはずである。日中はイソメ類や小さなエビカニ類もどこかに潜んで姿が見えないが、夜になると彼らも積極的に海底をはいまわる。おそらくそんなエサとなる彼らを捕食するために、アナゴも夜間に積極的に徘徊しているはずなのである。 以前、ナイトダイビングで見かけたアナゴは、海底に沈んでいるロープや鉄くずなどの間を器用にくぐりぬけ、ゆっくりと海底を徘徊していた。この夜になって積極的な捕食行動をとる生態をうまく利用した釣りが、いわゆる夜アナゴ釣りなのだろう。 |
ボクとしては、夜、アナゴが活動するタイミングでこの釣りをすることは十分に理解できているのだが、なぜあれほどまでにハリにかからないのかという点がよくわからない。まだまだ観察が足りず、実際にどのようにエサを食べているのかが確認できていないからなのである。 ただ少なくとも、彼らは群れで捕食行動しているのではない。だから、釣り方として、海底を小突いて「ここにエサがあるよ」というアピールをする必要はありそうだ。アタリがあってから、乗っているかを竿できく。ちょうどカレイ釣りに似たような方法だ。 カレイは、エサをくわえてから飲み込むまでに時間がかかる。カレイ自身も、おそらくただのんびりと食っているのではなく、これが変なエサでないことを確認しながら食って、何か変だと思ったら放す。あくまでも想像の世界を脱していないのだが、アナゴもこんな食べ方をしているのではないだろうか? アナゴは、まだまだ謎多きターゲットである。謎は謎としてロマンを残し、そのロマンに心を馳せながら、冷たいビールで焼きたてのアナゴの白焼き、揚げたての骨せんべいを美味しくいただこうではありませんか。 |