DAIWA
Everything about Boat Eging ボートエギングのすべて

もともとエギングは、堤防など足場がよく身近な場所で気軽にトライできる点が評価されて人気を博した。しかし皮肉なもので、エギングがブームになったことで愛好家が急増、おかげで場荒れが進み、手軽な釣りとはなかなかいえなくなってしまった。

必然的に注目を集めることになったのがボートエギング。ボートを利用して岸から届かないエリアまで移動すれば、パラダイスはまだまだあるというわけだ。

ボートからのエギングといえばここ数年、ティップランが全国的な人気を見せている。おそらく、ボートエギング=ティップランと思っている人も多いことだろう。確かにツボにハマると爆発的な釣果を叩き出すティップランだが、必ずしもオールマイティに通用するわけではない。とりあえずティップランを含め、ボートエギングの一般的なスタイルを紹介しよう。

ティップラン

まずはティップラン。ボートはサイドに風を受けて流す、いわゆるドテラ流しが基本になる。アングラーはボートの進行方向に背を向けるポジションを取り、エギは足元もしくは軽くキャストする。着底したら素早くラインスラッグを巻き取って、ジャークを数回入れてからアタリを待つ。陸っぱりならエギは沈降を始めるが、ティップランではボートが風を受けて流れているため、エギは水平に移動、つまりスライドする。10秒ほど待ってアタリがなければ、再びエギを底まで沈めて同じ動作を繰り返す。

タックルについては、ラインを張ったまま、ティップの変化でアタリを取るため、鋭敏な穂先を持つティップラン専用設計のロッドが必要。水深60m以上のディープエリアを攻めることもあるので、リールは剛性の高いZAION素材のものが安心。PEラインは潮の影響を受けやすいため可能なかぎり細いものを使うこと。

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Sフォール

ボートはティップランと同じドテラ流しが基本だが、進行方向に対し前方、後方どちらにも攻められるのがSフォールの特長。ティップランと同じ方向を攻める場合(テンションS)、軽くキャストして、ある程度エギを沈めてから、軽めのシャクリを数回入れて周囲のイカにアピールする。

そして、ラインスラッグを取りエギの頭を自分の方へ向けたあと、ロッドワークでラインを張らず緩めずの状態にする。これこそがSフォールで一番重要なポイント。具体的には、ステイ後ボートが流れる分だけロッドをエギ方向に送り込む。

ティップランと逆方向にキャストして狙う場合(フリーS)はエギに近づいていくことになるので、ストップ→ステイの後はロッドを送り込むのではなく、ロッドを立てるかリールを巻くことでエギの落下スピードを調整する。

タックルは、ボートが流れるスピードに合わせてロッドを立てたり倒したりするため、リーチを稼ぐためにある程度のレングスがほしい。また、ラインテンションを抜いた状態でアタリを取るため、ティップは『SMT』(スーパーメタルトップ)など繊細なものが有利。

比較的浅いポイントを攻めるケースが多いが、ティップランよりも激しいシャクリを数多く入れるため、ラインは0.5〜0.6号程度の使用をおすすめする。

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キャスティング
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ティップランとSフォールがボートゲームならではのスタイルなのに比べ、キャスティングは非常にシンプル。通常の陸っぱりエギングをボートに乗って行うと考えれば、だれにでも違和感なくチャレンジできる。ボートは流しながら釣ることもあるが、たいていはアンカーを入れて固定してから周辺にキャストして狙う。

タックルは基本的に陸っぱり用で間に合うが、ボートという限られたスペースを考慮すると、ロッドはやや短めのタイプが使いやすい。ポイントは比較的浅いが根周りが中心となるため、ラインは0.5〜0.6号が標準。

以上が各スタイルの概略。流し釣りであるティップランは、広範囲を攻められるのがメリットだが、ポイント上を速く通過するため、イカの活性が低いとエギを追いきれない傾向がある。また、エギを水平方向にスライドさせるため、障害物周りやカケ上がりは攻めにくい。

そんなティップランの泣き所をカバーするのがSフォール。横の動きで狙うティップランと違い、Sフォールは縦の動きを重視し、なおかつステイさせることでじっくり攻略できるので、ウイードエリアなど障害物周りに潜む、警戒心の高い親イカにも対応できる。弱点は風の影響を受けやすいこと。強風でボートが速いスピードで流れると、ロッド操作だけではエギをコントロールできなくなるのだ。

効率のいい作戦は、たとえば岸際のシャローから深みに向かってボートを流す場合、まずはカケ下がりをSフォールの縦の動きで狙い、やがて海底がフラットな場所まできたらティップランに切り換え広範囲に探るといった具合。

じっくり攻められるとはいえ、Sフォールも流し釣りである以上限界はある。たとえば、浅場の藻場に潜む親イカなどは警戒心が非常に強く、離れた場所から静かに腰を据えて取り組む必要がある。こんなときはやはり、ボートを固定してのキャスティングスタイルに分がある。

重要なのは使い分け。季節やポイント、その日の風向きや潮の流れによって、最適な釣り方を選択、あるいは組み合わせて狙うようにする。そのためには、それぞれの釣り方をよく理解し、特性を把握しておくことが大切だ。

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