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The Science of Eging Rod エギングロッドの科学
インターラインロッドの飛躍的進歩
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かつて、中通し竿、いわゆるインターラインロッドが隆盛を極めた時代があった。船釣り、磯釣り、投げ釣り、バスフィッシングなどなど、大物から小物まで、淡水、海水の区別なく、リール竿を使うほとんどの釣りでインターラインロッドが主流になり、このままでは外ガイド竿が消滅するとだれもが思った。

ところが、普及するのも早かったが、消えていくのも早かった。確かにガイドへの糸絡みがないのは大きな魅力だが、インターラインはその構造上どうしても太くて重い。その結果「持ち重りがする」「感度が悪い」「飛ばない」などのマイナスイメージが強く、結局受け入れてもらえなかった。

あれから10数年、インターラインロッドの技術は飛躍的に進歩し、当時の弱点はすべて克服できたといって過言ではない。しかし、いくらそのメリットを並べたところで、あのころをご存じのアングラーにとっては説得力に欠け、眉に唾をつけられるのがオチ。

そこで、インターラインロッドの名誉を挽回すべく、いくつかの実験を行った。

ライン放出性を比較
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まずは「ラインの放出性」について。用意したロッドは、チタンフレームKガイドを搭載したエメラルダス MX 86M(アウトガイド)とエメラルダス MX 85MI(インターライン)の2モデル。すべての実験にいえることだが、なるべく同じ長さ、硬さ、調子のもので比較したが、インターラインロッドとガイドロッドでは構造上の違いからまったく同じものではないことを最初にお断りしておく。

それぞれ水で濡らしたラインをセットして水平に固定。ラインの先にどの程度の負荷を掛けると滑り出すかを計測した。ラインを濡らしたのは実釣の様子に近づけるためで、当然乾いているラインよりも抵抗は大きくなる。

結果はアウトガイド0.26g、インターライン0.32g。0.06gの差でアウトガイドが勝利したことになる。0.06gといえば、大体お米3粒ほどの差。エギがフォールするときの平均的な負荷が5g程度であることを考えれば、わずかお米3粒分は誤差の範疇ともいえるだろう。つまり、インターラインロッドの内側にラインが貼り付いてエギの操作に影響するということは無いと考えていい。

今回の結果からアウトガイドのほうが、わずかながらもラインの放出性がいいことが判明。しかし、以前に行った飛距離テストでは、チタンフレーム製アウトガイド44.6mに対し、インターライン45.8mという結果が出ている。つまり、ライン放出性ではやや勝っても、アウトガイドロッドはガイド間でラインがバタつくことで飛距離がダウンすると考えられる【資料1】。

持ち重りを比較
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次は「持ち重り」について。ここで用意したロッドは、エメラルダス MX 86ML(アウトガイド)とMX 85MLI(インターライン)の2本。それぞれのロッドの持ち重り感を示すモーメントを【資料2】の定義で計測し比較してみた。

数字が小さいほど手元に掛かる負荷も小さいことを示す。結果はアウトガイドが10.7、インターラインが10.5。すなわち、1:0.98となり、インターラインモデルが1インチ短いことを考慮しても、その差はごくわずかで、実釣では気になるレベルではないことがわかる。

以上、2つの実験を通していえることは、現在のインターラインロッドの性能は、ガイドロッドと比較して、遜色ない状態まで進化していることがわかる。

インターラインロッドは糸絡みの心配がないのが最大のメリット。構造上、ブランクそのものを比べるとアウトガイドロッドよりも少し太くなるが、ガイドがないため抵抗が小さくなり、よりシャープな振り抜けが可能になった。たとえナイトゲームや横風、向かい風の中でも、トラブルを気にすることなく思い切りフルキャストできるのは、インターラインロッドならではの快感というしかない。

ブランク内面にスパイラル状の山型突起を設け、浸入した水とラインの接触抵抗を減らし、ラインの放出性能を向上させるリニアインターライン構造【資料3】。内部にほとんど水滴が触れず、ラインの放出とともに一気に排出される超撥水ドライ加工【資料4】など、最先端のテクノロジーによって飛躍的な進歩を遂げたインターラインロッドだが、対するアウトガイドロッドだって、なにも歩みを止めているわけではない。

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【資料3】 リニアインターラインのスパイラル構造
リニアインターライン構造とはブランク内面にスパイラル状の山型状の突起を設けた構造。ロッド内部に浸入した水とラインの接触抵抗を減らし、ラインの放出性能を向上させる。
画像 【資料4】 超撥水ドライ加工
ブランク内面にほとんど水滴が触れない接触角165゜を実現した撥水性能とリニアインターライン構造を組み合わせた加工。ラインとともに水滴まで一気に排出され、スムーズなロングキャストを実現。
『AGS』の優位性

特筆すべきはカーボンフレーム製ガイドの『AGS』(エアガイドシステム)。以前の飛距離テストではチタンフレーム製ガイドと比較し、48.5m:44.6mと同じブランクとは思えないほどの差を見せた。実際、『AGS』モデルを使用したエギンガーからも驚きと感動の声をいただいている。他にも飛距離だけでなく、アキュラシーや操作性、剛性などの違いに一段も二段も上をいく感覚を持っていただけているようだ。

なかでも注目すべきは剛性、『AGS』はチタン素材と比較して約3倍もの剛性を持ち合わせている【資料5】。

このためチタンフレームでは、その素材自体の軟らかさでイカの微妙な乗りや触りを吸収しかねないが、『AGS』ならばダイレクトに指先まで伝えてくれるということになり、画然たるアドバンテージを得ることになる。

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【資料5】 チタンとカーボンの剛性比較
『AGS』(エアガイドシステム)に使用されているカーボンは、チタンの約3倍の高剛性を持つことで、チタンフレームより確実に大きな振動をブランクに伝える。つまり『AGS』は軽量性と高剛性により、フレーム素材としてかつてない高感度を実現している。
『SMT』の感度としなやかさ

感度といえば、触れないワケにはいかない『SMT』(スーパーメタルトップ)。

ティップに金属を使用して情報を増幅させるというのも、今のところアウトガイドロッドだから可能なアイデア。超弾性チタン合金特有の高い伝達性【資料6】だけでなく、小さな変化をティップに表現することで、目でもアタリが取りやすく、そのしなやかなクッション性から身切れ防止にも役立っている。

軽量かつ高剛性の『AGS』を『SMT』に装着する。感度ということでいえば、これ以上のコンビネーションはなく、これからのエギングシーンでも頼りがいのある大きな味方となるだろう。

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【資料6】 トップ素材別穂先振動波形図
※素材を曲げて弾いたときの振動波形図は、特徴を表現したイメージです。